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14-2 -ランチタイム-

ところ変わって、ラウルとレイは昨日の怪しげな洋館に来ていた。相変わらず昼間でも薄暗い林の中にある大きな洋館、扉の前に立つ二人だが、ここの雰囲気は未だに慣れない、たぶん十回も通っても慣れないのではないかとすら思う。

とにかく、前にそびえている扉を叩いた。しかし、返事は無い。

もう一度、今度は少し強めに扉を叩いてみる。今回も返事は無かった。

「居ないのかな?」

そんなことを重いながら扉を引いてみる。するとギギ・・・と木が擦れあう音を上げながら開いた。

「開いてる・・・居るのかな?」

よく分からないが、扉は開いていて、中をのぞいてみると、廊下の蝋燭はどうやら消えている。

「入ってみる?」

言い出したのはレイだった。

すかさずラウルが静止する。

「いや、流石にまずいだろ、出かけてるのかもしれないし」

「でもドア開いてるよ?」

「鍵のかけ忘れかも」

「じゃあ留守番しといてあげようよ」

「それは留守番じゃなくて不法侵入って言ってだなぁ・・・」

「もしかしたら中で倒れてるかもしれないし、ほら、あの人体弱そうだったし」

これ以上言い合いを続けても無駄な気がしてきたラウルは仕方なくレイの話に乗ることにした。


(明日報告しますって言ってたよなぁ、時間聞いてなかったし、今からでも良いよな?)


と無理やり自分を納得させて、洋館内へと進入、もとい、訪問することにした。

「入りますよー」

一応宣言してから足を踏み入れる、レイはやたらと入りたそうにしていたわりにはラウルの後から付いてきている。

とりあえず昨日通された部屋に向かってみる。すると、廊下の向こうにある昨日訪れた部屋のドアの窓から光が漏れているのが見えた。

「居るんじゃないか・・・」などと考えながら部屋の前まで歩を進める。とりあえずドアの前で大きく息をついてドアノブを捻った。

ガリャリという音ともにドアが開き、ラウルは中を覗き込む。

「あの、昨日来たラウルですけど・・・ブラドさん居ます?」

当然、室内に居た人間の視線はこちらに注がれる、そんな中、ティーカップを片手に、こちらを見ている女性と目が合った。赤い髪と瞳をした女性その服は上下とも黒く、胸には見慣れないエンブレムのようなものが付いている、三秒間ほどお互いに見詰め合っていると、女性が勢いよく立ち上がり、すぐ隣にあった扉を開けてその中へと走りこんでしまった。

その様子を呆然と見て居たラウルはブラドの言葉で我に帰った。

「おや、いらっしゃい、早かったですね。来られるのは今日の夜かと思っていましたよ」

「すいません、早すぎましたね、ところでさっきの女性は?すごい勢いで奥に駆け込まれましたけど」

ラウルは先程彼女が駆け込んだドアに視線を向ける、ブラドも自然な動作でその視線を追った。

「ああ、えと、彼女は・・・ですねぇ・・・私の、侍女です」

『侍女です』の部分を大きな声ではっきりと彼が言った直後、扉の向こうから、「はぁ!?」と聞こえた・・・様な気がした。

「侍女?昨日居ないって言ってませんでしたっけ?」

ラウルが首を傾げると、ブラドの顔色が変わった。額には汗が滲んでいる。

「いえ、今は、居ないという意味だったんです。買出しに行っていました」

「ああ、なるほど、そういうことでしたか」

ラウルは納得の表情で頷いた。

「恐らく着替えていなかったので焦ってしまったんでしょう」

「突然上がってきてしまってすいません、声を掛けたんですけど、返事がなかったもので、いや、俺は帰ろうとしたんですが、連れがね?」

ラウルも顔色を変えて額に汗を滲ませながら必死に弁解している。

「と、ところでフレイヤさん、着替え終わりましたか?」

『ああ、じゃなかった、ハイ』

扉越しの声なので、当然聞き取りにくい。

すぐに扉が開き、先程の女性が出てくる、その姿にラウルとレイが唖然とする。そしてブレドは盛大に吹きだした。

彼女は黒を貴重とした。いわゆる「メイド服」を着ていたのだが、どう見てもスカートの丈がおかしい。膝の上ぐらいまでしかないスカートを気恥ずかしそうに押さえながら出てくる彼女の動作はかなりぎこちなかった。

そして彼女はブラドの耳元に迫り、何かを話し合っている。しかしその内容は二人には入ってこなかった。


(おいてめぇ、客が来るなんて聞いてないぞ、しかもこいつらあの茶髪と金髪の連れだろうが!)

