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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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黄色の印

ーリベリー視点ー



 姫さんを守りつつ、目の前で行われている魔物狩りを始めた弟君とナーク。呆れるやら若いんだか……スゲーな。

 何でも姫さんに良い所を見せようと頑張る男2人。姫さんは心配そうにしながらも、ずっとオレの事をすがる様な目で見て来る。


 あのな、姫さん。

 その時に器用に睨んで来る2人の方が怖いんだ。あんまり刺激してくれるな。例え相手が体長5メートル程ある、オオトカゲを相手にしながらでも、だ。




「ギシャアアアアア!!!」




 自身の尻尾を2人に叩き付けるが、目標はいない。と、なるとすぐにオレと姫さんの方へと視線を向けた――その瞬間。


 風がトカゲを舞い上げる。フワリといとも簡単に。




「ウィルスを見るな!!!」




 剣を上へと掲げた弟君と、空中で動きを封じられたトカゲのさらに上。そこからナークが光の槍を形成しつつ3つ引き出した。




「主を、見るな!!!」

「ギャウウウ!!!」




 なんと……まぁ、可哀想に。

 殆ど八つ当たりに近い、いやとばっちりか? 

 どっちでも同じか。

 

 魔物が横行するからと人の通行に支障をきたすって事で、魔物退治を選んだオレ等。街の外を周回するようにされては確かに迷惑だ。

 確かランクは……Bだったかな? よく見てないが多分、そんな感じだった気がする。受付の人も戸惑っていたし、




「あの、魔物退治をするのに……貴方達のランクは……」




 凄い不安そうに見てた。オレ等は、まだDの最低ラインの状態だ。

 が。ナークと弟君はやる気だし、姫さんはオレが傍に居ていつでも離脱出来るように念話で決めた。




「試しですよ。オレ等だって命は惜しい。実際、ここの魔物の強さを確認したいし……姿見たら、逃げますから」




 それを聞いてたローレックは、笑いを堪えるようにクツクツ笑ってるしな。……なんだ、オレは嘘をつかないとて思ったのか。




「……分かりました。今回は特別ですよ」




 ローレックの視線でやれって言われたんだろう。渋々と言った感じで依頼書を渡してきた。


 まっ、予想してたけどな……。


 簡単に退治を完了し終えた2人に、俺の顔は引き攣る。首と尻尾を斬り落とされ、息を引き取るオオトカゲ。

 魔物の退治には、その証拠として皮膚の一部とか尻尾でも良いから一部持って来ないといけない。持って行けば武器屋とか、加工を行う所で高く売れるんだと。


 意外に魔物の皮膚って金になるんだなぁ。


 姫さんは気持ち悪がらないから、平気なのかと聞いたら「飼い猫を埋葬した事があるし、父様も狩りをしているのも見た事があるからね」と答えてきた。




「魔物でも生き物に変わりはないからね。それに、カルラと融合した時にもっと酷いのも見たことあるし」

「………わりぃ」




 そう言って思い出す。姫さんは明るくなったと思うが、それでも自分の誕生日というイベントの中で両親が焼かれるのを見たのだ。魔物が死ぬのだけで気持ち悪がることはないのだ。


 ……とは言え、それに慣れすぎるのはマズいだろう。




「辛いなら言えよ。いくらでも胸を貸すからさ」

「ありがとうございます、リベリーさん」




 うん、やっぱ姫さんは笑顔が似合うな。

 ついナデナデしていたら、2人の顔が凄く怖くて……え、なに、何でそんなに殺気を向けて来るんだ。




「リベリーなんか無視して良いよ」

「そうだね」




 そんな所だけ一致すんなよ、こえーよ!!!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーとある人物視点ー



 ローレックの屋敷は、ギルドから少し離れた場所にある。


 試しにギルドに行こうとするも、生憎と感知魔法が施されるから侵入するのを諦める。

 そうなると、所有する屋敷にあるか。とそう結論付けて、すぐに向かう。

 今晩の月夜は新月だから、余計な光も入らない絶好の機会だ。

 そう思い、思わずニヤリとなる。


 屋敷の周りを一応、確認し不自然な所がないかを確認する。

 あまりここには帰らないと言う事だったが、知らない物が多い様子。マスター以外に使うのは、急に泊まる所が無くなった新人の冒険者だ。一時的に宿泊施設としても機能しているから、中に人が居てもそう多くはないだろう。




