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滝の向こう側には

 シュタッと着地するサフィ。

 大きな袋を担いでいたので、『ドッスーンッ!』と言う音と共にジーノ。

 そして、その間に飛び込む様に。

 ヒィが滑り込む。

 背の方から、『ガラララッ!』と言う激しい音がしたかと思うと。

 ピシッ!

 ガラスにひびが入ったかの様な甲高い音が、後ろから聞こえる。

 3人が振り返った時には、光が消え失せ。

 通り抜ける前と同じ様な、白い木枠にめられた丸太の山積みが。

 目の前に有るだけ。

 ただ、ジメッと湿っているらしい。

 苔の様な緑のフサフサが、丸太と丸太の間に見られる。

 とにかく、現状を把握しよう。

 ヒィは、辺りを確認する。

 ゲートとは真反対から、かすかな光と。

 ドドドーーーッ!

 轟音が聞こえる。

 天井はそれ程高く無く、空洞らしきここは横に広くも無く。

 丁度、ゲートがすっぽりと収まる感じ。

 ジーノが、ヒィの服の袖を引っ張り。


「ここ多分、〔滝の裏側〕じゃねえかなあ?何か懐かしい感じがするんだ、オラには。」


 なるほど、言われて見れば。

 ヒィがナンベエに連れられて、ソイレンの町を目指して通った。

 あの地下トンネルと、雰囲気が似ている。

 ジーノがそう主張するのも、納得が行く。

 サフィがジーノの肩をポンと叩いて、感心の言葉を発する。


「流石、腐ってもドワーフね。その通りよ。」


 そして、ゲートとは反対の方向を指し。

『さっさとここを出るわよーっ』と、元気に歩き出す。

 しかしジーノは、進もうとしない。

 それは、或る懸念が有ったから。

 ジーノがサフィに尋ねる。


「滝はどうやって抜けるんだ?音からして、相当大きな気がするんだけど。」


「心配は無用よ。どっちかと言うとあんたは、荷物を濡らさない配慮を心掛けなさい。」


 ギクッ!

 恐る恐る振り向き、荷物の状態を確認するジーノ。

 ゲートを潜った後に、尻餅を付いちゃった。

 あーあ。

 想像通り、荷物の下の方が泥だらけ。

 着替えとか入ってたのに、どうしよう……。

『サフィに怒られる』と、オロオロするジーノに。

 サフィは意外と、寛大な言葉を掛ける。


「まあどっちみち、滝の脇を抜ける時濡れちゃうからねえ。それ位なら、上出来よ。」


 それに……。

 言葉を続けようとして、止めるサフィ。

 そして思い直した様に、再び歩き出す。

 水分を吸って重くなった荷物。

 引きらない様、ヒィに後ろから支えられながら。

 荷物を担ぎ歩く、ジーノだった。




 ゲートから滝の流れる場所までは、それ程離れていなかった。

 15メートル程と言った所か。

 壁面から察するに、洞窟は手掘りされた様だ。

 ドワーフならもっと、滑らかな壁面にする。

 それが技術者としての、実力の証だから。

 だからこの洞窟には、ドワーフは少なくとも関与していない。

 ならば、原住民である獣人が掘ったのだろうか?

