3.旦那様
うちの新妻=「ゆりこ」はかわいい。
誰がなんと言おうとかわいいのだ。
そりゃあ、もう俺好みに育てたんだ。
色気ムンムンなのに可愛いってどんだけ、魔性?!って感じ。
そんな俺には前世の記憶がある、ちょっと売れた恋愛小説の登場人物を使って作られた「エロゲー」
恋愛小説で主人公の恋人役=「ゆうじ」に世の中のオトコ共が「極上の据え膳食わないなんて、バカじゃん?」という感想が多く寄せられて、こういうことかよ?!ってメーカーがブチギレテ作ったそうだ。
主人公「ゆうじ」が、会社でメインヒロイン「さくら」、ライバル的ポスト「ゆりこ」を攻略。
エロゲーなんで落としたらエロありだ。
小説の「ゆうじ」は「さくら」一筋で、超いいオンナの「ゆりこ」に見向きもしない。
だが、ゲームでは気に入ったオンナを攻略できるし、ハーレムだってありだ。
俺はこのゲームで「ゆりこ」だけを攻略した。
メインヒロインの「さくら」には何の魅力も感じなかった。
でも、何か違うって思ってた。「ゆりこ」は新婚の旦那に浮気されて、そのショックにつけこむ形で攻略される。それって違うと思う。
結局「ゆりこ」が愛しているのは旦那なのだ。
さて、そんな俺に運命の神は微笑んだ!
転生したらその「ゆりこ」の彼氏だったのだ。
大学でひとつ後輩の「ゆりこ」。
キレイでエロイ顔をしているのに、性格は素直でかわいい。
何をするにも一生懸命で頼まれるとイヤとはいえない。
それはもう、
即効で口説き落とした。
そして、交際中から彼女を「かわいく」していったのだ。
イロイロなことをやってあげて俺を頼ることを教え込む。
買い物にいけば「かわいい服」「かわいい小物」を買い与えて
「かわいいなあ、こんなかわいいゆりこが俺の彼女だなんて幸せだ。かわいいゆりこが大好きだ」
とかわいいを連発。
色気のもれるような服装や化粧はさせない。
就職にあたり、ゆりこは総合職を希望していたが、
「そうすると、残業なんかもあるだろう?会えない時間ができちゃうのはイヤだなあ。」
とつぶやいたら、一般事務職を選んでくれた。
そしてプロポーズ。
結婚したら専業主婦にって思ったけど、そこは何かが働いたらしく、うまくいかなかった。
そして、運命の「ゆうじ」の入社。
「なんか、チャラくて頭悪そうなんだよね・・・」
と感想を述べる妻の様子に、ニヤリ。
小説ではどちらかというと硬派だった「ゆうじ」はゲームではチャラ男だった。
まあ、小説の「ゆうじ」ではハーレムはできなそうだもんな。
「さくら」が入社して、妻の様子がおかしくなった。
どうやら、妻にも恋愛小説の記憶があるようだ。
俺の浮気を疑う発言に、最初はかわいいヤキモチと流していたが、あまりにしつこく気にするので、ちょっとキレてしまった。
二人目の「ゆうじ」が登場してそちらは小説の「ゆうじ」そのものなようだ。
自分がその「ゆうじ」を好きになるとは思えないが、もし、小説のように俺に浮気されたら・・・と、
涙ぐむかわいい姿にくらくらする。
小説でもエロゲーでも「ゆりこ」は色気ムンムンで高飛車なオンナだった。
俺の「ゆりこ」は違う。
そうならないように育てたから。
そして、俺は絶対に、浮気はしない。