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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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第62話:過去の暗殺者

 ドルト族の10歳前後の子供の中で、身体能力もよく暗殺を仕込んでも平気だとみなされた子供はそんなに多くない。それらを鍛えるのは、ドルト族の中でも実力のある者が教育係として教えていた。


 リベリーに教えたのも、ナークに教えたのも同じ人物。

 ナークが成長するまでは、リベリーに教え込む厳しはあった。里の外で任務をこなす日々の中で彼はハーベルト国の領地と同じ砂漠の地である――南の領土。




「へへっ、お前……名は?」

「言う必要はない。……死ね」




 依頼はとある貴族の暗殺。

 だが、その屋敷の手前でリベリーは男と対峙していた。子供らしさはなく、暗殺の技術を身に付けるべく日々を過ごした。

 

 自分が生き残る為、里の為に動いた少年はローレックと名乗る男に勝てないままでいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




ーナーク視点ー




「──って事があったんだ。オレも傷を負ってたし、負け惜しみみたいに額に傷を残したけどさ……生きてるとは思っていたが、ギルドマスターしてるとはな」




 そう言ってため息を吐く。 

 向かい合わせで座る男をもう1度見る。額の傷は確かに大きいし、腰に下げた剣も立派な物だ。毎日手入れしているのが分かる。


 下をまとめる立場でも、有事の時とか休みの日には魔物狩りをするんだと。体が鈍らない程度、とは言うが鍛錬を重ねているのは分かる。


 ギルドマスター。

 

 世界各国の冒険者をまとめる存在にして、ギルド運営の責任者。最初にギルドを建てるには、国の許可を得る必要がある。運用を任されているから、国からの重要性の高いのも扱う。


 冒険者にならず者が多いと、前に聞いた事がある。

 態度が横柄な人の、ほんの一部だけ言われれば周りだってそう思われる。リベリーの口ぶりからすると、暗殺の邪魔をして来た事から要人警護に携わっていたんだろう。


 ボクもリベリーと同じなのを見抜かれたし。




「リベリー。ここからディーデット国に行きたいんだろ?」

「連絡済みだろ?」

「あぁ。だが、魔獣がちらほら出てきている。……やれるのか?」




 心配。と言うよりは、このメンバーで良いのかと安易に言われている。主がビクリと震えて、フードを強く握りしめた。

 ………殴ろう。




《止めろ!!! 姫さんの事で頭に来てるんだろうが、抑えろ!!!》




 すぐにリベリーの注意がはいる。

 ちっ。念話は本来、離れた者同士の会話を可能にした魔法だ。なんでこんな至近距離で言われないと──。




《お前、今、殴る気でいただろ?》

《……………分かる?》

《分かるわ、アホ》




 むっ、そんなに分かりやすかったかな。

 表情も、気配も出さずにいたのになぁ。




「事情は聞いている筈だろ? 意地悪な事を言うな」

「分かっている。……なに、お前さんの本気を計りたかっただけだ。咄嗟に主って呼んだからな。お嬢ちゃんを主にするだけの何かがあるとは思っていた。悪かったな」

「………じゃあ、殴らせて」

「だから止めろ!!!」




 リベリーのチョップを頭に喰らう。

 酷い……。こっちの事、試して来たんだから別に良いじゃん!!!




「まぁまぁ……抑えて抑えて」

「むーーーー」




 主に言われても怒った態度は変わらない。隣では王子はクスクスと笑っており「むしろ私的には殴っても良いんだけど……」と言う声には即座に反応した。




「だよね!!!」

「本当、リベリーに邪魔されなければ」

「レントもナーク君もダメ。ダ~メ!!!」




 必死でボク達を止める主。

 リベリーはまだローレックと話があるとかで、ボク達3人を無理矢理部屋から出て行かされた。今は、ギルドの1階のフロアで雑談中。主にリベリーの悪口だけど、主が何度も止めに入るから面白くて実行している。


