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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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事情が有るんですよ、エルフにも

「彼女達が……名前の由来?」


「そうよ。〔戯(たわむ)れ〕ってのはねえ。エルフが〔楽しく遊んでる〕んじゃ無くて、〔ここに侵入した者を弄(もてあそ)んでいる〕って意味なのよ。」


 ヒィの疑問に答えるサフィの言葉は、何か不吉。

 それに付け足す様に、『その板に何しても無駄よ、ただの板だもの』と言われ。

 ガックリするヒィ。

 ユキマリは真顔になって、サフィに尋ねる。


「あなた一体、何処まで知ってるの?」


「さーてねー。」


 明後日(あさって)の方向を向いて、はぐらかすサフィ。

 その横を通り過ぎて、ヒィの元へ歩み寄るエルフ達。

 外見は、武闘会で出会ったレッダロンに似ているが。

 オーラはやはり劣るか。

 ツンと尖った耳が、サラサラした金色の髪からチラリと見える。

 こちらもレッダロンより、やや小さい。

 服装は地味目で。

 深緑の生地に、黒と濃い茶色の斑(まだら)模様を配置。

 これは森に身を隠し、対象から見つかりにくくする為で。

 その点では、狩りをする人間の格好に似ている。

 エルフの側からすれば、『人間の方が真似をした』だろうが。

 そこまでして隠れていたエルフ達は、今やヒィを〔狩りの対象〕と見做(みな)し。

 周りをグルグル回りながら、真直(まじか)で観察している。

 全身を舐め回す様に見て来るので、ヒィは何だか照れくさい。

 2人は満足した顔で、ヒィの元から離れると。

 怪しげな物体の左右に立ち、ニコッと笑い掛ける。

 意味が分からない、ヒィとユキマリ。

 向かって右側に立つエルフが、一言。


「あなたには、資格が有りそうですね。これに【触れる】資格が。」


 触れる?

 ゲートじゃ無いのか?

 疑問に思うヒィ。

『何か勘違いしてる様ね』と、サフィが言う。

 向かって左側に立つエルフが、その辺りの説明をし出す。

 話の内容は、以下に。




 これは、ゲートでは有りません。

【ただの転移装置】です。

 実はここの真上に、私達が普段暮らす〔土地〕が有るのです。

 エルフコミュの集合体、私達はそれを【カテゴリー】と呼んでいるのですが。

 上空に浮かんでいる土地は、訳有ってそこから分離し。

 宙を漂(ただよ)っていました。

 カテゴリーに戻りたい、しかし私達の力では土地を自由に動かせない。

 なので孤立したまま、何十年と放浪していました。

 或る日その進行が止まり、ここで固定されました。

『何かが自分達の土地に干渉している』、そう考えた当時の長(おさ)が。

 神様にお願いし、地上に調査隊を派遣しました。

 するとこれが、〔土地の中に埋まっている何か〕と結び付き。

 地上と上空との通り道を形成した、と分かりました。

 長は神様の協力の下、地中の物を掘り出しました。

 それは何と、【銀で出来た、木の切り株】だったのです。

 私の隣に在る物を、良く御覧なさい。

 〔根っこの部分が無い木〕に見えるでしょう?

 そう。

 私達の土地で見つかった切り株の【上部】が、ここに何故か突っ立っていたのです。

 今は私達の術で普通の木に見えますが、術を解けば銀色に輝き出します。

 この場所へ定着し、上空の土地は安定状態に有ります。

 カテゴリーへの帰還を諦めた、エルフ達は。

 〔これ〕を利用し、地上とを行き来して。

 仮初(かりそめ)の平穏を手に入れたのです。

 しかし人間達の中に、これを奪おうとする者が現れました。

 奴等は一目見て、『銀で出来た木だ』と思ったらしく。

 何の考えも無しに、『バラバラにして運ぼう』と考えました。

 私達にとっては、迷惑な話です。

 それと同時に、後を付けられてこれを発見されてしまったミスを悔やみました。

 奴等は何とか追い返しましたが、私達は長と共に話し合いました。

 辺りの人間達とは仲良くしたい、事を構えたくない。

 だからと言って、転移装置の地上部は私達に動かせない。

 どうやら神様にも、位置をずらす事は出来ないそうです。

 そこで私達は決めました。

『ここを特別な場所にしてしまおう』と。

【『エルフが良く出没し、人間を受け付けない遊び場にしている』振り】をしよう、と。

 その為、二重に幻を張り。

 1つ目で人間達を追い返し、2つ目でエルフに敵対する者かを見極める。

 そうやって、不要なトラブルを回避して来たのです。

 ですが最近、【或る方】から。

『全てを解決出来る者が見つかった』と言う情報が齎(もたら)されました。

 近い内に訪れる筈だから、とも聞かされたので。

 交代でその人物を待ち受けていた、と言う訳です。

 私達には、直ぐに分かりました。

 あなたの特殊性を。

 しかし決まりは決まりなので、念の為に試させて頂きました。

 御無礼を、お許し下さい。

 それを承知で、お頼みします。

 どうか私達の願いを、聞き届けては頂けないでしょうか?

