表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/100

第四十六話:究極の崩壊! 愛と至高を吹き飛ばす業火のミサイル!

 ――十分間の休憩が終わり、『東西大厨房』の熱気は最高潮に達していた。

「さあ、最終審査を始めよう」

 審査委員長である至極万太郎が、厳かな声で宣言する。

「待てッ!!」

 海原大山が、高らかに声を上げた。

「我が『至高のメニュー』は、まだ完成しておらん!!」

 海原は懐から、神々しい光を放つ小さな壺を取り出した。

「これぞ我が海原家の秘伝……『幻の深海キャビアと黄金トリュフの熟成発酵ソース』! これを先ほどの伊勢海老に一滴垂らすことで、真の至高が完成するのだ!!」

 海原がソースを一滴、エビの身に落とした瞬間――会場中に、脳の髄まで溶けるような芳醇な香りが爆発的に広がった。

 至極が震える手でそれを口に運ぶ。

 ……ドサッ。

 至極は白目を剥き、椅子から崩れ落ちて床に突っ伏した。

「ああっ……! う、美味すぎる……!!」

 至極は床を這いずりながら、海原大山の足元にすがりついた。

「なんという深み! なんという完璧な調和! タナカくんのカニも素晴らしかったが、このソースの前ではただの茹でた虫に過ぎない!! 海原大山先生、あなたは食の神だぁぁぁッ!!」

 他の審査員たちも次々と泣き叫びながら海原を称賛し始めた。

「至高だ!」「究極なんて最初からなかったんや!」「海原バンザイ!!」

 会場全体が、海原大山への狂信的な賛美で包まれる。

「フハハハハハッ!! 見たか、タナカの小僧! これが血の差、歴史の差だ! 貴様のような下賤な舌で作ったカニなど、豚の餌にでもするがいい!!」

 海原の嘲笑が響き渡る中、タナカは無言で俯いていた。

 その額には、かつてないほど太い青筋がビキビキと浮かび上がっている。

「タ、タナカさん……」

 クリ子が心配そうに駆け寄り、タナカの背中に手を添えた。

「負けちゃったけど、私にとってはタナカさんのカニが世界一美味しかったわ。さっきの味噌汁の約束……忘れてないよね?」

 クリ子が乙女の顔で微笑みかける。

 しかし――タナカはゆっくりと顔を上げ、底冷えするような声で呟いた。

「……クリ子。さっきのプロポーズ、やっぱりナシっす」

「えっ……?」

「俺の料理を豚の餌呼ばわりしたあのジジイ……絶対に許さないっす。料理の恨みは、料理で返す……いや、火力で返すっすよ!!」

 タナカは胸ポケットからトランシーバーを取り出し、狂気に満ちた目で叫んだ。

「カトリーヌ! 上空待機してる『源内アパッチ』のコントロールをこっちによこすっす! 照準、美食倶楽部・海原大山!!」

 直後、会場の天井のガラスがけたたましい音を立てて粉砕された。

 バタバタバタバタッ!!

 凄まじいローター音と共に、木造りの絡繰戦闘ヘリ『亜発知アパッチ』が厨房上空に降臨した。

「な、なんだあのカオスな乗り物は!?」

 海原大山が驚愕して天を仰ぐ。

 タナカは驚くクリ子を突き飛ばすと、驚異的なジャンプ力でアパッチの操縦席へと飛び乗った。

「味わうっすよ、ジジイ! これがタナカ流……『究極のメニュー(ミサイル)』っす!!」

 タナカが赤い発射ボタンを力いっぱい叩き潰す。

 シュゴォォォォォォォォォッ!!!

 アパッチの両翼から、平賀源内特製の超高性能絡繰ミサイルが雨あられと発射された。

「女将を呼べェェェェェェェッ!!!」

 ズドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 海原大山の断末魔と共に、巨大な料理対決会場が、至極万太郎も、至高のエビも、究極のカニもろとも、業火の連鎖爆発に包まれた。

 跡形もなく吹き飛ぶ会場。立ち昇る巨大なキノコ雲。

 ――数分後。

 焦げ臭い黒煙が立ち込める瓦礫の山の中で、顔中煤だらけになった栗田クリ子が、チリチリに焦げたアフロヘアでポツンと座り込んでいた。

「ゴホッ、ゴホッ……な、なんなのよアイツ……。料理対決にミサイル撃ち込むなんて、人間のクズじゃない……」

 パラッ……。

 クリ子の頭に、黒焦げになったズワイガニの脚が虚しく落ちてきた。

 タナカへの熱い恋心は、ミサイルの爆風と共に、木っ端微塵に消え去っていた。

「……見つけたっす」

 瓦礫をかき分け、タナカが煤まみれのエプロン姿で歩いてくる。その手には、海原大山が座っていた玉座の跡地から転がり出た、黄金に輝く鍵が握られていた。

「なぜかジジイが持っていた『大阪城バリア解除キー・帝都版』……これで一つクリアっすね。でも、バリア解除にはまだまだ全国の鍵が必要みたいっす」

 タナカは泣き崩れるクリ子を一瞥もせず、意気揚々とアパッチの縄梯子に掴まった。

 料理の道も、純愛も、倫理観もすべてを破壊し尽くした、史上最低の「究極対至高」対決。

 帝都を焼け野原にしたカオス・パーティーの果てしなきグルメとプロレスの旅は、何事もなかったかのようにまだまだ続くのである!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