真打登場!(ヒィとしては、来ないで欲しかった)
「大丈夫か!」
ヘレンの下へ駆け寄るエドワー。
『ああ、無事だ』と呟くヘレン。
クリスには、レギーが。
レギーにクリスが言う。
「あそこに居るのが、国王よ。」
「え?あれが?」
クリスが〔国王〕と呼ぶ、それは。
どう見ても、図体のデカい〔動く山〕。
その成りで、レギーも〔山龍〕と言う異名を理解する。
確かにそうとしか、表現しようが無い。
でも何で、こんな所に?
この世界では、ここ以外に生息しないであろう者が。
ここに居座る訳。
確かに、一介の人間族では分からないだろう。
だから、それを知る者がこれから登場。
する予定。
ヒィが、ミカへ向けて叫ぶ。
「どうせ、こうなるって知ってたんだろう!〔あいつ〕は!さっさと連れて来い!」
「まあ!あの方に対して、何て失礼な!」
「良いから!」
「分かったわよ。せっかちねー。」
辟易した顔で、ミカはそう言うと。
シュッ!
忽然と姿を消した。
ミカの瞬間移動を見た事が無かった者達は、一様に驚く。
そして、数十秒経った後。
シュッ!
今度は、ダイエンの真上に姿を現す。
頭上4メートル程の高さから、ズドンと落っこちる影。
諸にダイエンを直撃する。
「いたたた……ここは?」
「悪いわね。あんたは、あたいの対象外なのよ。」
「な、何だとー!」
空中へ向けて拳を振り上げる、その影は。
スーッと宙を舞うミカと、それに抱えられている影と別れ。
ダイエンの下へ取り残される。
地団駄を踏んでいる影を見て、ダイエンが気付く。
「お前……セージじゃないか!」
「その反応……もしや、あんたか?」
「そうだ。前の身体は役に立たなくなって、これに乗り換えたがな。」
そう言って、胸を左掌でパシッと叩くダイエン。
やはり、ダイエンとセージは知り合いらしい。
と言う事は……。
アーシェが思うと同時に、エドワーとヘレンが反応する。
「貴様!何しに来た!」
「舞い戻って来るとは、良い度胸だな!」
「何だ、俺を知っているのか?」
「当たり前だ!」
「この前の町の破壊劇、忘れるものか!」
「おやおや、これは光栄だねえ。」
セージと、お付き2人の。
言葉の応酬。
アーシェが、お付き2人に尋ねる。
「もしや。あのセージが、〔国王の弟〕を騙った偽貴族か?」
「そうです!あやつです!」
「間違い有りません!」
「そうか……。」
ヒィの推理通りだったな。
そう有って欲しく無かったのだが……。
エドワーとヘレンからの返答で、アーシェは思う。
そして同時に。
最初から分かっていて、依頼を引き受けたであろう人物の。
宙を漂う姿を、目で追う。
ミカが抱えて飛んでいるのは、勿論サフィ。
ヒィの傍でストンと下ろすと、ミカはその場に座り込む。
大きな仕事を成し遂げたかの様に、満足顔で『ふう』と一休み。
剣をダイエンへと向けているヒィに、サフィがグイと詰め寄る。
「おっそーい!どれだけ掛かってんのよ、全く!」
「うるさい!状況を良く見てから言え!」
「百も承知よ!分かってて言ってんのよ、こっちは!」
「だったら何とかしろ!自称〔女神〕なんだろ!」
「その前に、今回の旅の鬱憤を晴らさせて貰うわ!何であたしが、あんなムサいおっさんと2人旅しなきゃなんないのよ!」
「だから言ったろ!『適任だ』って!それで大喜びしてたのは誰でも無い、お前じゃないか!」
「想像してたのと、ぜんっぜん違ったのよ!あんなの詐欺よ!サ・ギ!」
「知るか!」
ぐぬぬぬぬーーーーっ!
ふんっ!
顔を背け合う、ヒィとサフィ。
2人のやり取りを呆れ顔で見ている、レギーとクリス。
その傍に近付いていたジーノが、ポツリ。
「あれで上手く行ってる方だからなー。兄貴も苦労が絶えないよ、ホント。」
その一方で。
怪物と交戦中の、男達と魔法使い達。
目の前に聳える大きな物体を指して指摘する、或る魔法使い。
「あれは、俺達が誘い出した怪物じゃないぞ!」
「あぁ?どう言うこった!」
男達が眉間にしわを寄せる。
別の魔法使いが答える。
「これは、【ただの龍】だ!俺達が見たのはこんなんじゃ無い!もっとヘンテコで、でっかい物だ!」
「何っ!じゃあ、これは……!」
とうとう男達も足を止め、怪物を見上げる。
その姿は、俗に言う〔ドラゴン〕そっくり。
この世界で龍と言えば、2通りの姿を持つ。
1つは東洋の龍の如き、胴長蛇の様な姿。
もう1つは西洋のドラゴンの如き、大トカゲの様な姿。
その両方を、この世界では区別無く〔龍〕と一括りしている。
あくまで重要なのは属性で有って、姿では無い。
属性によって、行使する魔法や技が違うからだ。
こちらの方が、人間族にとって知るべき情報。
以前、『地龍や火龍、海龍は存在する』と記したが。
属性を明記する事で、情報を共有している。
〔山属性〕何て物は〔土・地属性〕と丸被りし、流石に区別しないので。
『山龍に関しては、該当する獣が存在しない』とも記したのだ。
お分かり頂けただろうか?
男達が立ち止まり、魔法使い達も首をかしげる。
それを見たからなのか、丁度宝物殿側にサフィが到着したタイミングだったからなのか。
何百人もの人数で相対していた怪物は、色を失い透き通ったかと思うと。
ガラガラと崩れ落ち。
そこには、氷の塊がゴロゴロと転がっているだけだった。