「………」




 まずは2階だ。

 寝室が5部屋、奥に物置とされている部屋がある。確か1階には資料室があり、2階にもいくつか置いている。

 まずはそこを調べていくか。




「!!!」




 すぐに姿勢を低くする。

 ブン、と風を切る音が聞こえ次の一手が来る。即座に胸の部分をガードするも蹴り飛ばされるが、ダメージはそれなりに削れた。

 その勢いを利用して、すぐに態勢を立て直せば相手はすぐに懐に飛び込んでナイフを斬りつける。


 それを自身の武器とで、ぶつからせる。


 金属音がぶつかり合ったのだと言う事を知らせる。

 思わず舌打ちをした。こちらは音を立てないようにしたのに、相手はそれを分かってワザと音がなるように武器をずらしてきた。




「目的はなんだ」




 暗闇の中で気配を消しつつ逃亡しようとした。

 だが、すぐに目の前に来る気配を感じ、即座に姿勢を低くし小型の煙幕を叩きつける。




「っ!!!」




 毒を警戒したからか即座に離れるも、投げ付けられたナイフに反応が遅れて顔をかすめた。だが、逃亡までの時間は稼げた。


 屋敷を出て、数メートル程離れながら上手く行かなかった任務に思わず笑みが零れた。




「おもしれー。……同類か、ありゃあ」




 しかも。久方ぶりに自分の血を流した。

 つぅ、と頬から流れる血は少ない。ペロッと舐め、改めて屋敷の場所を確認した。




「こちらの動きに付いて来た事、毒と警戒して即座に離れた判断能力。………クックックッ。久々に面白い奴と殺し合いが出来そうだな」




 だったら準備した方が良いな。

 他にも出来る奴は居るようだし……用心してやり過ぎる事もない。


 闇夜に同化するように、俺は姿を消す。

 まずは紅い目の奴……お前からだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーレント視点ー



 翌日。

 カルラになっても、私を起こしに来る健気なウィルス。

 甘えた声でスリスリと寄ってくるからもう少しだけベット中で居たいと思う。まぁ、そんな事を許されないんだけど……。




「ミャウー、ウゥー」




 パクっと私の耳を軽く噛み下に降りようと表現をしてくる。それが可愛くて、抱き寄せて「もうちょっと、だけ。お願い」と言うと即座に猫パンチが飛んでくる。




ー寝坊はダメ。カルラ、もっとやって!!ー


「ニャニャ」

 



 飼い主との見事な連携プレーに参ったと降参をする。

 でも、ね……。ウィルス、戻ったら覚悟しといた方が良いからね?




「ニュッ!? ミャ、ミャウー!!」




 野生の勘だろう。カルラは即座に下がって、敵意を向けてくる。それに構う事なく、服を着替えようと抜けば慌てたように部屋から出て行かれた。




ーもう!! 今のワザとだね!!!ー




 ふふっ、何のかな?

 怒ったウィルスの声を聞き、手早く着替えて下へと降りる。昨日、妙な奴が居たようだし……対策を練る必要があるようだ。




「侵入者?」



 思わず声が低くなる。

 カルラがご飯に夢中になり、私の膝の上で寝るのを気分良く見ているとナークからそんな報告を聞いた。


 つい睨みたくなるのは仕方ないよね。




「うん。これ」

「布……?」

  



