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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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旅支度、何時(いつ)の間にっ!

 エルフのおさに会う事となったが、ヒィ達は一旦引き返す。

 ここには話し合い〔だけ〕をするつもりで訪れたので、本格的な旅の装備を持ち合わせていない。

 なので、屋敷に戻って荷作りをしないと。

 〔エルフのたわむれ〕を離れ、細い道を辿たどる。

 筈だった。

 しかし……。




「戻る必要は無いわよ。」


 抜けようとするヒィを、サフィは引き止める。

 思わずオウム返しするヒィ。


「何でさ。」


「こんな事も有ろうかと思ってねー。ちゃーんと用意していたのだよ。」


 自慢気に言うサフィ。

 すると何時の間にか、サフィの後ろに荷物らしき袋が。

 袋を担ぎ上げては、『これがあんたの分、こっちはユキマリの分』と渡して行く。

 冗談だろ?

 俺達はここに来る前、旅支度なんてして無いぞ?

 疑心暗鬼になりながらも、袋の中身を除くヒィ。

 恐る恐る、ユキマリも。

 すると。

 旅立つ時に自分が詰めている、いつもの衣服が入っているではないか。

 ギョッとした顔になるヒィ。

 ユキマリと目線が合う。

 彼女も驚いた顔付きになっていた。

 そりゃそうだ、身に覚えが無いのだから。

 しかし確かに、この感じは俺自身の手でやった物だ。

『不気味過ぎる』と、おっかなびっくりの2人。

 それとは逆に、『ふんふんふーん』と鼻歌交じりのサフィ。

 こいつが何か仕掛けたのか?

 うーん、良く分からない。

 悩む2人に、サフィが言う。


「そんなに信じられないの?〔あれ〕を入れさせて良かったー。」


「あれ?あれって何だ?」


 さま反応するヒィ。

 サフィは荷物袋を指しながら言う。


「入っている筈よ。〔手紙〕がね。」


 何を言い出すんだ?

 そう思いながらも、2人は袋の中を探る。

 すると『ガサッ』と言う音と共に、何か薄っぺらい物を掴んだ。

 ゆっくり取り出してみると、ただの紙だった。

 便せんらしきそれには、文字が書いてある。

 ヒィとユキマリ、双方同じ文言が。

 それは。




 《何とかなったから、頑張れ。》




「こ、これって私の……!」


 紙を持ったまま、わなわなと震え出すユキマリ。

 確かに自分の筆跡だ。

 思わずサフィへ叫ぶユキマリ。


「どうなってるの、これっ!私、書いて無いわよ!こんなの!」


「でもあんたの字でしょ、それ。誰かが真似したって言うの?」


「そ、それしか考え……!」


 言葉に詰まるユキマリ。

 一方でヒィは、その文言から。

【或る可能性】を見出していた。

 それを裏付ける様に、ヒィが取り出した紙には。

 ぶら下がっている者が居た。

 それは紙から離れ、ヒィの左肩に乗ると。


「ピッピッ。」


 頭を左右に傾けながら、嬉しそうに鳴いている。

 ヒィが目を丸くして言う。


「リディ!」


「ピーッ。」


 それは、ヒナの姿をしたリディだった。

 小さな羽をパタパタさせて、頭をヒィの首元にスリスリする。

 戸惑うヒィに、サフィが声を掛ける。


「どう?信じる気になった?」


「信じざるを……得ないな。」


 トホホ。

 結局、付いて来るのか。

 大人しく待っている様に言ったんだがなあ。

 ……いや、待てよ?

 あの推測が当たってるなら、これは【大人しく待っていたご褒美】的な感じなのか?

 くっそー、サフィのやる事は分からん……。

 考え込むヒィ。

 その間もリディは、ヒィの身体をあちこち乗り回る。

 そして『ここが自分の居場所だ』と主張するかの様に、ヒィの髪の毛の中に潜り込む。

 対してユキマリは、混乱が加速する。

 リディはただの女の子、〔火の鳥〕なんてただの設定。

 そう思っていたから。

 ヒィの屋敷に住み始めてから、リディはずっと少女の姿だった。

 熱心に慕う姿から、〔ヒィの身内だ〕と考えていた。

 だからこそ可哀想に思われ、ヒィとの相部屋を認められたのだ。

 今、目の前で。

 ヒナを『リディ』と呼ぶヒィが、不思議で堪らない。

 ただでさえ手紙を見て、頭の中がおかしくなってるのに。

 何よ!

 何なのよ!

 そう叫びたくなるユキマリ。

 でも流石に自重する。

 ここでわめいても、何の解決にもならないし。

 第一、『この程度でそんな態度を示すなら、同行は無理ね』と。

 サフィに判断されかねない。

 折角のチャンス、逃す訳には行かない。

 絶対に良い所を見せて、これからもヒィと旅するんだから!

 そこまで考えると、ユキマリの思考も落ち着きを取り戻す。

 現実を受け入れなさい、それが一番の道。

 自分にそう言い聞かせ、ユキマリは前を向いて進む事に決めた。

 スッキリしたら、悩んでいた自分が馬鹿らしくなる。

 顔付きも若干、明るくなって来た。

 それは〔気持ちが整理出来た〕のでは無く、〔開き直った〕だけなのでは?

 そう思う人も居るかも知れないが、突っ込むのは野暮と言うもの。

 ユキマリの為に、そっとしておいてあげよう。




焔鳥ほむらどりとは、珍しいですね。」


 エルフ達に、そう声を掛けられるヒィ。

『成り行きで、まあ……』と照れるも、『ピーッ』と鳴く声がするので。

 顔を緩ませる訳にも行かず、ヒィの顔面筋肉は引きりそうだ。

 ややこしいヒィの表情を見て、ゲラゲラ笑っているサフィ。

 ユキマリはすまし顔、『我関せず』と言った感じか。

 3人共、既に袋を担いでいる。

 何時でも旅立てる、準備は整った。


「それでは、どうぞ。」


 エルフ達は満を持して、物体に掛けている幻術を解く。

 すると木の様に見えていた物が、キラリと輝き出す。

 純銀で出来た、木のちょう像。

 それと見間違う位に、見事な造り。

 恐る恐るヒィは、木の幹に触ろうとする。

 その後ろから、『なーにビビってんのよっ!』と。

 サフィがドスッと体当たり。


「いてっ!こ、こらっ!何を……!」


 怒りながら、右手拳を振り上げようとするヒィは。

 バランスを崩し、倒れ掛かる。

 不本意ながらその時、左手でガシッと幹を掴んだ。

 その途端、ヒィの姿が『シュッ!』と消える。

『さあさあ、あんたもあんたも!』と、強引にサフィが勧めて来るので。

おどかされては堪らない』と、自発的にユキマリも幹を掴む。

 シュッ!

 ユキマリも姿を消す。

『じゃあ、あたしも!』と、幹に抱き付くサフィ。

 ヒュッ!

 サフィの消え方が少し怪しかったが、気にしない。

 無事に移動したのを見届け、エルフ達2人は。

 〔エルフの戯れ〕に幻術を掛け直し。

 自分達も幹に触れ、暮らしている土地へと移動したのだった。




 フキ近郊に浮かぶ、空中じまへ乗り込んだ3人。

 待っているのはワクワク感か、それとも苦難の道か……。

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