女の子って不思議です。
生物は飛んでいる。
新しい住処を求めて。
生物が向かっている方向には街があった。
「なぁ、本当に狩りに行くの?」
「はい。夕飯の材料も補充したいですし…」
朝の5時に起こされた僕は眠い目をこすりながら聞いた。
「こんな時間に何を狩るのさ?」
「それはですね…」
桜が答えようとした瞬間、外から大きなサイレンが聞こえてきた。
ウーーーーーウーーーーー
『只今、生物観察塔から伝達があり、生物の接近が確認されたとのことです。住人の方々は家から出ないようにお願いします。 繰り返します。只今、生物観察塔から………』
「念のため聞くけど、本当に狩りに行くの?」
「わかってます!今日は大人しくしています!!」
今日はというところに疑問を抱いたがまぁ、ノーコメントで。
っていうか、生物の接近かぁ…初めてだよなぁこういうのって。
そこまで考えて僕はやっとあたりまえのことに気付いた。
(そういえばこの街の人たちも桜と同じ種族なんだよな)
一見人類にしか見えないから違和感が全然なかった。
「繁栄するのはやっぱり人型かぁ」
「?何か言いましたか?」
「いっ、いや、何でもないよ!それよりじいさんは?」
さっきからじいさんの姿が見当たらないのだが…
「おじいちゃんなら今朝早くに用事があるとかって出かけましたよ」
「へぇ〜そうなんだ。いつ帰ってくるの?」
「明後日までには帰ると言っていましたよ」
「そうか、明後日か………ってはぁ!?明後日!?」
「はい。泊まりがけです。心配しなくてもおじいちゃんは大丈夫ですよ」
「いや、そうじゃなくて…今日も明日も二人きりってこと?」
「はい。嫌ですか?」
「別にそんなんじゃ!ただ、布団が…」
そう、この部屋は狭いから個人の部屋なんてあるわけも無い。かろうじてあるのが女子更衣室だ。
つまり、布団も3つを並べるのが精一杯ということであり、じいさんがいる時なら兎も角、桜と二人きりというのは大変よろしくないかと…
「布団ならいつも通り敷けば良いではありませんか」
この通り桜は無防備だし…僕だって男の子だぞ?いや、別に襲おうとか思ってるわけじゃなくて普通に良いのかな?ってさ…
「では、今日は特にすることもないですし布団を敷いてのんびりしましょう」
「…うん」
まぁ、桜が良いなら良いか。
僕の意思じゃない。そう、僕の意思じゃないんだ。
ー夜ー
「ふぁ〜…そろそろ寝ましょうか?」
「そうだね。そろそろ降参してくれると寝れるのだけれど?」
僕らは隣り合わせて敷かれた布団の上で、もう何回目なのかもわからない将棋を指していた。
「嫌ですよ。一樹が降参してください」
「いやいや、ほら王手」
「ムグゥ…ここに移動すれば…」
「はい。終わりね、僕の勝ち」
「もう一回です!」
「だーめ。もう寝るの」
そう言うと僕はさっさと布団に潜り込んだ。
「むー、一樹のいじわるぅ…」
「おやすみ、桜」
「…おやすみなさい、一樹」
チク、タク、チク、タク。
静かな部屋に時計の針が動く音だけが響く。
そんな中、
スー…スー……
桜はもう寝ているらしく、可愛らしい寝息が聞こえてくる。
一方僕はというと・・・ヤバい、寝れないです。
寝れるわけないじゃないですか!
何で女の子って風呂上がりに良い匂いがするわけ!?
男の子はここまでじゃないよ!?性質なの!?
それにこっちを向いて寝てる桜の寝顔…マジ可愛いです!
…って、いかんいかん。思考が変態っぽくなってるぞ。
さっさと寝なくては。そう思いながら時計を確認する。
『23:57』
「本当に寝なきゃヤバいぞ…」
そう呟いて、僕は目を閉じた。