 王子も気付いて一緒にやるから歯止めがないけどね♪



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その一方で……。



「連絡には聞いていたが、魔封じの枷………。ありゃあ、魔力が無い奴にはただの枷のようにしかならない。それがちゃんと機能しているって事は」

「あぁ。彼女は魔力を持っている」

「って、事はそれが4人も居るのか…………」

「は?」

「バーカ、隠すなよ。お前等、4人とも魔力を持ってるだろ?」




 瞬間。

 リベリーの姿が消え、ローレックの首元にナイフを突きつけていた。しかし、ローレックは動じずにいると……すぐにナイフを納めた。




「この部屋。魔力探知付きかよ……趣味わりぃな」

「これでもギルドマスターだからな。警戒していた、と言って欲しいね」




 途端に、ニカッと笑うローレックに脱力したリベリー。

 彼の話しによれば、魔法を使った暗殺も行われている事実。対策をしておくのは当たり前で、その過程でリベリー達の魔力を感知したから分かったのだと言う。




「にしても、魔力持ちが4人。………どっちかが、貴族であるにしろそうでないにしろ……今のディーデット国周辺は危険だ。帰る事をお勧めする」

「無理だな。彼女の枷を外すのにはその国に行かないといけない。そう聞いたんだ」

「………まぁ、確かに可能性としてはあるが……」

「無理に外す真似はしたくない。って言うかそんなことしたら、オレは普通に殺されるわ………」

「ふっ、なんだ。嫉妬深い奴が居るのか、あのお嬢さんに」




 探るような目で見て来るも、リベリーは何も答えず黙ったまま。

 しかし、彼はすぐに質問してきた。魔力持ちが多くて何か、問題があるのか?と。




「魔獣の存在を知っているか?」

「まあ、な……。夜に活動する、限定的な魔物って言う認識で良いか?」

「そうだ。魔物は日夜問わずだが、魔獣は夜限定だった」

「だった?」 

「まだ不確定だが、黒い体の何かが探すような素振りで食い散らかしてる」

「……。」

「しかも、曇り空や雨雲の時に出てきている。夜と言う闇じゃなくなっているんだよ」

「!!!」



 思わず息を飲んだ。そして、すぐに魔獣の特徴を再確認する。



 全身を黒くした異様な存在。

 日の光を嫌うのか、何故か夜にしか現れなかった。

 魔法が効くが、上級クラスの魔法で無ければ傷もつかない。

 唯一、効いたとされるのはウィルスが使ったとされる魔法。



 認識を改める必要があると、自然と表情も険しくなる。ローレックもそれを確認し「危険だろ?」と促してくる。




「他に魔法が発展した所はないだろ」

「確かにな。今、ディーデット国に入るにはギルドの者との同伴が必要になる。さっき通ったように、陣の上に乗るにはギルドの奴が特別に許可を得た人間でないと無理だな」




 リベリー達のようなのは特例だと聞く。理由は濁しているが、裏ギルドの事も聞かれたかなと思い思わず苦笑いをした。




「……ザーブナー以外で街はあるか?」

「あった、と言うべきだな。魔物か魔獣に潰された」

「………はぁ、マジかぁ」

「だったら、ギルドに入ったらどうだ?」  

「は?」



 思わずそんな声を出す。

 しかし、ローレックは至極当然と言わんばかりの表情で作業机からいくつか書類を持って来る。   




「え、あ、おい……?」

「訳ありでギルドの者を使えないなら、自分達がなれば良いだろう。なーに、お前の実力は分かっている。なんなら、俺が管理してる屋敷を自由に使え。人を近付かせてたくないなら、誰も寄らせないから安心しろ」

