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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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第67話:王子の行動

今回、短いです。申し訳ないです。


「なに……。ギルダーツから至急の用件、だと?」




 国王であるドナベルト・ヒナム・ディーデットは、宰相からの用件に眉をひそめた。




「人払いをして欲しいと言う事と、焦りが見えましたので……」

「自分の政務はどうしたのだ」

「ルベルト王子が、代わりに引き受けたと言う事です」

「……分かった。すぐにこちらに呼べ」

「はっ」




 パタンと閉められた扉を見てドナベルトは妙な胸騒ぎを覚える。しかし、表情には出すまいと息子が来るのを待つ。


 外交に行くと言い出したのも驚いたが、戻って来てからのギルダーツの態度には変化があった。もしかしたら、それらが関わっいるのかも知れないと密かに思った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーギルダーツ視点ー



 大ババ様からの報告を言わなければならないと頭では、分かっているが正直に言ったら伝えたくはない。しかし、光の魔法の使い手とこの国は切ってもきれないものがある。


 その事を先送りにする、と言う選択は文字通りない。

 自分は王族であり、民を導く立場の人間。その教育をしっかりと受け、厳しい剣術の稽古にも付いてきた。


 魔法の扱い方も学ぶだけではない。それと平行して、ダンスやマナーを学んだりと今も多忙だが、昔もなかなかに多忙だったと思い返す。




(ルベルトの言うように、気を張りすぎなのかも知れないな)




 今更、性格を変えられる訳もないが……。そんな事を考えていたら、宰相に何度も声を掛けられており、反応が遅れてしまった。




「大丈夫でしょうか?」

「いや、いい。何でもない………」




 ちょっと顔が赤くなったと思うが、気にしないようにと父の居る執務室へと足を運ぶ。宰相も後ろから付いてきており、入ったと同時に閉められる扉。


 気を引き締め、報告された事を伝える。

 段々と父の顔にシワが寄っていくが、それを気にしていたら先には進めない。そう思い、変化していく父を無視しながら話を進めていった。





「──以上になります」




 思わずほうと息を零した。立っている俺の前では父が難しい顔をしながら、こめかみに手を置き静かに息を吐いていた。隣の控えている宰相は俺と父とを交互に見てから自ら声を上げてきた。




「ギルダーツ王子の報告を、まとめますと……。リグート国に身を寄せていたバルム国の姫であるウィルス様が魔獣を倒せる魔法を持っている事。現在、リグート国ではなくディーデット国の領地以内に居る事」




 そして、と言葉を区切り一呼吸を置いてから再び口を開く。




「裏ギルドの拠点と思われる場所に居る可能性があると……言う事ですね」

「既に飛ばされてから、かなりの時間が経っています。今、考えられる者達から編成してすぐでも捜索をと考えています」




 本当なら俺がすぐでも行きたい気分だった。リグート国のレント王子と黒髪に紅目の少年の事をすぐに思い出し、一緒に居る事を願った。


 警護をしていたリバイルからは、ナークと名乗った少年は常にウィルスの傍に居ると言う。外に出た時は少し離れるが、それでもかなり近い距離で彼女の事を見守っているとも聞いている。



 レント王子もウィルスの居場所が分かるような処置をしていると聞き、不思議と不安はなかった。

 あの2人が彼女の助けになるのだと、俺自身は信じ切っていたのもある。


 ………彼女には人には言えない事情があるのだろう。

 そう考えて思い浮かぶのは、リグート国での浴室の事。飼われている猫だと思い体を拭いた途端にウィルスに変わったのだ。あり得ない状況での事に、俺自身も戸惑ったし向こうも似たような反応だった。




(待て、俺は……確か上半身裸……だったな)




