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第三話 彼女にとってはお楽しみ

「出口って言ってたからここだよね」

「おう、お前も今来たのか」

「ギ、じゃなかった、アダム」

「ああ。 で、あいつらはあそこだな」

「あれ、待たせちゃったかな」

「時間ぴったりだし大丈夫だろ」


そんなわけで、全員揃って顔合わせ。


「おう、来たな」

「こんばんはー、かな?」

「おう、こんばんは」

「こんばんは」


見た目はみんなそこまで弄ってないみたい。 髪と目の色が違うくらいで他はいつものみんなだ。


「さて、パーティーメンバー待たせてるから、手短に頼むぞ。 俺のプレイヤーネームはアダム。 いつも通り壁型で育成する予定だ。 ギルドは前から世話になってるフレのとこにもう入ったんで、四人で狩る時間はあまり作れないかもしれんがよろしく頼む」

「私はキナコにしたよー、誰も本名だと思わないだろうからね。 育成は後衛魔法型にするよ。 ギルドは未所属だけど、別フレといることが多くなるかな」

「俺はエデン、前からのフレにはエディって呼ばれることもある。 前衛でバランス型に育てる方針だ。 ギルド未所属、いろんなフレの所転々としてると思うけど呼んでくれれば融通は利くぞ」

「私はシー。 前衛火力特化型育成で、ギルドは未所属。 しばらく一人で色々試そうかなって思ってるから、呼ばれたらすぐ行くよ」


と、ゲーム内での方針を報告したあと、フレンド登録を全員と済ませて、さて解散、というときに、


「ん? メール……運営から?」


エデンがメールに気づいた。 内容は


「えー、ゲーム内時間13:15より、大規模キャンペーンのお知らせを行います。 プレイ中の皆さまは拠点街『パーチュア』中央広場においでください。 ……だとさ」

「ゲーム内時間13:15って、今じゃん!」

「俺はパーティーに連絡するから先に行っててくれ」

「「「了解」」」


今はゲーム内時間で13:12。 現実では19:12だから、アクティブが増えてくる時間帯になるのかな。 でも、初日からプレイヤーを集めて告知するほどのキャンペーンって何だろう?


◇ ◇ ◇


『ようこそおいでくださいました』


中空に黒い人影が浮いている。 これ、ラノベとかのテンプレだとログアウトボダンが消えてたりするんだけど、メニューを開けばちゃんとログアウトボタンがある。 周りを見ると、勢い余って本当にログアウトしてしまった人もいる。


『大丈夫ですよ。 そんなテンプレのような事件は起こりません。 そんなことをすれば、開発費が回収できませんからねえ。 ああいうのは良くも悪くも夢物語ですよ』


黒い影は続ける。


『ただ、折角期待されたゲームですから、何か面白いことをしたいと思いましてね? かと言って、死んだらアカウントが消えるとかやってしまうと金返せ案件です。 プレイヤーさんに直接的な迷惑をかけないで、でも緊張感をもって遊んでいただくにはどうすればいいか、私は考えました』


こうやって不気味な影を使うのも演出の一環みたいだけど、ここまで盛り上げて、普通にキャンペーンするだけ、というのも変な話だ。 一体何が始まるんだろう?


『ズバリ半年、6か月です。 貴方がたが期間内にこのゲームをクリアできなかった場合、このゲームはサービスを終了します。 クリア後に遊べるはずだったコンテンツ群ももちろん封印します』


会場がざわつく。 それなりの額でこのゲームを買ったからには遊びつくさないといけない、それがゲーマーとしての務めだから。 期間内にゲームをクリアしなければ、遊びつくすことが許されないなら、少なくともクリアまで本気で遊ばないといけない。


「ふふっ」

「おお? どした?」

「大丈夫、シーはそういう子だから」

「そうなのか?」

「何でお前がそれを言うのか」

「あら嫉妬?」

「ちげえよ」


外野がうるさい。 それはそうと面白いキャンペーンだ。 予約のあの競争率、発売日に買う人間の大半は本気で遊べる人だってわかってこんな企画を打ってくるなんて。 同接稼ぎだとしてもここまで思い切れる運営は他にないと思う。


『ちなみに、ウチで雇ったデバッカーの最速クリアは、9か月でした。 半年はかなり厳しい戦いになると思いますけど、これだけ人数がいるんですからできますよねえ? 貴方がたいつも言ってるでしょう? 『ゲームは遊びじゃないんだ』って』

「そこまで言われちゃ黙ってられねえな」

「そうね。 どんな長いゲームなのか知らないけど、やってやろうじゃない」

「おいおいこんな安い挑発に……、やるっきゃねえか」

「まあ楽しそうだしいいんでない?」


わざと聞こえるように言っている辺り、サクラなのかヒーロー気取りなのか知らないけど、誰かのそんな会話を中心に広場が盛り上がり始めた。


『フフフ、やる気を出していただけましたようで何よりです。 それでは、改めて、クロス・メビウス・オンラインを存分に楽しんでくださいませ』


そう言い残して影は消えた。


「面白そうなキャンペーンだな。 同接稼ぎだと分かってても乗らずにはいられない」

「だね」

「え、こいつらなんで今の聞いて意気投合できんの」

「シーはそういう子だから」

「お前は少し話を聞け」


「さて、恥ずかしいことにさっきの挑発に乗ってたのがギルメンなんだわ。 多分招集かかると思うから俺はこの辺で」

「私はどうしようかなあ? フレのみんなは一回落ちるって言ってるけど」

「俺はまだインしたばっかりだからな、しばらくフレと遊んでるぜ」

「私は街の設備をもう一回回ってからまた狩りかな。 キナコも来る?」

「じゃあ行くー」


もう一回って言ったけど、実は全く見てなかったことは内緒。


◇ ◇ ◇


魔石商人の所やら、道場やら、スキル関係の施設を回ってきた私の剣技、魔法リストがこちら


△ △ △

片手剣技

・踏み込み斬りLv.1(前方に移動しながらの一撃。 使用後一定時間防御力ダウン)

