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そいつの正体

 駆けつけてきた救急隊員に兵士を預けたあと、僕は再び奴のあとを追うことに決めた。

 理由は至極簡単で、このまま被害を拡大させてはいけないと思ったからだ。

 また、このことは恵理香、優里香、総司の三人には伝えないことに決めた。


「桜!」


「はい!行きましょう」


 僕が呼びかけると桜が返事をする。

 僕達のチームワークは最高と言えた。

 二人で少し行くと奴のあの大きさだ、すぐに見つかった。


「いた…」


 奴は進行を停止していた。

 いや、停止せざるを得なかったのかもしれない。

 なぜなら奴はそのままそこに崩れ落ちたからだ。

 え?と、桜は事態が飲み込めずに立ち尽くしている。

 だがそれは僕も同じだ。

 しかし、予想外の出来事はそこで終わらなかった。

 奴の体が急に赤くなったと思うと湯気が発生し始めたのだ。

 やがて、その蒸気は奴の周りの木々を包む。

 それでもまだ蒸気の広がる範囲は収まらず、こちらへと向かってきていた。

 その蒸気になにやら嫌な予感がした僕は立ち尽くす桜の手を取って走った。




 こうして街へと戻った僕達は市長の元へと向かうべく商店街を歩いていた。

 しかし、そこはまだ昼間だというのにとても閑散としていた。

 店にはシャッターが閉まっており、人などどこにもいない。


「一体…なにがあった?」


 とにかく今は市長の元へと急ぐしかない。





「市長!」


 僕は市長の部屋の扉を思いっきり開けた。


「…どうしたんだい一樹君?」


 市長はのんびりした口調で僕に尋ねる。

 この緊急事態にもいつもと変わらない市長に少し苛立ちを覚えながらも僕は言った。


「…一体どういうことですか?」


「なんのことかな?」


「あの生物ですよ!いきなり倒れちゃうし蒸気は出てるし!どういうことか説明してくださいよ!」


 市長に説明を求めるのは間違っていると僕は分かっていた。

 でも、このやり場のない感情をどうして良いのか分からなかったのだ。



『わしが説明してあげるよ』



 そう言いながら奥のドアから一人、男が出てきた。

 白い髪に低めの身長、丸まった腰のその老人は…


「ま、マーリンさん!?」


 本来ならば観測所に居るはずのマーリンさんだった。

 僕のそんな疑問もお構いなしにマーリンさんは説明を始めた。


「おそらく、この病原菌を発生させたのは奴ではない」


「…どういうことですか?」


 奴が犯人じゃない?

 そしたら他に犯人がいるということになるじゃないか。


「確かに奴はこの生物を色々なところへと散布して感染させた。だが、それと同時に奴も感染しておったというわけじゃ」


「…つまりあいつも被害者だったということ?」


「その可能性が高いじゃろうな。それになにやら蒸気が発生していたと言わんかったかの?」


「言いました」


「おそらくそれがこの生物だったのじゃよ。目視出来るほどに集まったこの生物はかなりの被害をもたらすことになるぞ」


 かなりの被害…

 その言葉を僕はゆっくりとかみしめた。

 じいさんの病気はまだ治っていない。

 このままだと桜も感染してしまうかもしれない。

 ましてや、優里香や恵理香、総司にまで感染してしまったら隊長として会わせる顔がない。




 その後、一旦家に帰った僕達は最後にマーリンさんが言った言葉の意味を考えていた。

「この生物は遺伝子組み換えの可能性が高い」

 この言葉が表す言葉は多分一つであろう。

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