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管理官と問題児  作者: 二ノ宮芝桜
第一章
30/83

1-30 嫌がられずにお話をして貰えるんだ

 本局に帰り、先にバンクシアさんに報告をしてから仕事に戻ろうと、彼を探して話し掛けた。

 バンクシアさんは「そうか」「わかった」以外の言葉は無いのか、というように、おおよそ全ての相槌をそれで済ませている。

「おっと、お二人お揃いで」

 そんな中、唐突に声を掛けて来たのは、リリウムさんだった。お得意の目は笑っていないスマイルで、「続けて」と、何故かそのまま俺の報告を聞こうとした。

 どうしたものか、と、バンクシアさんに視線を向けると、珍しい事に、忌々しそうな表情を一瞬だけ浮かべ「続けろ」と口にする。バンクシアさんがいいのなら、まぁ、いいか。

 俺は報告を続けた。

「これ、調書?」

 途中でバンクシアさんに書類の一部を渡そうとすると、リリウムさんはその内の一枚を横から掻っ攫う。困った人だ。

「はい。何でも屋アルベルトというお店に頼んでいたのですが」

「あぁ、知ってる。フーさんとベル君のお店でしょ?」

「はい」

 知っているのなら話は早い。

「お願いしていて、かなり終わっていたのですが、襲撃事件の事を聞きに行ったついでに済ませてきました」

「管理官を嫌っている精術師、だっけ」

「と、いう話だった筈ですが、それほど問題は無く」

「ふぅん。嫌がられずにお話をして貰えるんだ」

 掻っ攫った書類を俺の手元に返しながら、リリウムさんはどうも誤解した口振りでニタっと笑う。別に俺が信用されたんじゃなくて、ベルさん達の努力のたまものだと思うんだが。

「あー! やっと見つけましたよ、リリウムさん!」

 第三者の声。この声は、と振り向けば、予想通りウィリアムさんが頬を膨らませて走ってきた。

「おっと、見つかった」

「ブラン様がお呼びです。帰りますよ!」

「はいはい」

 今日も今日とて使いっぱしりらしい。非常に仕事が立て込んでいるのは、向こうも同じだ。

 この状況でその辺をほっつき歩いているリリウムさんは何なのか。俺は表情には出ないが内心で呆れている。きっとバンクシアさんもそうだろう。

 二人を見送った後、報告の続きをし、俺も俺の仕事の為に戻ったのだった。


 夜にナチの様子を見に行くと、大分よくなっていた。これなら、もう少しで復帰出来るだろう。

 俺が安堵の息を吐きだしたのを見て、ナチは「良くなって嬉しいですか?」と、また口元をもにょもにょと動かした。むしろ彼が嬉しいらしい。

 この分だと、日常に戻れるのはそう遠い未来の事ではなさそうだ。

 失った物は、人は戻らないけれども。それでも、その上に成り立つ日常に、俺は早く会いたい。


   ***


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