表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
80/1285

セージの誤算、ダイエンの秘策

 ヒィは依頼を受ける時から、セージの事を疑っていた。

 だからサフィを同行させ、こちらは先回りし。

 手出し出来ない様にさせた。

 では、どの時点から疑いの目を向けていたのか?

 それは契約時に有った、ヒィとセージのやり取り。

 ヒィは『怪物を退治しても構わないのですね?』と、セージに尋ねた。

 その問いに対し、セージはこう返した。




 そんな輩は【私の国】に必要有りません。




『政争に巻き込まれ、モンシドへ避難している貴族だ』と説明しておきながら。

 ペルデューを『自分の物だ』と言い切ったのだ。

 本当に、王に仕える貴族なら。

 〔私の国〕では無く、〔私達の国〕と表現すべきだった。

 あれ位の失敗では諦めきれず、その時も国をさらう気満々だったので。

 ボロを出してしまい、貴族を装う為無理して使っていた敬語も無駄になった。

 今、宝物殿の前でダイエンと話している姿が。

 本来のセージ、浅ましい本性。

 もう隠す必要は無いと考えたのだろう、完全に敬語を忘れている。

 それが失態だと、気付きもせずに。




 一方、ダイエンも。

 〔悪魔〕と名指しされた事で、焦っていた。

 魔法使いでも無いのに、魔法を散々ぶっ放した所を。

 しっかりと目撃されてしまった。

 もう、言い訳は通用しない。

 かと言って、逃げ出す事も出来ない。

 通路の前には、ヘレンとエドワーだけでなく。

 アーシェとジーノも加わったのだ。

 多勢に無勢とは、この事。

 ジーノは、この時とばかりにとっておきの武器を身に着けている。

 斧の柄に、チェーンが仕込んである物で。

 鎖鎌の様に、ヨーヨーの様に。

 自在に間合いを変え、振り回す事が出来る。

 これも、腕力の高いドワーフならでは。

 アーシェも、武装を隠し持っていた。

 鎧の背中の部分を取り外すと、盾代わりになる。

 その分背中の防御力は下がるが、同時に身軽にもなる。

 剣は片手剣、左手に装備。

 そして右手には盾、アーシェは左利きだったのだ。

 ヘレンとエドワーも、荷物の中の短剣を既に取り出し。

 レギーとクリスを守る様に、立ちはだかる。

 こうして通路方面は、完全に塞がれている。

 さて、どうする?

 ダイエンにはまだ、秘策が有る様だが……。




「何故、憑り付いていると分かった?」


 ダイエンは、秘策を繰り出す前に。

 どうしても確かめておきたかった。

 ヒィが看破した、その訳を。

 ダイエンはヒィに尋ねたが、答えが返って来たのはレギーの方から。

 レギーがダイエンに言う。


「僕の事、知ってたよね?」


「おおともさ。良ーく知ってるぞ。攻撃対象だったからな。それがどうした?」


「でもね。ここに居る2人は、あなたの事を〔知らない〕と言い切ったんだよ。この意味、分かるよね?」


「……し、しまった!」


 口を滑らせてしまった事を、後悔するダイエン。

 ダイエンは、レギーの事を言い当てた。

『エリメン卿と知り合いだ』とレギーに納得させる為、わざと。

 だが、エリメン卿に仕えるエドワーとヘレンが。

『面識は無い』と、はっきり否定したのだ。

 ボディーガードとして付き従っているのに、知らない筈が無い。

 明らかに矛盾している。

 では、どうやって知り得たのか?

