第五十八話:覚醒の神戸ビーフ! マッチョな龍の歌と、禁断の三段階変身!
――夜景が宝石のように煌めく、兵庫県・神戸港。
潮風に揺れるポートタワーの麓で、カオス・パーティーの一行は、その美しさに息を呑んでいた。
「オー、マーベラス! まるでパリの街並みのようですわ!」
あ、カトリーヌはいなかった。代わりに、チェックの衣装を揺らす前田○子が、カメラ目線で微笑む。
「神戸の夜景、最高だね! 私の卒業公演の時のサイリウムの海を思い出しちゃう!」
前田○子が、何事もなかったかのようにセンターのオーラを振りまく。
「……キュルル。相変わらず、名前の『○』を突っ込むのはタブーっすよ。偉い背広の人たちから内容証明が届いたら、この小説は一瞬で削除されるっすから。大人の世界のルールは、プロレスの反則カウントより厳しいんっす」
カピバラ・タナカが、短い前足で鼻をヒクヒクさせながら、読者に向けたメタ発言を放つ。
◆◆◆
一行が訪れたのは、メリケンパークに店を構える最高級ステーキハウス『牛魂・オリエンタル』。
「いらっしゃい! うちの神戸牛を食べたら、他の肉は紙クズに見えるけぇ!」
タキシードを着た看板娘、兵庫みなとが、見事なサシの入った『神戸牛』の塊を提示した。
「キュルルッ! 霜降りの芸術品っす! タナカ特製・黄金の岩塩と、最高級黒トリュフを練り込んだワサビで、肉の脂を極限まで甘みに変えるっすよ!」
タナカが短い手足で鉄板を操り、神速のミディアムレアを焼き上げる。
芳醇な香りのステーキを一口食べた宗次郎の全身から、かつてないほど激しい黄金のオーラが立ち昇る!
「……ッ!! この融点の低い脂が、私の胃壁を優しくコーティングし、エネルギーの濁流となって全身を駆け巡る! 肛門の傷さえも、神戸の潮風のように涼やかに癒えていく……!」
しかし、その至福の瞬間、空が真っ赤に染まった。
「……フン、相変わらず呑気に飯を食っているようだな。下級戦士ども」
空から降ってきたのは、以前よりもさらに禍々しく、深紅に磨き上げられた甲冑を纏ったエリート武将。
井伊直政が、復讐の炎を瞳に宿して再降臨した!
その肩には、なぜか巨大な『レトロなラジカセ』が担がれている。
「黙れ。この俺様が、地味な関節技に二度も屈すると思うなよ。エリートの知能を舐めるな……!」
【神戸の利権独占支店長!キャラクター詳細設定】
◆ 池田いけだ 輝政てるまさ
キャラ: 『豊臣メガバンク神戸支店長 / 姫路の白すぎ貴族バンカー』風。
「美しいもの以外は認めない」という潔癖症の男。常に真っ白なタキシードを着ている。「神戸の夜景は、すべてメガバンクの広告看板にするザマス!」と豪語する。
愛機(武器): 『絡繰・ホワイト・ヘブン・プレス』。巨大な白い大理石の塊を、空から無数に落として敵を押し潰す。
口癖: 「汚い肉だザマス!」「私の白さにひれ伏すザマス!」「美しくない死を!」
輝政の指示で、空から巨大な大理石が降り注ぐ!
「宗次郎さん! 危ないっす!」
宗次郎が立ち上がる。
「……直政。決着をつけましょう。黄金・大竜巻旋回ッ!!」
宗次郎が、直政の脚を掴みにかかる。前回の必勝パターンだ。
しかし――!
「待っていたぞ、その技を! 今だ輝政、再生ボタンを押せェッ!!」
「イエッサー、ザマス!!」
輝政がラジカセのボタンを押した瞬間。
神戸港に、**歴史的トリプルミリオンセラー(という設定の)伝説の迷曲『マッチョ・ドラゴン』**が、爆音で鳴り響いた!!
『♪イナズマがぁ〜、ヤァミをさぁいてぇ〜……』
「な、なんだこの歌はァァァッ!?」
宗次郎の動きが、完全に停止した。
あまりにも独特すぎる音程、リズム感を完全に破壊する脱力系の歌声。ドラゴンスクリューを生み出した伝説のレスラー自身の歌声が、技を掛ける宗次郎の三半規管とプロレス・リズムを無惨に狂わせたのだ!
