雪合戦は、本気の戦いです!3
——ルカ視点
「ルカ、雪玉はいいよ」
ステラはそう言う。さっき言っていた、攻撃に徹する時だと言うことだろう。
「分かった」
僕も頷いて返す。
リンネ神相手だと、油断するどころか、本気でも負けてしまう。それだけ、力の差があるんだ。
今までリンネ神を抑えられた人なんて、アメリア様とスキュリバ神しか見たことがない。
「行くぞ〜!」
楽しそうに笑ってリンネ神が雪玉を投げた。数も多い。
その先にいたのは、カミラ嬢、だったか。ステラの友人だった。
「っ!」
すると、彼女は物凄い速度で空中に浮き上がった。おそらく、風魔法や身体強化魔法を使ったのだろう。とっさのことに対応できるのは凄いな。
そして、ステラも動き出した。
「[雪盾]」
カミラ嬢の前に高い雪の盾——というか、壁を作りだし、自分は上空に飛び立つ。
「ふむ…………甘いな」
しばらくその壁を眺めていたリンネ神は、ニヤリと笑って氷柱を生み出し、その壁に当てた。すると、その壁がまるで砂の様に崩れ落ちていった。
「何じゃと!?」
しかし、驚いたのはリンネ神の方だった。
その壁の向こうには、誰もいなかったのだ。きっと、ステラが魔法で伝えたのだろう。ヴァレリアン殿、という子息もいなくなっていた。認識阻害も使ったのかもしれない。
少しの間呆然としていたリンネ神だったが、顔を引き締めると、僕の方へ向かってきた。
僕だって別に、何の用意もしてこなかったわけじゃない。
「[発動]」
僕がそう呟くと同時に、僕の周囲にポッカリと穴が空く。孤島の様になった。
しかし、別に近く必要もないので、少し離れた場所で止まって、雪玉を投げ始めた。そしてその雪玉は同じ速度でリンネ神の方へ戻って行った。
「!?」
避けること自体は簡単な様だが、何が起きたのかを考え込んでいる様だ。
僕が使った魔法は反射だ。その名の通り、左右は入れ替わるものの、同じ威力、速度、見た目で跳ね返す。しかし、同じ動きしかできないので、少し移動すれば避けられてしまうのが難点だ。
そして、きっと同じ動きしか出来ないことに気づいたのだろう。リンネ神は転移魔法を使って、無規則に動きながら僕へ近づいて来た。
「………っ!」
何とか避けれたけれど、本当にギリギリだった。速いし、強い。
「ルーカス、どうした?」
余裕そうな顔だ。いや、実際余裕なのだろう。悔しい。
「[流雪群]」
ステラの声だ。流雪群、といのは分からないけど。
上から風を切る音がして見上げると、大量の雪玉が空から降ってきた。なるほど。流星群の雪版か。
…………僕にも当たりそうなのは、気のせいじゃないよね。防御魔法を展開しておこう。
「うわっ!?」
その中の雪玉が一つ、防御魔法に直撃し、シールドが壊れた。どんな威力を出してるの、ステラ。やっぱりアメリア様とエドワード様の子供だな。………アデラも同類だったらどうしよう。今度、修行でもつけてもらうか。
急いで防御魔法を貼り直しながらリンネ神を見た。
「嘘でしょ………」
思わず呟いてしまった。
リンネ神は、その全てを避けていた。その場で、魔法も使わず。
上空にいるステラも動きが止まっていた。あれは、ない。
しかもリンネ神は、それをしながら上へ飛び、少しずつステラに近づいていった。
正気に戻ったステラは、何故かリンネ神の上に、上下反対の器の様な物を作った。浮いているけど。しかも、雪でできているにも関わらず、強度は凄そうだ。
「[座標交代][魔法禁止領域][固定]」
座標、つまり、場所を交代?どういうことだ。
僕が考えていると、景色が変わった。地上にいたはずなのに、何故か浮いていた。慌てて浮遊魔法を起動する。
僕より上には、ステラがいた。しかも、上からはさっきの雪が降ってくるので、移動して考える。
「…………そういうことか」
つまり、僕とリンネ神の位置が交代したらしい。僕がさっきまでいた孤島では、リンネ神が雪の器に覆いかぶさられていた。このためだったのか。
それから、リンネ神が魔法でステラに近づかなかったのも分かった。罠の数が夥しい。隠蔽はまだ未熟らしいけど、こんな種類の罠なんて、何処で覚えたんだ? (A.漫画、アニメなどです。)
それからリンネ神が出てこないか警戒したけれど、何も起きない。………固定の魔法はこのためか。
ただ、これからどうやって止めをさすかだ。器(?)を消したり崩したら、きっと出てくるだろう。しかし、魔法にしても禁止されるから入る前に消えてしまう。
「…………え?」
しばらく考え込んでいると、僕の肩に何かが当たった。………雪だ。
消える前に後ろを振り返ると、そこにはリンネ神がいた。
「油断しすぎじゃ」
そう言って不敵に笑った姿に、僕は悔しさを感じた。
——ステラ視点
「ルカ!?」
倒す方法を考え込んでいて、気がつくと、ルカが消えた。その後ろには、もちろんリンネ神。やられた。甘かったんだ。
「檻を作るのなら、床も作らんといかんぞ?
穴を掘って逃げ出す奴もいるんじゃから………我みたいにのう」
まじか。穴掘ったんだ。
ドヤ顔だし、すごいとは思うけど、方法が格好いいと思えない。
私がとりあえず雪玉を作って投げるけど、当たらない。まあ、当たるとも思ってないけど。
(どうしよう)
私が悩んでいると、鈴の音が聞こえた。ただ、テレパシーで、なので、リンネ神には聞こえていない。
そして、止まった。リンネ神も、周りの風景も、雪も。
そう、ラリマーの力だ。最初のはフェイクで、本気の魔法を発動できるタイミングをずっと待っていた。
私は時間が動き出さないうちに、リンネ神に近づき、雪玉を当てる。
「…………何?」
違う。何かが違う。
作戦通りのはずなのに、ちゃんと当てたのに。違和感が消えない。
「おしかったのう
もう少しじゃった」
その声が聞こえたのは、背後からだった。
ああ、そういうことか。
あれは、本物じゃなかったんだ。偽物だった。
「負けましたよ
また、リベンジしますから」
背中に当たった雪の感覚を認識して、私は観覧席へ飛ばされた。
*
結局、父様とリンネ神の無双で、私たちと精霊様は全滅した。そんなのあり!?って思うけどね。
アデラも父様にやられたらしい。ただ、母様を倒したのはすごい!リヴァも一緒にめっちゃ褒めた。………別に、頭撫でたかったわけじゃないもん。本当に。
ルカは、自信喪失してた。悔しかったみたい。だから、こっちも褒めて褒めて褒めた。ネガティブさが凄かったからね。ルカは充分やってたのに。
ミラとリアン君は、転移先でガーネットに遭遇。転移魔法で避けられて、負けちゃったらしい。残念。
ココとアベラール君は、私が観覧席に行った時にはいた。ジェードとアベンチュリン様のコンビにやられたらしいよ。ジェードは母様にやられたらしいけど。
あ、そういえば。ラリマーはあの後、リンネ神にやられちゃったらしい。怒りと悔しさでボロボロになってたから、こっちも同じく褒めといた。後、お礼ね。時間止めてくれたし。
というわけで、雪合戦は無事(身体は)怪我もなく終了いたしました。
…………心に傷を負った人はいたけどね。