 ウィルスが赤くするのは無理もない。良かった……タオルを巻いていなかったら、俺の方が立ち直れない。………あぁ、何でこんな時に思い出すんだか。




「ギルダーツ。どうした」

「いえ……その、なんでもないです」




 急に黙った俺を心配する父。宰相と自国に入る為の制限を軽くするかなど話をしているが正直内容が入ってこない。

 捜索隊には誰を隊長にしようかと考えていると、ルベルトから念話で用件を告げられる。




≪ギルダーツ。必ず連絡を入れるから、彼女を探すの私に任せてくれない?≫

≪…………≫

≪あぁもう。すぐに不機嫌にならないでよ≫

≪し、しかし……≫

≪君が抜けると父も良い顔をしない≫




 確かに……。

 王位を継ぐのに近い俺に対する期待はかなり高い。ルベルトは俺を支える上で、自分が抜けても支障はないのだと言いたいのだろう。




《父に報告する前に、先に連絡するからさ》




 むっ、それは……。

 ルベルトは俺よりも探知魔法が優れている。人捜し、しかも特定の人物となると特徴を知っているルベルトにお願いした方が良いのかも知れない。




《分かった。父に上手く言ってみる》

《うん、ありがとう。……絶対、安心させるから期待してて》

《優秀な弟で助かるよ》




 それはお互い様、とルベルトが言い念話を切る。

 宰相と父はまだ話をしていたが、強引に話を切り上げさせ俺の意見を通した。


 一刻も早くウィルスの無事を確認したいのには、理由がある。

 急がなければ………ディーデット国が危ないのだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 場所は変わり、ディルランド国。

 国王のアクリア王は、息子のエリンスが病により倒れたと聞き急いで駆け足で向かっていた。

 イーグレットが薬師にお礼を言い、出て行くのを見て慌てて呼び止めた。




「もう行くのか、イーグレット」

「面会は私でも出来ないので……。お見舞いに果物をと思いまして持って来ました」




アクリアはそこで疑問が湧いた。会えないと言った割には何だか、()()()()()していた様子だったからだ。

 不思議に思いつつも、イーグレットと別れダメだと思いつつもノックをし、息子のエリンスの様子を窺おうとして――カクン、とそのまま寝てしまった。




「ど、どどどど、どうします!?」

「うるさい。黙ってベットに寝かせるんだよ。次に目を覚ましたら、記憶は少し位は飛んでいるから」

「あ、あわわわわっ。バレたら終わりだよ~~」

「既に退職に片足突っ込んでるんだから諦めろって。イーグレット様からの協力もあるんだ……多分、1週間は保てるだろうよ」




 アクリア王に振りかけたのは眠気を誘う魔物の粉。それを人間用に組み直して作ったものであり、疲れが溜まっている人間に速攻で聞くもの。眠気を誘うだけの作用だが、王のように瞬間的に寝てしまう者もいる。


 そんな彼を囲むのは、薬の知識を豊富に扱う薬師達だ。上司も部下も関係なく、青ざめるが頼まれたものはしょうがないと無理矢理に納得させる。




「も、もし、保てなかったら………?」

「………」

「………室長?」

「諦めろ」

「そんな!!!」




 無職は嫌です~~と泣きわめく部下達に、室長も内心では泣きたいのだと言いたい。




(恨まないで下さいね、国王。頼んできたのは………殿()()なんですから)




 病に倒れたと言うのも嘘である。

 息子のエリンスは、既にこの場にはおらず自国からかなり離れた所に居るのだ。

 護衛にラーグレスを連れて、南の国ディーデット国へと進んでいた。




「あ、あの、今から説明をするのは」

「既に時間経っている。宰相に怒鳴られるだけでは済まないだろうな」

「……………」

「平気だ、俺も腹をくくってる」

「うぅ~~~。平和に仕事したいよぉ」




 泣きながら訴えて来る部下達をどうにか宥め、室長は月が明るく照らす夜空を見上げる。今日も綺麗だなと言う現実逃避をしつつ、部下達を慰めながら今後の方針を考えた。


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