嫌な奴ほど内心は優しかったり仲良くなれたりします。
「…………きて…かず…お…て」
(何だろう?何か聞こえるような…)
「一樹……て!」
(?何を言っているんだ?)
「一樹!起きてってば!!」
「うわっ!?」
いきなり耳元で叫ばれた僕は驚いて飛び起きた。
「お、おはよう桜…」
「もぅ…今何時だと思ってるのですか…?」
そう言いながら桜が差し出していた時計を見ると…
『10:59』
僕は目を疑った。だってお昼だよ?
「ハハ、どうやらちょっと寝坊しちゃったらしいね」
「これのどこがちょっとなのですか…」
あはは、たまにはそういうこともあるさ。
それにしても………
「何か外が騒がしくない?」
「はい。さっきから市役所前に人だかりが出来てますよ」
「なんで?」
人だかりができる理由か…市長が何かしでかしたのかな?
「それを確かめに行きたいからあなたを起こしていたんですよ…」
「本当にすいませんでした」
やだなぁもう。次からは寝坊しないようにしなくては…
「早く用意してください、気になってもう仕方がありません」
「はいっ!只今!!」
これ以上桜を待たせるわけにはいかない、怒らせてご飯抜きになることだけは避けたい!
「出来ました!!」
「ん?随分と早いですね」
「もちのろんですとも!」
「ふふっ、それでは行きましょうか」
こうしてじいさんのいない長い1日が始まったのであった。
ー市役所前にてー
ガヤガヤ…ワイワイ…
『えー、皆さんこんにちは。市長の高橋です。いきなりですが、今日集まってもらったのは、深刻な発表があるからです』
それを聞いて周りの人達が騒ぎ始める。
でも、僕はその内容が大体分かっていた。
『実は先日の生物についてなのですが…』
だから生物が接近していて家に居ろと言ったのに集めた。
『その生物の種類が判明したと伝令がありました』
だから生物への対策を話すために集めた。
『生物の名は【エレキハネトカゲ】です』
その瞬間、広場が静まり返った。どうしたんだ皆は?
でもって、その生物への対策とは…
『対策として、私はこの街を捨てて逃げる事を決断しました』
人を集めてそいつを狩る。
ってえぇ!?逃げる?なんで!?
『反対意見や質問のある方は挙手をお願いします』
「はい!」
僕が思いっきり手を挙げると、なんだなんだ?と周りの視線が集まる。
『…どうぞ』
「そいつを狩る事は出来ないんですか?」
『!?………すいません、もう一度お願いします…』
周りにも、ざわめきが聞こえはじめる。
「だから、そいつを狩ってしまえば良いんじゃないですか?」
『あなた、本気で言っているのですか?』
なんだなんだ?なぜ僕の頭を心配されるんだ?
『エレキハネトカゲは危険度Aの生物ですよ!?戦うという選択肢がまずおかしいのです』
「だからって逃げるのか?僕は反対ですよ」
市長は僕を怪訝な目で見ている。
「私も反対です」
「桜!?」
〔…子供達の為です〕
そう、桜が僕にだけ聞こえるような声で囁いてくる。
改めて周りを見ると確かに子供達が、親に「引っ越しは嫌だよ」と泣きついていた。
そこまで確認すると僕の中で何かが弾けた。
「市長、でしたら僕と桜でそいつを狩ってきましょうか?」
そう言った後で一応、桜に答えの分かりきった質問をしておく。
「(桜、大丈夫?)」
「(もちろんです)」
僕の提案を聞くと市長はしばらく考えた後に、
『分かりました。もし失敗したら逃げるという事で構いませんね?』
と言ってきた。
当然僕達はその言葉に即答した。
「「はい。大丈夫です」」
僕と桜は夕食を食べた後、奴を倒す計画を立てていた。
「奴の大きさは約2メートル。特徴は名前の通り、体内で電気を作ることと空を飛ぶこと。基本的に単体で行動するらしい。他にも熱を好み、動くものを狙うという習性がある」
「分かりました。それでは作戦を考えましょうか」
「了解!」
作戦の決行は明日の昼ごろ、街から徒歩10分くらいの森の中だ。
市長から前もって武器になりそうな物が送られてきた。
やっぱり市長もあんなことを言っていたけど、街を捨てることは内心では嫌だったらしい。
「よし、作戦も決まったし、明日に備えて寝るか!」
「そうですね。おやすみなさい、一樹」
「おやすみ、桜」