 答えは簡単。

 実際に、エリメン卿やお付き2人と面識が有った。

 前に襲って来た、〔悪い魔法使い〕として。

 後に訪れたダイエンが、それを知る術は無い。

 ダイエン本人は。

 しかし、悪い魔法使いとして振る舞っていた人物が。

 悪魔に憑り付かれていたなら、話は別だ。

 ヒィは以前、似た様な状況に遭遇した。

 イヌ族の長を決める、あの武闘会だ。

 あの時も、エルフの身体を乗っ取った悪魔が暴れ回った。

 それと同じ事が起きている、直ぐにそう思ったのだ。

 乗っ取りに失敗し、一時退却を余儀なくされ。

『こいつはもう無理だ』と判断した悪魔は、憑り付き先を変えた。

 豪華な衣装を身に纏った、貴族の馬車をたま々見つけ。

 不意を突いて、身体を乗っ取った。

 それが、ダイエン。

 本物の貴族だと言う事も、都合が良かったので。

 このまま遂行する事にした。

 これなら、異なる人物が同じ記憶を持っていても。

 何ら不思議では無い。

 悪魔によって、共有されているのだから。

 そこを見抜かれるとは、悪魔も思ってはいなかった。

 人間は所詮、下等生物。

 散々見下して来たツケが、こうして回って来る事となったのだ。




 実は、セージと悪魔は前からの知り合いだった。

 まだ小悪党として、盗みを繰り返していた頃。

 同じ様に悪さを重ねている、この悪魔と出会った。

 それからは、悪人ぶりが加速し。

 何時の間にか、『一国を盗み取りたい』と考える様になっていた。

 そんな大それた考えを持つ様になったのも、悪魔と言う秘密兵器が有ったから。

 いざとなれば、国のトップに憑り付かせ。

 自分は大臣とかその辺りのポジションへと収まり、国を動かす。

 その後の事は考えていない。

『先々まで思いを巡らしている内は成功しない』と、勝手に思っていた。

 悪魔も初めは、人間達を困らせて楽しんでいただけ。

 しかしその悪魔にも、転機が訪れる。

 そう、天啓に出て来た〔混沌をもたらす存在=K〕である。

 その噂は、人間達の中で広まるよりも早く。

 悪魔間で共有された。

 魔導士達がこの件で動き出している、間違い無い。

 悪魔の中でも、反応は様々。

 歓喜する者、自らKを探そうと張り切る者。

 降臨した際に一番の部下となる為、悪さに磨きを掛ける者まで出て来た。

 そんな噂とセットで、〔救世の御子〕の事も伝わって行く。

 折角悪魔が支配者に成れそうなのに、それを邪魔する者はとっとと潰さねばならない。

 過激思想の悪魔達はそう考え、候補探しの時点で消し去ろうと行動開始。

 その一端が、武闘会に現れた悪魔。

 何者かが差し向けたのか、分からない。

 幾つもの悪魔達が手を組んで、団体として動いているのどうかさえも分からない。

 ダイエンに憑り付いている悪魔も、それにあやかろうとした。

 ペルデュー国に在る宝物殿、話に聞いた通りなら。

 凄い宝が眠っているに違いない。

 それも、神器クラスの。

 それを〔救世の御子候補〕から先に奪取し、逆にそれを用いて倒してしまおう。

 候補と認定される位だ、強力な武器防具を欲して宝物殿へやって来るだろう。

 必ず現れる筈、ここを自分が押さえてしまえば……。

 こうして、セージと悪魔の野望が一致する。

 〔国を取りたい思い〕と、〔国を押さえて邪魔者を排除したい思い〕が。

 悪い具合に重なり合って。

 ドス黒い大望へと変ぼうする。

 それが、前の大暴れへと繋がったのだ。




 一度失敗したが。

 それ位で諦める程低い野望では、既に無くなっていた。

 執念と言うか、渇望と言うか。

 空虚な心を埋める為、それぞれが怪物打倒を掲げ。

 行動し、結果再びこの場所へ降り立っている。

 誤算だったのは、セージの依頼した先が。

 正に天敵だった事。

 ダイエンとして行動していた悪魔の方は、何か嫌な感じがしていた。

 天使のミカが紛れ込んでいたから。

