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第五十六話:赤鬼のプライドと黄金の尻! 炸裂、禁断の足四の字!

 ――琵琶湖のほとりに舞い降りた、真紅の突風。

 土煙の中から現れたのは、磨き上げられた真っ赤な甲冑を纏い、威風堂々と腕を組む男。豊臣メガバンク最高位のエリート監査官、井伊直政であった!

「フン……。三成の策に漏れて生き延びたかと思えば、カピバラなどと傷を舐め合っているとは。相変わらず下級戦士のやることは理解できん」

 直政が、鋭い眼光で宗次郎を射抜く。

「……井伊直政。そのエリート然とした態度、相変わらずですね」

 宗次郎が静かに腰を下ろす(もちろんドーナツクッションの上に)。

「オーホッホッホ! 出ましたわ! 豊臣の誇るエリート中のエリート、井伊直政様! あのシュッとした顎のライン、赤揃えの輝き……。彼の戦闘力はまさに圧倒的ですわ! ひでちゃん、あんな素敵な人が部下にいるなんて、やっぱり豊臣メガバンクは最高ですわね♡」

 秀吉の腕に抱きついたカトリーヌ(淀殿)が、さっそく敵側の立場でウザすぎる実況解説を始める。

「おい貴様!! 淀殿だか何だか知らんが、総帥にすり寄るな! 馴れ馴れしく『ひでちゃん』と呼ぶのもやめろ!!」

 三成が顔を真っ赤にしてタブレットを叩きつける。

「あら三成さん、そんなに怒るとインテリメガネが曇りますわよ? ふふっ、もしかして本気でヤキモチ妬いてるのかしら?」

「だ、誰がッ!! 直政、さっさとそのバグ(宗次郎)を処理しろ!!」

「言われるまでもない。この俺様が、直々に『エリートの力』を教えてやる……。はぁぁぁぁぁッ!!」

 直政の体から、燃え盛るような紅蓮の闘気が噴き出した! 琵琶湖の水面が、そのプレッシャーだけで激しく波打つ。

「キュルルッ! あの闘気、とんでもない熱量っす! 宗次郎さん、気をつけるっす!」

 カピバラ・タナカが、みたらし団子のタレがついた短い前足で牽制する。

「行くぞ宗次郎……! これがエリートの必殺、赤鬼・連続突進バーニング・アタックだァッ!!」

 直政が音速で踏み込み、無数の突きを繰り出す。

 しかし――。

「……今の私は、以前の私ではありません」

 宗次郎は一切跳ぶことなく、低空で直政の突進をかわすと、その無防備になった脚をガシッと掴んだ。

「なにっ!? 貴様、下級戦士の分際で俺の脚を……!」

「入院中に、お尻への負担を極限まで減らし、かつ相手を確実に無力化することわりを悟りました。……新技、黄金・大竜巻旋回ドラゴンスクリューッ!!」

 ギュガガガガガッ!!

「な、なんだこの回転はァァァッ!?」

 直政の体が、自らの突進の勢いを利用して激しくスピンし、地面に叩きつけられた!

「ああっ! 淀殿解説ですわ! 直政様の美しい脚が、まるでピーナッツの殻を剥くように捻り上げられました! これはお尻の安全を最優先にした、非人道的なカウンター技ですわね!」

「解説してないで応援しろよ、淀殿!!」

 三成の叫びも虚しく、宗次郎は倒れた直政の脚をさらに複雑に絡め取る。

「仕上げです。エリートのプライドごと、その機動力を完全に封じます!」

 宗次郎が、どっしりと座り込んだまま(クッション経由で)力を込める。

「黄金・足四の字固め(ゴールド・フィギュアフォー・レッグロック)ォォォォッ!!」

 メキメキメキッ!!!

「ぐ、ぐわあああああッ!! は、離せ……! 俺はエリートだぞ! こんな泥臭い関節技で……グアッ!!」

「無駄です。足四の字の地獄からは、エリートといえど逃れることはできません」

「ヒィィッ! 直政様が悶絶してますわ! ひでちゃん、あんな痛そうな顔もセクシーだけど、やっぱりやられてる姿は勝ち組っぽくないですわね。三成さん、さっさとハワイ行きのチケットの手配をお願い♡」

「貴様ァァァ!! 味方がやられているのに手の平返しが早すぎるんだよ!!」

 三成の怒声と、直政の悲鳴が琵琶湖に響き渡る。

「……お、覚え、ていろ……ッ! 次こそは……この俺様が……ギ、ギブ……ギブアップだァァ!!」

 プライドを粉々にされた直政は、たまらず地面を叩いて降参の意思を示した。

 お尻への負担ゼロ。宗次郎はまたしても、涼しい顔で座りながら完全勝利を収めたのである。

「ヒャッハッハ! やるじゃねぇか宗次郎! 座ったままで直政を極めるとはな!」

 秀吉が手を叩いて高笑いする。

「総帥! 笑い事ではありません! 直政がやられた今、我々の戦力は……」

「気にするな三成。大阪城の『最終決戦』の仕掛けは完璧なんだろ?」

「……ハッ。もちろんでございます」

 秀吉はカトリーヌ(淀殿)の腰を強く引き寄せ、不敵に笑った。

「宗次郎、大阪城で待ってるぜ。俺の『淀殿』の解説付きで、たっぷり絶望を味わわせてやるよ!」

 秀吉たちを乗せたホバー・リムジンが、轟音と共に空の彼方へと消えていく。

「キュルル……。本当にカトリーヌは行っちゃったっすね」

 カピバラ・タナカが、空を見上げて寂しそうに呟く。

「ひどいですぅ……! 僕たちを見捨てて玉の輿に乗るなんて!」

 クリノジが悔し涙を流す。

「……行きましょう、皆さん。彼女の目を覚まさせるためにも、そして姫を救うためにも。次はいよいよ、豊臣の本拠地です」

 最強のライバルを退けたものの、仲間の裏切りという深い傷を負ったカオス・パーティー。

 カピバラになったタナカ、ビビリのクリノジ、そして痔の侍・宗次郎。

 凸凹すぎる一行の旅は、ついに決戦の地・大阪の空気を孕みながら、次なる戦いへと向かう!!

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