Episode00 "始まり”
神々と人とが共存していた時代
神々は人に知識を与える
人類の文明の発達により人が栄える反面
人類は数を増やしすぎた
人類増加による餓死者の増加
盗み、陵辱、戦争が絶えない世界
それを見かねた神々はヘラクレスに
人類の半数の粛清を最後の試練に命じた
まずヘラクレスは西王の首を潰し
国家を纏め上げ東王の領地へと進軍を開始した
東国の6割がヘラクレスの軍勢の手に落ち
東の国民の誰もが希望を捨て死の運命を覚悟した
東王自らも己の無力さに打ち拉がれながらも
”王”と言う責務を果たすため西軍の侵攻に抗い続けるが
努力報われず東国最後の砦である東都に進軍を許してしまう
民たちは瞬く間に切り伏せられ
東王の城に西の兵たちがなだれ込む
東王の親衛隊が自国の王を守る為
一丸となって敵兵の討伐を行うが
兵力の差に親衛隊は為すすべもなく壊滅し
王ノ間への侵入を許してしまう
王自らも自分の死期を覚悟し自らの手に剣を取り
敵兵を一人でも多く道連れにするべく足を踏み出そうとするが
ガシャーーン!!
ステンドガラスが割れ東王と西兵たちの間に巨大な槍が刺さる。王ノ間は静寂に包まれ東王は額に汗をかいた。
「遅れてしまいましたか?」
男の声が割れたステンドグラスの方から聞こえる。東王は声の方向へと顔向けると夕日により美しい金髪に赤みがかり神秘的に見える青年騎士がそこにはいた。王ノ間にいるすべての人が彼の彫刻のような美しさに見惚れて立ち尽くしている最中、
「構いませんよ」
青年騎士は笑顔をこちらに向け二言目を発っした。
「命令をするな」
青年騎士の発言に落ち着いた声で返事を返す声。王ノ間にいる西兵たちと東王は驚き、首を声のする正面へと戻すと巨大な槍の柄の先端に立つ全身を鎧で装備した騎士が立っていた。
「貴様ら何者だ!!」
隊長格の風貌をした西兵が謎多き騎士たちへ質問を投げる。そして兵たちは自らの武器を強く握り締め戦闘態勢をとり、より警戒を高めるが、
「答...ろ.」
ジュッシュと音が鳴り、隊長格の胸元に巨大な槍が刺さり壁まで飛ばされる。そしてその最中に鎧騎士が口を開き、
「弾けろ」
冷たく言葉を紡いだと同時に隊長格の男の上半身が消し飛び槍だけが壁に刺さった。鎧騎士は転移魔法を使い刺さった槍の元へ転移し続けて呪文の詠唱を呟く。
「よくも”団長”を!!」
「...殺す!」
「許さんぞ、貴様だけは!」
西軍の兵たちは怒りに任せ鎧騎士に斬りかかる。人数にして30を越える兵。勝ち目のない戦いに見えたが、ブシャ、ブシャ、ブシャっと西軍の兵たちは胸に大きな穴を開け同時に地面に伏せた。
「一体何が!?」
東王はありえない現実を目にし床に膝を付ける。
「城内の敵兵は既に排除しました。心配なさらずとも、もうじき我らの仲間が来ますよ、東王。」
「排除.....仲間?」
いつの間にやら東王の横に立つ青年騎士が笑顔を向けながら話しをしてきた。
「我々の他に5名ほどいますね。今は外の軍勢の殲滅をしてもらっていますが。」
状況が呑み込めていない東王は数秒間口を開け唖然とした顔で青年騎士に向ける。
「ち、違う!私が聞きたいのはそういうことではない!き、貴様たちは何者なのだ!目的はなんだ!ご、5名の兵士で数万の軍勢を相手どる?馬鹿莫迦しいにもほどがあるではないか!」
東王は声を荒げ青年騎士の胸ぐらを掴み質問を浴びせた
「我々は貴国と同盟を結びに来た。」
青年騎士は笑顔を崩さず東王へ進言する。
「同盟..だと?馬鹿にするのも大概にしろ、東国は今まさに陥落しかけているのは貴様たちの目から見てもわかろうが!」
東王はフンと鼻を鳴らし青年騎士に強くあたる。
「いいえ、東国は陥落などしませんよ。そうだ試しに外をご覧になられてはどうでしょうか?」
何かを思い付いたように青年騎士は東王に提案する。青年騎士はほらほらと東王の背中を押した。東王は王ノ間を出てテラスへと向かう途中、複数の西軍兵士の死体が地面に伏しているの目撃した。
(どうなっておる、城には確かに西の大軍が侵入したのを私は確認して...何だこれは!?)
テラスから外城を確認した東王はあまりの衝撃に言葉を無くす。そこには大軍も美しい町の面影もないのだ。あるのは痛々しいほどの焼け野原、そしていたるところにクレーターができていた。
「お分かりいただけましたか、東王?貴方には我々にしか未来が残されていないのです。」
青年騎士の笑顔が不気味に映る。東王は自分が人間ではない何かと話をしているのではないかという錯覚に落ちいる。東都のほとんどの建築物が壊され、住民、兵士の大半が殺された現実。そして最後に己の命が摘まれ終結するはずだった戦争。
「......」
しかし摘まれる筈の命はこうして続いている。
「もう一度聞く、貴様らは何者なのだ。」
「特別名称があるわけではないのですが、そうですねえ“虚の英雄”とでも名乗りましょうか。」
青年騎士は人懐っこい笑顔で東王に名乗りをあげ手を差し出した。
「我らと共に人類の力を、知恵を、勇気を世界に届けようではありませんか!」
東王は自身の掌を見つめ守れなかった民や家族の最期の言葉を思い出す。
ーー陛下は.....私のこ.....気になさら...自身の道を進めば.....いい....の..で
ーー陛下の創る未来を.....私は共に
ーーごめん....なさい、父上....僕は母上を死なせて.....僕が弱いばかりに.....ああ、僕は何とも弱くて...未熟で....駄目な....むす...
東王は涙を流し拳が血が出るほど強く握り締める。そして夕陽に染まる紅い空を眺め復讐の誓いを心に誓った。
_悪魔と契約しようとも必ず
そして、静かに差し出された手を握り締めてこう言う。
「届けよう、この苦しみ....痛みを...西兵に、ヘラクレス共に!!!」
青年騎士は待ってましたと言わんばかりに声を大きくして宣言をした。
「開幕しましょうか皆さん、我ら“神殺しの英雄谭”を!」
Chaos:Demerit ~不屈の英雄へ~ episode "0"