『それでもやはり、カテゴリーに戻りたい』と言う願いを。

 どうか、どうか……。




 話し終わり、スッキリした顔になるエルフ。

 対照的に。

 話のややこしい中身に、頭の中がこんがらがるユキマリ。

 もう1人のエルフは、こう付け加えた。


「後ろで突き刺さっている物は。昔上空の土地から落下した〔板〕が、地面に突き刺さっただけです。こちらも、ゲートとは何の関係も有りません。」


「そ、そうですか……。」


 ヒィはガックリする。

 そして同時に、幾つかの疑問が浮かぶ。

 銀の木と切り株は、本当にただの転移装置なのだろうか?

 それにサフィははっきりと、『ゲートが在る』と言った。

 〔エルフの戯れ〕に。

 更に、『彼女達へ情報を与えた』と言う〔誰かさん〕って……?

 チラッと、サフィの方を見るヒィ。

 欺瞞(ぎまん)の目付きに、サフィは不服だったのか。

 文句を垂れる様な言い方で、ヒィに突っ掛かる。


「何よ!言いたい事が有るなら、はっきり言いなさいよ!」


「そこまで怒らなくても……。」


「怪しんだ視線であたしを睨(にら)む、あんたが悪いのっ!」


「えっ?俺、そんな顔してたか?」


「自覚が無いなら、重症ね。呆れたもんだわ、全く。」


 腕組みをして、プイとそっぽを向くサフィ。

 ヒィの口からは、素直に『ごめん』と謝罪の言葉。

 それが弱々しく発せられたので、逆に引くサフィ。

 気持ち悪いわねー、そこまでやり込めたかしら?

 思い当たる節が無いサフィは、『良し、あたしは悪く無い!』と開き直り。

 ヒィに、訳を尋ねる。


「で?何であたしを見てたのさ?」


「あ、ああ。まさかとは思うけど、エルフ達に言ったのって……。」


「あたしじゃ無いわよ。〔レッダロン〕でしょ、多分。ねぇ?」


「は、はい。お知り合いでしたか。これは言葉足らずで、申し訳ございません。」


 説明してくれた、左側のエルフが。

 そう釈明する。

 ついでにユキマリが、左側のエルフに尋ねる。


「ねえ。何でエルフじゃ無くって、〔フェアリー〕を見せたの?幻惑で。」


「〔エルフの戯れ〕と呼ばれる場所で、わざとエルフでは無い妖精を見せ。攻撃態勢を取るかどうか、反応を確かめたかったのです。」


「それを看破したサフィが、怒ってズカズカと歩いて行ったと。なるほどね。」


 納得するユキマリ。

 自称〔女神〕が、妖精如きを差別する筈が無い。

 獣人である私を同行させる位だし。

 心の狭い人物に見られ、ご立腹だった。

 そりゃあ、そんな態度に出るわよねえ。

 サフィの心中を察するユキマリ。

 その点に付いては、サフィに謝り倒すエルフ達。

 神には独特のオーラが有る、それがサフィから感じられなかった。

 だから、神だとは思わなかったらしい。

 エルフ達の述べる理由は、ヒィには同意出来る物が有った。

 こいつはどうも、その部分は胡散(うさん)臭い。

 サラが気軽に接するし、ブレイムからは畏怖(いふ)されている。

 さっきも、得体の知れない者を召喚しようとしていたらしいし。

 時々変な技を見せるかと思えば、仲間である筈の神々を〔あいつ〕呼ばわりする。

 正直、女神の取る行動とは思えない。

 〔それ以上の何か〕の方が、妥当ではないか?

 そこまで思いを巡らせると、何時(いつ)も。

 ヒィは、考えを止(や)める。

 何だって良いじゃないか、仲間なんだから。

 何者であろうと、関係無い。

 その結論に到達するから。




「で?俺は何をすれば良い?」


 レッダロンが言った、〔全てを解決出来る者〕は。

 恐らく俺だろう。

 サフィと何やら、話していたみたいだし。

 武闘会後の光景を見ていたヒィは、そう考え。

 サフィに尋ねる。

『えへん』と胸を張り、サフィはヒィに告げる。


「まずは、エルフの長に会って貰うわ。本当に元に戻りたいか、最終確認しないと。」


「その後は?」


 自分に、そこまでの力が有るとは思えなかった。

 色々な炎が使える様にはなったけど、行使対象の大きさには限度が有る。

『宙に浮かんでいる』との、エルフの住む土地を。

 丸ごと、どうにか出来るとは考えられない。

 悩むヒィに、バンッと背中を叩き。

『自信を持ちなさい!』と言わんばかりの顔付きで、サフィは言う。

 あの言葉を。




「あんたなら出来るって。何たって、ファンタジーなんだから。」

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