↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/1285

ヒィの新しい力で、浄化と回復

 この空間に関して、サフィが語った内容には。

 沢山の疑問が有った。

 しかしそれ等に付いてヒィはもう、問うのを止めた。

 サフィの、先の質問に対する答え。

 その文章を口にする時の表情が。

 余りに寂しそうで、辛そうに思え。

 これ以上は憚(はばか)られそうだったから。




「それで?オラ達はこれから、どうしたら良いんだ?」


 暫(しば)しの静寂が、3人を包む。

 それに耐えられなくなって、ジーノがサフィへ話を切り出す。

 遠い目をしていたサフィも、空元気なのか。

 力強い声で、一番下に広がる円形の広場を指差す。


「まず、あそこに向かうわよ!」


「『テトロンに繋がってる』って言うゲートは?」


 てっきり真っ直ぐ、テトロン往きのゲートに向かうと思っていたジーノ。

 サフィは首を横に振る。


「広場の真ん中を良ーく見なさい。何か有るでしょ?」


「そう言われれば、確かに……。」


 冷静さを取り戻した今なら、はっきり分かる。

 ヒィ達が居るのは、下から数えて3段目。

 ゲートらしき物は、2段目から存在するらしい。

 2段目、1段目、広場と。

 視線を送って行くと。

 中央にキラッと、光る物が。

 何だろう、あれは?

 それを確かめるが如く、広場まで降りる事となった3人。

 階段を注意深く、1つ1つ降りて行く。

 幸いにも、ボロッと大きく崩れる事は無かった。

 ただ、どの神に合わせて造られたのか。

 小さなジーノだけで無く、ヒィも降りるのに苦労する。

 それだけの高さが、階段の1段1段に見られる。

 器用にピョンピョンと、跳ねる様に降りて行くサフィを見ていると。

 やはりここには、馴染みが有るらしく感じる。

 ゆっくりと下りる内に、3人は無事最下層へと辿り着いた。




「1番下でも、結構広いな。」


「オラには、良く分かんねえよ。」


 ヒィの腰位しか身長の無いジーノとは、見えている景色が違う。

『じゃあ』とヒィは。

 ジーノの腰を抱え、身体を持ち上げてやる。

 ヒィの目線と同じ高さまで掲げられると、ジーノは嬉しそう。


「これが兄貴の目線かあ……ほんとだ、この高さでも広く感じるんだなあ。」


『ありがと、もう良いぜ』とジーノが頷くので、ヒィはジーノを下ろしてやる。

 ざっと直径は、50メートル辺りだろうか。

 その真ん中に、トコトコと駆け寄り。

 ジーノがキラリと輝く物を手で指して、大声でヒィを呼ぶ。


「これ、凄いぜ!キラッキラだ!」


 わああっ。

 歓声を上げるジーノ。

 その傍まで寄って行くと、そこには六角形の透明な柱が。

 空に向かって斜めに、何本も突き出ている。

 今度はヒィがしゃがんで、ジーノと目線を合わせる。

 柱の中は、何やらモヤが掛かっている。


「中に見えるモヤモヤしてるの、あれは?」


「ああ、あれはね……。」


 ヒィの問いに、サフィが呟く。




 悪意の塊よ。




「え?何て?」


「あ、ごめんごめん。」


 聞き返すヒィに、焦るサフィ。

 そんな事を言うつもりは無かったらしい。

 幸いにも、ヒィの耳には届いていなかった様だが。

 改めてサフィが答える。


「転送を邪魔してんのよ、あいつが。とっとと払ってくれる?あんたの剣なら可能なの。」


「俺の剣が?」


 指摘され、背中から不殺の剣を取り出すヒィ。

 取り敢えず前方に、チャッと構えてみるが。


「……それから?」


「『払い給え』とか『消え失せろー』とか言いながら、剣でチョンと突(つつ)けば良いわ。」


「それだけで良いのか?」


 不思議そうなヒィ。

 流石にこの剣が、そこまで出来るとは思えなかった。

 しかしサフィは、要求する。

 その仕草を。

 まあ、それ位なら……。

 四方八方に柱を突き出した物体に向け、剣を構え直すと。


「払い、給え!」


 語気を強めてそう叫び、コンッと剣先を柱の1つへと当てる。

 すると。

 ヒュルッ!

 剣先から、青白い炎が揺らめき立つ。

 そしてそのまま、柱の中へと炎が入って行く。

 ビュルルルルッ!

 炎に追い駆けられる様に、柱の上方から黒い煙が噴き出し。

 澄んだ空中で掻き消えた。

 一方、ゆらゆらと炎は柱の中で揺らめき続け。

 容積一杯まで膨張すると、ドバっと上へ発射される。

 そして黒い霧と同様に、空中で消滅。

 それを何回か繰り返し、柱群の黒モヤを全て取り除くと。

 ギラッ!

