2-3 Fランク冒険者、Sランク冒険者に匂われる
「お、見えてきましたね」
スキル『マッピング』のお陰で、『迷いの森』で迷うこともなく、無事に抜け出すことができた俺たちは、一直線に【冒険者の街】に向かっていた。
もうすぐ着くという距離まで来ていて、人間がチラホラ見え始める。
「リンネさん、このジャケット羽織ってください」
今のリンネさんはみすぼらしい格好をしているため、誰かに見られるわけにはいかない。
それに、元とはいえども、勇者パーティーの一員かつ、Sランク冒険者にそのような格好をさせてはおけないしな。
俺はジャケットを脱いで、リンネさんに渡した。
「ありがとう、アーク」
素直に受け取ってくれたリンネさんは、俺のジャケットを羽織る。
そして、すんすんと鼻を鳴らし始めた。
(あの……、あまり匂いを嗅がないでほしいんですが……)
最近、洗濯したばかりだから臭わないとは思うが、少々気恥ずかしい。
リンネさんはどう思っているのか、気になる。
……いや、わざわざ聴くようなことでもないか。
俺は違う話題について、話すことにした。
「【冒険者の街】って、強力な魔物が多数生息する危険地帯から一番離れてるという理由で、駆け出しの冒険者が多いっていう話を聞きますけど、その魔物ってどれぐらい強いんですか?」
今日初めて魔物を倒した俺が気にすることではないが、何となく気になったのだ。
それに、冒険者を続ける理由ができて、いつかその危険地帯に足を伸ばす可能性も少なからずある。
だから、聞いておいて損はないと思った。
まあ、【冒険者の街】で冒険者登録して、それから一年もここで過ごしてるから、離れるのは少し寂しいような気もするが……。
「一般人からしたら、相当強いわ。Bランク以上の魔物がゴロゴロいるもの」
「Bランク以上ですか……。無理ですね」
ゴブリンの群れがDランク相当。それを相手にするだけで、俺は魔力を枯渇した。
今のままだと、余裕で殺されるな。
「……そういえば、リンネさんはどうして、冒険者になったんですか? リンネさんの実力があれば、宮廷魔術師になれたと思うんですけど」
「アランに勧誘されたのよ。宮廷魔術師は安定した職業だけど、あまり興味が無かったから、パーティーに入ることにしたわ」
「じゃあ、何ですか? 勇者は勧誘しておいて、追放したってことですか?」
「そうなってしまうわね」
おいおい、どこまでふざけた野郎だよ。
こんなやつが世界を救う勇者? 笑わせてくれる。
もっと、勇者に相応しい人はいたはずだろう?
何だったら、俺が勇者の代わりをやりますよ?
……あ、無理か。弱いから。
それから、俺たちは他愛もない話を続けて、門前までやって来た。
「身分証明書の提示をお願いします」
「はい、これで大丈夫ですか?」
俺たちは守衛の人に冒険者カードを見せて、【冒険者の街】に入った。
さあ、どこにいる。クソ勇者!
俺がお前をギャフンと言わせてやる!
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