「ばっ……違う!!!」



 よく分からないが、ここに滞在しろと言われているのが分かり慌てる。自分1人じゃ決められない事を、普通に押し付けてきたので怒りはある。



「勝手に話を進めてんじゃねぇーーー!!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ーレント視点ー



「で? なんやかんやらで、登録させられたの?」

「………」

「リベリー?」




 3人で大人しく下で待っていたら、微妙な表情をしたリベリー。宿でも決めたのかと思っているとついて行ったら、着いた先は王都で見る宿ではなく……屋敷だ。


 泊めて頂いた所と似て奥行きが広い。あそこと比べると少し小さい位だ。ずっと睨んでいたら、分かりやすい位に冷や汗をかく様子。

 ウィルスとナークが「探検しよう♪」と言って、中の把握しに仲良く行くのを見送った後で、適当な部屋に入り彼に聞く。


 扉を閉めた途端に、素早く正座で青い顔のリベリー。

 見ただけでダメなのは分かる。でも、一応は聞かないとね。……厄介な事でない事を祈るばかり。


 


「あんの野郎。都合良くオレ達を使いやがって……」



 全て白状し終えてたら、イライラし始めた。

 今更、断れないし屋敷に入った時点で()()とみなされるのだろうし。




「……他にも事情があるとみて良いね」

「ホント……すみません、でした!!!」

「あれ、なんで謝るのかな? 私はなーんにも、言ってないよ?」

「……その、目だけでお前が悪いって、言われてるみたいだし。バーナンも怒ると目だけで威圧してくるし……雰囲気、怖い」




 ふーん。兄様と居るだけあってよく知っているね。


 冗談は置いといて……。

 ディーデット国の周辺に、魔獣に似たものがいる。しかも、魔力持ちを狙っていると言う情報。


 無視は出来ない。と、言うより警戒しといて良いか。

 思案している内に戻って来たウィルスとナーク。2人して不思議そうな顔をしている。

 事情を話せば、ナークはすぐにリベリーを蹴り倒す。ギルドの者として登録されるのは嫌なのだろうな、と思っておく。




「えっと、暮らすの……?」

「似たようなものだよ。ギルドのを使うには、依頼を出すか自分達がギルドの人間として使うかの2択。まぁ、それを使うにもランクが必要なんでしょ?」

「最低、でも……Bランク、だそうです……」



 ウィルスに細かく話す。

 依頼として出す場合、報酬がいる。自分達4人分とギルドの腕利きの人数分、送る分と考えると今あるお金では足りない。転送魔法もすぐには使えずに、回数が決まっている。




「今は、商人達を優先にしているから外部から……私達みたいな者が使えるとして、あと1週間はここに居ないとダメなんだって」

「その間の、宿泊と食事代を考えると………」

「報酬として出す時には微々たる物だし、最低でもBランクの冒険者を護衛として考えると……割りに合わないのだと思う」

「だったら、自分達で削減してBランクに上がって置けばまだ安心って事?」




 ナークの答えに頷く。

 最悪、ウィルスがカルラになっていても自分達であれば上手く誤魔化させる。ここの宿代を聞いてみると……「ギルドの登録でチャラだ」と言ったんだと。




「………何、隠してんのかな。あの人……」




 ナークの言葉に同意はする。しかし、ここを貸す条件がそれならむしろ安い位だ。もし、猫になっても怪しまれないし、宿屋の場合3日おきに彼女が居たり居なかったりしたら怪しまれる。




「………」

 



 私の話を聞いたウィルスはずっと考え込むように、唸っている。やっぱり環境が変わるからだろうか? と思っていると、




「ちょっとだけ、ワクワクしたかも……」




 と、笑顔で肯定された。心配無用のようで助かる。すると、勢いよく立ち上がり「お風呂、用意しまーす!!」と出て行く。ナークもそれに慌てて付いていく。

 ……なんか、和むね。




「じゃあ、オレは……」

「リベリーはローレックと言う人を見張ってて。買い出しとか必要な物は3人で行くから」 

「……了解だ、弟君」




 一瞬、青ざめたような気もするけどスルーしとく。

 

 ギルド登録に、冒険者……ね。 

 情報を集めながら、しばらく滞在するとしますか。

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