(仕方ないじゃないですか、思ったより早くこられたんですから)

(てか何だよ侍女って、あたしはお前なんかの侍女になった覚えは・・・)

(いいんですか?あなたが『黒の派閥』の一員であることが彼らに知れても)

小声で会話する二人を眺めるレイとラウル。フレイヤはブラドの一言で反論を封じられた。


(確かにここでばれると動きづらくなるな・・・)


こほん、と小さく咳払いをしてから、フレイヤは声を発した。

「あたし・・・わたくし、この館の主であるヴラディスラウス・ドラクリア様の侍女、フレイヤと申します」

ペコリと頭を下げた瞬間、またもブラドが吹きだした。刹那、彼女のブーツのヒールが彼の爪先を踏んだが、見なかったことにした。

ラウルは苦笑いを浮かべながら「斬新な格好ですよね」と呟いた。

「このバカ・・・主様の趣味でして・・・」

改めて自分の格好を再確認し、彼女は顔を赤らめた。

うん、まぁ、恥ずかしいだろう、とラウルは内心で同情していた。

「・・・お茶をお出しします。」

フレイヤが言った後、ブラドが言葉を続けた。

「そうだ、もうすぐお昼ですから、ランチも一緒に作ってください」

今度は彼女の肘打ちがブラドのわき腹を襲った。

(何面倒なこと言ってんだ、あたしはさっさとあしらって追い返したいんだよ)

(いいじゃないですか、おもしろそ・・・彼ら情報を聞きに来たわけですから、結局長居しますし、あなたにも有力な情報が聞けるかもしれませんよ?)

チ、と彼女は小さく舌打ちしてキッチンへと向かった。

「さて、座って待ちましょう」

「あ、どうも」

二人は示された椅子に腰を下ろした。


「どうぞ」

時期にフレイヤが紅茶を運んできた。時刻は11時、今から昼食を作り始めこれを飲みながら喋っていればちょうどいい時間になるだろう。

「おいしいお茶ですね、お茶入れるのお上手なんですね」

「そうなんですか?」

彼の言葉には若干違和感があったが、いい間違いだろう、と流した。

「・・・私のトマトジュースなんですが・・・」

ブラドはワイングラスに注がれた赤い液体を眺めながら呟いた。なんとなくその姿は血を飲む吸血鬼のように見えて、レイは身震いした。

「・・・まぁトマトジュースは嫌いではないですが」

そういって、そのグラスの中身を口の中に流し込む、とたん、彼の眼が見開かれた。その形相にレイが震え上がる。

「おおぉおえぇっ!トマトジュースじゃなくてトマトケチャップじゃないですか!なんてもの飲ませるんです!」

「すいません間違えました」

後ろのキッチンから淡々とした声が返ってきた。

「侍女さんと仲悪いんですか?」

「いえ、そんなことはありません・・・」

水を飲んだり口をもぐもぐさせながら彼は返答した。よっぽどトマトケチャップの一気飲みはかなりきつかったようだ。

その後も、ここでの生活のことなんかを話していると、例の情報について聞けず、昼食が出てきてしまった。

「どうぞ」

ブラドが二人の前に並んだランチを示しながら呟いた。

「あ、どうも」

と挨拶して再び出てきた料理に視線を落とした。目の前にあるのはローストビーフとヨークシャープディング、その他数種類の野菜が添えられている、そして、切り分けられたミートパイ、その隣にはスープが並んでいる。

「美味しそうですね」

「フレイヤさん・・・あなた料理できたんです・・・」

言い終わる前に、キッチンからスプーンが飛んできて、ブラドの頭を直撃し、そのままスプーンはブラドの前に落ち、フォークときれいに並んだ。

「おぉ・・・」

変なところで関心しているラウル、フレイヤもようやくブラドの隣に腰を下ろした。おかしなメンバーでのランチが始まった。


このランチの会話が愉快な談笑になるか・・・

それともトラブルの引き金になるのか・・・


今回はギャグ回ですね



たまには息抜きを・・・

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