 周りに眩(まばゆ)い光を放ち、ニョキニョキッと柱が長くなる。

 ジーノの背丈と同じ位だった透明な六角柱が、倍位の大きさと成る。

 大喜びのジーノ。

 兄貴の不思議な力をまた、見る事が出来た。

 すっげーーーっ!

 一方で、綺麗な輝きを取り戻した柱を。

 愛おしそうに、サフィは擦(さす)る。

 間が悪い様に感じるも、尋ねたくて仕方が無い。

 そんなヒィの表情に気付き、擦るのを止めると。

 ヒィの方へ向くサフィ。


「聞きたいんでしょ?あの青白い炎の事。」


「ああ。見た事が無いもんでな。」


「オラは有るぞ。鍛冶仕事の時、しょっちゅう見かけるからな。」


 エヘンと偉そうに、ジーノが口を挟むも。

 サフィに一蹴される。


「あんたが言ってるのと、今回のは違うわよ。全然。」


「えーっ、何処がだよー。」


 不満そうなジーノ。

 しかし、サフィは。


「あんたのは、高温で燃える時に出る炎でしょ。ヒィの剣が出したのは、【浄化の炎】よ。」


「炎に、そんな種類が有るのかあ。初耳だなあ。」


「ドワーフなんでしょ?火の精霊の性質位、知っときなさいよ。」


「だってオラ達を守ってくれてるのは、主に土の精霊だもん。〔他の精霊の性質〕って言ったって、嫉妬されると困るし。」


 プイとそっぽを向くジーノ。

『ジーノが正しいよ』と、ヒィがフォローする。


「ドワーフは、土の精霊の加護を受けてるんだ。基本的な知識ならともかく、深く知ろうとすると……。」


「はいはい、分かったわよ。」


『なら、自慢気に割り込まないの』と、ジーノへ返事すると。

 改めてサフィは、忠告の様にヒィへ話す。


「あんたは知っときなさい。それを持ってるって事は、これからも同じ様な場面に遭遇する羽目になるんだから。」


「縁起でもない事を言うなよ。」


「剣が引き寄せるの、性質なのよ。あんたは、火の精霊に滅法好かれてる様だしね。」


「それは有り難いけど……。」


 素直に嬉しいが、不安も過(よ)ぎる。

 そんな心持ちにさせる、サフィの発言。

 心の片隅にでも、一応留めておこう。

 不幸を吸い寄せる体質みたいで、気に食わないが。

 それが、人々の役に立つなら。

 ヒィは、そう解釈する事にした。




 透明柱群に、輝きが宿ったので。

 ゲートの幾つかが、曽(かつ)ての形を取り戻す。

 それ等の内の1つが、テトロンへと繋がるゲート。

 サフィはそう話すと、或る方向を指す。

 そこは、下から数えて4段目。

 白い木枠にびっしりと嵌(は)め込まれた、頑丈そうな茶色の木材。

 板では無く、丸太をそのまま積み上げた様に見える。

『行くわよ』と、サフィが動き出す。

 それに付いて行く2人。

 ゆっくりゆっくり、4段目まで階段を昇ると。

 グルッと遠回りする様に、時計回りに進んで行く。

 上がってから真反対手前まで来ただろうか、漸く目的のゲートへと達する。

 それは縦3メートル、横2メートル程の大きさ。

 20センチ程の太さの白い枠に、30センチ程の太さの丸太が。

 やはり遠くから見た通り、積み上げられている。

 しかし、真ん中に切れ目は無く。

 1本に繋がったまま。

 どうする?

 サフィの顔色をうかがう2人。

 はあっ……。

 ため息を付き、ヒィに告げるサフィ。


「『開け!』って叫びながら、これに触れなさい。それと、ジーノ。あんたはあたしと、後ろに下がるのよー。」


 珍しくジーノの手を優しく引いて、2歩程下がるサフィ。

 まるでこれから、危険な儀式が始まるかの様に。

 意外な態度に、ジーノはサフィの成すがまま。

 俺は良いのかよ……。

 不満顔では有るが、開かない事には。

 ラモーとの約束が果たせない。

 ヒィはキリッとした表情と成り、右手のひらをゲートの真ん中にピトッと添えて。

 叫ぶ。




「開けっ!」




 すると。

 ガラララララッ!

 何と白い木枠毎(ごと)、ゲートが上昇。

 パカッと開いた空間は薄暗く。

 中からは、ひんやりとした空気が。

 ジーノは、懐かしさをそれに感じる。

 今度は強引にジーノの手を引っ張り、開いた空間へと突入するサフィ。


「あんたも!早く!」


「あ、ああ!」


 2人に続いて、ヒィも中へ飛び込む。

 すると、上昇してから1分も経たない内に。

『ガラッ!』とゲートが落下。

 ドッシーーーン!

 辺りに轟音が響いた時には既に、3人が通過した後だった。

 そして空間は再び、静寂を取り戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。