 彼から渡されたのは黄色の布のような切れ端。

 聞けば対峙した時、逃げる素振りを見せたからとナイフを投げ付けた時に掠めたもの。

 料理の下準備を終えたと思われるリベリーが、私達の会話に参加してくる。うつらうつらのカルラは、リベリーの方へと歩み寄り持ち上げられる。


 頭や肩に置き、肩に落ち着いたようにガクリと眠りに入る。今日はリベリーが良いのか。……朝、意地悪したから寄って来ないのか。




「下にも来たから、物置に閉じ込めたぞ」

「仲間?」

「どうかね。ローレックには、ギルドの依頼を取るついでに話してきた。昼にこっちに来るってさ。ってか、弟君が普通だ」

「当たり前でしょ。知ってる人しかいないのに、変える意味が分からない……」




 リベリーは私の銀髪と目を見て驚いてた。魔法で変えたって言っても持続するのに大変なんだよ、これは。私だって気を抜きたいのに、ダメだって言うのかな彼は……。




「わ、わりぃ。驚いてただけだ。……うん、気分変えたいもんな」




 アハハハ、と乾いた笑いをしたリベリーの目は笑っていない。顔もかなり引きつっている。誤魔化すために布を手に取りマジマジと観察した。

 「色付き、か」とブツブツと自分の世界へとそのまま入ってしまった。

 ナークに視線を向けどんな奴だったかを聞いてみた。




「昨日は月の光が無かったから、特徴が分かりづらい。ただ、暗闇だったけど布の色に見当付けて反撃はした。主と王子が居るから、近付かせる訳にはいかなかった」




 だから、自分とリベリーが使う寝室側で抑え込んでいた。

 そう報告するナークに、屋敷全ての出入口付近に侵入者を知らせる仕掛けを施そうと考える。せっかくだから、ナークにも手伝って貰うか。


 屋敷に侵入してくるのは盗賊、暗殺者位だからね。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ひでー目にあった」




 そうぼやくのは、昼に来ると言っていたローレック。私は笑顔で「気を付けます」と言いつつ、リベリーと共に物置に居るとされる捕らえた仲間の方へと向かった。




「もう1人はどうした。確か、ナークって奴」

「彼なら出掛けてるよ」




 今度はナークに甘えてきたから、私の所には来ないのだろう。……ちょっとショックを覚える。




「はぁ……」

「どうした」

「いえ。……ちょっと上手くいかないなと、そう思って」




 思わず出たため息。今は、髪も目も黒に変えた。ウィルスを追った際に瞬時に変えといて良かった。自分の容姿が目立つのは知っているからね。

 



「ふーん。コイツ等、か」




 手足をグルグル巻きにし口には丸めた布を咥えさせた状態の黒装束の男。それが3人程居てこちらを睨むようにして見ている。




「なあ、これ………分かるか?」




 リベリーが3人に見せたのはナークが言っていた黄色の布。ローレックは不思議そうな表情したが、一瞬だけ体が強張ったのを見逃さなかった。それはリベリーにも分かっているようで、チラッと私の方に視線を向けた後で再び布を見せびらかす。




「昨日、どっかのバカが自分の家なのかと思ったか知らないんだが……落としていきやがったんだ。でも、どっかで見たことあんなーって思っていた訳よ」




 意気揚々と話すけど、端々に殺気を滲ませている。睨みながら言っているから余計に怖く感じる。………ウィルスが居なくて良かった。




「これ、落葉のギルド。その代表的な色だろ」

「!!!」




 今度こそ、驚愕の表情でリベリーの事を見る。その表情は何でお前が知っていると言いたげなもの。続きが気になるけど、ナークから念話が入って来た。




《ごめん、王子。来れる?》

《どうしたの?》

《いちゃもん付けられたぁ………》




 これだと街を回れないと泣きそうな声を聞き、仕方ないとばかり出て行く。去り際にリベリーから「どうした?」と言われて素直に答える。




「ちょっと出るよ。遅くなるけど、君の好きにして良いから」

「おー、了解了解」




 ナークから呼ばれたのを感じ取り、さっさと送り出してくれる。ローレックが良いのかみたいな表情をしているけど、無視していく。


 さーて。ナークの魔力の反応からして、どうやら裏路地みたいだね。なにしたのかな、彼は……。やれやれと思いつつ、思わずニヤリとしてしまった。ウィルスと居る時もだけど、ナークも面白い位に色んなものに引っかかるね。


 

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