 しかしその正体を、最後まで気付けなかったのは。

 ひとえに、ヴィルジナルの協力が有ったからこそ。

 エイスはやはり、こっそりとダイエンをマークしていたのだ。

 邪悪な雰囲気、人間の者では無い。

 きっと、ヒィが言っていた話と係わりが有る。

 ミカを遠ざけ、ヒィがジーノとアーシェだけで話し合っていた時も。

 エイスだけは姿を透明にして、気配を殺し傍に居た。

 それは、3人の話がミカに伝わらない様妨害する為と。

『奴等を懲らしめるのに協力する』と言う約束を果たす為。

 エイスは氷の妖精、氷の精霊の加護を受けている。

 そしてこの辺りは、氷の精霊の力が特に強い場所。

 ジャミングの様に精神波を掻き乱すなど、造作も無い事。

 だから悟られない、正体がバレない。

 サポート係として暗躍する、それが目的達成に通ずるなら。

 エイスはそう割り切って、これまで動いて来た。

 宝物殿の前に居座る山龍とも連絡を取り、策を講じる。

 ダイエンが連れて来た魔法使い達の攻撃を、敢えて受け。

 怒って攻撃者達を追い駆ける振りをして、山頂へと山龍は飛んで行く。

 それを見届けたダイエンは、居なくなったと思い込み。

 通路から直ぐに引き返して来る。

 そこで山龍は、山頂付近で。

 エイスが氷で作り出した怪物と入れ替わり、人間の姿でこっそり戻る。

 エイスの援護を受け、気配を消しながら。

 ヒィはエイスから、思念波で連絡を受けていた。

 ダイエンとクリス達が、魔法使いと共に一旦通路へ消えた事を確認し。

 ヒィは逃げ遅れた振りをして、一目散に建物へ向け走っていた。

 そしてその陰に隠れ、山龍の帰還を待つ。

 2人はお互い簡単に自己紹介し、軽く打ち合わせをして。

 後は、手筈通りに。

 予定通り、魔法使い達はダミーに引っ掛かった。

 ダイエンも『あいつは山頂を越えて行った』と思い込み、引き返して来た。

 全ては、エイス達の計画通りだったのだ。




 周りを敵に囲まれ、打つ手が無い様に見えるセージとダイエン。

 だからレギーも、2人に降参する様促す。


「もう諦めて!そして二度と悪い事はしないで!」


「ガキが俺達に説教か?ふざけんな!」


「まだやり直せるって!」


「俺達が今まで、どれだけの悪さをして来たと思っている!悔い改めるなんて、真っ平御免だ!」


「だから!」


「恵まれた環境で!世の中の不条理に接する事無く育って来たお前等に!俺達を説教する資格なんざぇ!」


「うっ……。」


 セージの剣幕に、言い返せなくなるレギー。

 レギーに同情する様に、その顔を見るお付き2人。

 ジーノやアーシェも、レギーを気の毒に思う。

 年端も行かない子供に、不条理などと言う大人の事情を押し付けるなんて。

 本当に、こいつはクズだな。

 そう考え、レギーの方を見やる。

 しめた!

 ここだ!

 ダイエンは、いや厳密に言うと〔ダイエンに憑り付いている悪魔〕は。

 この時を待っていた。

 ヒィが叫ぶ。


「意識を逸らすな!悪魔が飛び出すぞ!」


「遅いっ!」


 ブワァッ!

 ダイエンの背中から、黒い煙が噴き出すと。

 ビュルルルッ!

 レギーの方へ飛んで行き、その身体を包み込んだ。

 それを見て、確信した様にセージが大声を上げる。


「やった!そいつを乗っ取った!」


 ああっ!

 お付き2人は、目の前の出来事に愕然とし。

 膝を折り手を地面に付け、悔しがる。

 目を離し乗っ取りの隙を作ってしまった事を恥じ、涙が溢れて来る。

 クリスは、真っ黒な煙に覆われたレギーの傍で。

 オロオロするだけ。

 セージが、両手を天に掲げながら叫ぶ。


「さあ!新しい身体を纏ったお前を、俺に見せてくれ!」


 シュルルルルーーーッ!

 黒い煙が薄まって行く。

 そして、中から見えて来たのは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