 ヒィは色々想像するが。

 サフィは何も語らない。

 もう過ぎた事、どうでも良い。

 そんな風に思っているのだろうか。

 勘繰ってみるが、サフィはいつもの能天気さを取り戻し。

『ルンルンルーン』と口ずさむ。

 服の右ポケットに、手を突っ込むと。

 小さな棒を取り出すサフィ。

 親指と人差し指で摘まむと、棒の先で。

 滝の左側上方をつつく。

 勢い良く流れ落ちるその水量たるや、かなりの水圧を生み出している。

 このままでは、腕が簡単にもげてしまう。

 ヒィは咄嗟に、サフィの右腕を滝の方から戻そうとするが。

 予想に反して、滝は棒で突かれた空間を避け。

 グルンッと右側へ曲がる。

 垂れ下がった暖簾のれんの左側を、何かで持ち上げた風に近い。

 流れ落ちる滝の水は、グネッと曲がり流れるままの状態が保たれ。

 洞窟の左側に、脱出口の様な空きが形成される。


「ここから、外に出るわよ。」


 サフィはそう言いながら、ヒィ達の方を振り向く。

 恥ずかしそうに、思わず出した手を引っ込めるヒィ。

 顔を赤らめ誤魔化そうとしている、ヒィの態度を見て。

 何をしようとしていたかを悟る。

 こいつらしいわね。

 ダブっちゃうじゃないの、【あいつ】と。

 そう思いながらサフィは、『ちゃっちゃと動く、動く!』と2人を促し。

 先に滝の外へ行かせる。

 下ろしていた荷物の底を、再び持ち上げるヒィ。

 ジーノを先頭に、トコトコと左側へと曲がる。

 ヒィの後ろにくっ付いて、サフィも脱出。

 そして振り返ると、また小さな棒で空間を突く。

 すると曲がっていた水流は、元の通り上から下へ。

 滝は、普段の姿を取り戻した。




「ここは……?」


 先に滝から出たジーノが、思わず呟く。

 滝の前には、丸い大きな池の様な水面が。

 それに沿う様に、幅1.5メートル程の道が有る。

 滝からは、ここを通って。

 奥に見える、深々とした森へと渡るらしい。

 そして、右前方には。

 キラキラと澄んだ水が、小川の様に流れ出している。

 池自体が、清い水で満たされているみたいだ。

 底は或る程度深いらしく、敷き詰められた丸い小石が微かに見える暗さ。

 滝の高さを見ようと、ヒィは横を向く。

 池へと注がれる水の音の割には、意外と高くは無く。

 大体、大人の背丈2人分位か。

 滝が流れ出す高台は、幅が滝3つ分に見える。

 道とは切り立った土壁で遮られ、簡単に登れそうに無い。

 キョロキョロするジーノ。

 でっかい木ばっかで、何と無く不気味だなあ。

 上から燦々と日の光が降り注ぐので、ギリで耐えているが。

 本音は、『さっさと立ち去りたい』と思っていた。

 道と水面は、拳2つ分差が有るので。

 水が跳ねても、足には掛からない。

 それを証明するかの如く、洞窟内はあれだけ湿っていたのに。

 道はカラッカラ。

 これならすんなりと、進めるだろう。

 歩を進めようとするジーノだったが。

 ヒィが何かに気付いた。

 前のジーノに、声を掛ける。


「荷物を守ってくれ!池の中に、何かが居る!」


「ほ、本当か!兄貴!」


 ドスッと荷物を下ろし、水面との間に回り込むジーノ。

 ガバッと荷物に覆い被さり、防御の態勢。

 その直ぐ右隣で、剣を抜くと。

 池の方向へ、構えるヒィ。

 緊張感が有る2人とは違い、サフィは呑気なまま。

 ヒィの右隣でしゃがみ込むと、『終わったら声を掛けてねー』と言いつつ。

 地面に右手人差し指で、〔の〕の字を書き出す。

 ピリピリとした表情の、ヒィ。

 必死に荷物にしがみ続ける、ジーノ。

 飽き飽きし、欠伸あくびまでし出すサフィ。

 ヒィが水面と向かい合って、数十秒が経った頃。

 池の真ん中から、ゆらゆらした黒い影が。

 底から上昇して来る。

 段々と影は大きくなり、ズボッと先を池面から出す。

 それは、何と。




「きゃああああああっ!」




 甲高い悲鳴を上げた。

 ひょこっと水面から、首から上を出したまま。

 悲鳴を上げ続ける。

 その顔は、人間の少女の様に見えたが。

 決定的に違う物が。

 頭の上にピョンと突き出た、白く長い耳。

 近い動物を挙げるなら、ウサギがぴったりだろう。

 と言う事は、ウザギ族の獣人か?

 サフィは確かに、『テトロンへ向かう為のゲートだ』と言った。

 間違ってたのか?

 別の場所へ出てしまったのか?

 剣を構えたまま、ヒィは悩む。

 ジーノからは、『状況を教えてくれよー』と要求される。

 しかし他人に説明出来る程、良く分かっていないヒィ。

 仕方が無いので、ヒィはウサ耳少女へ声を掛ける。


「お前、何者だ!名を名乗れ!」


 すると、少女は。

 悲鳴を止め、逆切れした様に。

 怒声を上げる。


「あんた達の方が、何倍も怪しいでしょうが!それと!あんたが名乗る方が先でしょ!」


「な、何をーーーーっ!」


 ぐぬぬぬ……。

 睨み合う2人。

 しかし先に折れた方は、ヒィだった。

『はあーっ』と一息吐いた後、少女に対し。


「俺は、〔ハイエルト=アジカ〕!人間だ!ここに居る2人と、所用でテトロンの町に向かっているっ!」


 これで良いか!

 文句無いだろ!

 さあ、名乗って貰おうか!

 池へ向かって怒鳴るヒィ。

 対して、池の中の少女は。

 本当に名乗るなんて、馬鹿なの?

 そう呟きながら、『分かったわよーっ』と大声を上げ。

 取り敢えず、名前だけ告げる。

 何故か、プンスカと怒りながら。




「私は【ユキマリ】!これでも立派な【微ウサギ系ウサギ族】よ!文句有るっ!」

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