「がはっ……! 力が、抜ける……! 音程が、私の黄金のオーラと不協和音を……!」
「フハハハッ! この数日、俺様は防音室でこの『マッチョ・ドラゴン』を三日三晩聴き続け、脳内をマッチョな龍と同化させてきたのだ! 貴様のドラゴンスクリューなど、この曲の前では無力ゥゥ!!」
直政が、掴まれた脚を強引に引き抜き、逆に宗次郎を蹴り飛ばした!
「な、なにっ!? 私のドラゴンスクリューが……破られた!?」
地面に叩きつけられる宗次郎。
絶体絶命。直政の紅蓮の闘気と、スピーカーから流れる『♪マ〜ッチョ・ドラゴォォン〜』の歌声が、宗次郎を飲み込もうとする。
その時、前田○子がカメラの前に飛び出した!
「タナカのことは嫌いでも、私のことは嫌いにならないでくださいッ!!」
その言葉が、タナカの、そして宗次郎の魂に火をつけた!
「……まだ、終われません。神戸牛のエネルギーが……私の限界を、さらなる先へ押し上げるッ!!」
宗次郎の全身の黄金オーラが、一気に青白い閃光へと変わる。
「うおおおおおおおおおおっ!! さらなる、先へェェェッ!!!」
バチバチバチッ!!
爆発的な光と、マッチョドラゴンの音源をも掻き消す轟音。
光が収まると、そこには異様な姿の宗次郎が立っていた。
黄金の髪は膝のあたりまで急激に伸び、なぜか眉毛が消失。眼光はさらに鋭くなり、圧倒的な威圧感を放っている。
(※どう見てもあの超有名な三段階目の変身だが、髪を伸ばして眉毛を消せばセーフだという、著者の強気な解釈である)。
「こ、これは……スーパー戦国人、参……!?」
クリノジが、そのあまりの「髪の毛の長さ」に震え上がる。
「……行きましょう、直政。マッチョな龍も、今の私のスピードには追いつけません」
直政が驚愕する暇もなく、宗次郎が地を這うような速度で接近!
「低空・黄金ドロップキックッ!!」
ドゴォォォォォォォンッ!!
直政の膝が、粉砕されんばかりの衝撃を受ける!
「ぐわあああッ!? 膝が……エリートの膝がァァッ!!」
苦悶に顔を歪め、膝を突く直政。そこへ、宗次郎が自らの膝を輝かせ、一直線に飛び込んだ!
「トドメです。閃光・黄金魔術ォォォォォォォッ!!」
ガッシャァァァァァァァンッ!!!
宗次郎の膝が、直政の顔面を完璧に捉えた。
紅蓮の闘気は霧散し、直政はラジカセを抱えたまま白目を剥いて吹き飛んだ。背後にあった輝政のメカ大理石も、その衝撃波だけで粉々に砕け散る。
「……これが、神戸牛の力です」
宗次郎は、膝まで届く長い髪をなびかせながら、静かに着地した。
「ヒィィッ! 美しくないザマス! 髪の毛が長すぎて掃除が大変そうザマス!」
輝政は、恐怖のあまりタキシードを真っ黒に汚して逃げ去っていった。
平和を取り戻した神戸の港。
宗次郎、カピバラのタナカ、クリノジ、前田○子、そしてみなとの五人が、夜景を背に並ぶ。
「皆さん……極上の神戸牛と、新しい力の覚醒に感謝を込めて。あのポーズで締めましょう!」
宗次郎の合図で、五人は胸の前で愛の形を作った。(髪が長すぎてハートが見えにくい)
「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・ラァァァァブッ!!!!」」」」」
伝説の迷曲によってドラゴンスクリューを破られるも、スーパー戦国人参への覚醒を果たした宗次郎。
一方、四度目の敗北を喫した直政は、壊れたラジカセから流れる『♪ガラスの海にぃ〜』という歌声と共に、瓦礫の中で「……次は……眉毛を消して……出直してやる……」と、エリートらしからぬ捨て台詞を吐いていた。
激しさを増す豊臣メガバンクとの戦い。カオスな旅は、ついにその中心部へと迫っていく!!