・トリプルラインLv.1(剣の軌道の両側に斬撃を生み出す。 使用時MP消費)


魔法

・光線Lv.1(光属性攻撃。 直線上の敵に非貫通ダメージ)

・鋭刃Lv.1(金属性補助。 指定武器の切れ味を一定時間上昇させる)

▽ ▽ ▽


二刀流剣技は結局まだ二刀流を使えてないので候補がなかったから、行動に影響が出なくて使いやすそうな片手剣技と、チュートで狙いやすかった光属性の魔法、それに武器強化の魔法だけど……、金属性?


「ねえキナコ、金属性ってなに?」

「このゲームの魔法は五行陰陽をモデルにしてるみたいだねえ」

「えっと、木火土金水、と陰陽ってこと?」

「そういうこと」


魔法なら、某ゲームの氷炎雷とか、西洋的な火水土風の方が主流だと思うんだけど……。 どんな魔法か事前に予想されにくいようにするためなのかな。


「それじゃ行こっか」

「行くのはいいけどどこで狩るの?」

「え? 西」

「さも当たり前のように言わないでよ。 チュートで知ってると思うけど、魔法の威力ってまだ大したことないんだよ?」

「私がどうにかするから色々使ってみて使い心地を教えて?」

「そんなあ」


◇ ◇ ◇


「火弾!」

「光線」

「蔦縛り!」

「ありがと」


敵は四体。 一匹目を私が踏み込み斬りで倒すのと同時にキナコが二匹目に炎弾、振り返った私が光線で止めを刺して、二匹まとめて縛ってくれたところにトリプルライン。 撃破。 ちなみに鋭刃は切らさないように定期的にかけてる。 今は剣技あってもなくても倒せてるから、先制の踏み込みと、今みたいに複数相手のトリプルを時々使うくらいで、器用人のスキル補正をできるだけ受けるようにしてる。


「やっぱり火力でないなあ」

「魔法のレベルは上がってるの?」

「まだ。 これかなり上がりにくいのかも」

「確かに剣技のレベルも上がってないし、この辺は仕様かな」

「だねー。 ところでさ」

「何?」

「なんで盾使ってないの?」

「あ」


軽く剣技の調子を見たら二刀流に切り替える予定だったのに忘れてた。


「実はね……」


説明しつつもう一本剣を装備する。


「嘘、じゃあ今までギフトなしであんな戦いしてたの?」

「うん」

「すっごいわ。 てっきり軽業でも貰ったのかと思ってた」

「慣性が緩くなると威力と体捌きが心配だったから」

「シーらしい理由だね」

「で、二刀流も慣らさないといけないから、もう少し付き合ってもらっていい?」

「いいよー」


と、ちょうどいいところでまた敵だ。


「来たよ。 こっち」

「VRなのに気配まで分かるなんてなんのチートかと思うわホント」


さて、剣技はないから迎撃……、あれ?


「ねえキナコ」

「どしたの?」

「二刀流でも片手剣技使えるみたい」

「マジ?」

「ただ、『非適正剣技補正により威力が減少しデメリットが増大』するって」

「だめじゃん」

「いや、踏み込み斬りみたいに単純に急接近したいだけなら普通に使えるってことだよ」

「そのりくつはおかしいんだよなぁ」

「さて、これの検証も含めてさっさと倒しちゃうよ」

「はいはい」


◇ ◇ ◇


「よし、大分慣れたかな」

「やっぱシーはすごい。 こんなにレベルが上がるとは……」

「今いくつ?」

「ついてくる前が5で、今は11だね」

「私は集合前で8、今は12」

「振り方は?」

「筋力敏捷魔力の三極」

「なるん。 私は魔力と精神を2:1で、残りを他に順番に振ってるよ」

「どう振るのが正解なんだろうね」

「さあ? 今後検証してくれる人が出るでしょ」

「振りなおしができるかどうかも気になるところだけど、ないか」

「ないよ普通」


疲れてきたし、今日はこの辺で解散にしよう。


△ △ △

プレイヤーネーム:シー

レベル:12

HP:236/236

MP:24/91

体力:10

筋力:18

敏捷:18

精神:10

魔力:18


スキル

・ギフト:見切の双剣士

・器用人Lv.1

・形勢逆転【攻】Lv.1

▽ ▽ ▽


△ △ △

プレイヤーネーム:キナコ

レベル:11

HP:242/242

MP:13/102

体力:12

筋力:11

敏捷:11

精神:16

魔力:22

▽ ▽ ▽


ステータスを並べてみると、他人のスキルは覗けないようになってるのがわかった。 それもそうか。 見られたら戦術がモロバレだもんね。


体力振ってないのは私だから自業自得だけど、HPで負けてるのなんか納得いかない……。

ここからようやく本番めいてきましたが、彼女らの日常にはさしたる変化はありません

そういうコンセプトです

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