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最強令嬢の育児日記-PS:育児対象は拾いました-  作者: ミコト
王子様なお姫様と姉御なおっとり女神様

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アンデッドスタンピード そのいち

大変長くお待たせいたしました。

色々プライベートであって時間がかかりました。

少なくとも少しずつですが話は書いてますので、これからもよろしくお願いいたします。

--ヒナ--

剣舞をベースにした様々な武器を使い、舞いながら戦うパーティの方々とシルさんのお家の近くで何やら住み込みの依頼を受けることにした模様。

そして、なぜかやたらたくさんアンデットがいる。



「さて、ちょうどいいしアンデットについて教えましょうか。」

全員「・・・」

「ん?どしたの」

「いえ・・」

「その・・」

「予想以上に周りにアンデットが大量にいるんすけど・・無視っすか?そのままスルーして勉強っすか?」

そう。

周りに骸骨だったり腐った死体だったり半透明なお化けだったりがうようよとまぁ、たくさんいる。

動きは遅いけど。

で、そんな中で平然と開始しようとしてる女神様がいます。


「まぁ、確かにうざいわね。アイリス!」

「ウォフ。・・ワゥォォォォン!!」

アイリスさんが咆哮を1つあげると周囲一帯が全て氷のみの銀世界に変化した。

うようよしてたアンデットたちは全部氷漬けで標本になりました。

肉体がないはずのお化けも氷漬けの標本になってるんだけど・・アイリスさんの氷ってどうなってるの?

(後にシルさんからフェンリルの氷はそんなもんと言われた)


全員「えぇ・・」

「まぁこれで良いわね。」

あ、そのまま始めるんだ・・。


「アンデット・・まぁ、知ってるとは思うけど本来なら生きていない・・つまり存在しないはずの生き物ね。で、見た目的な種類としては3種。」

ちなみに、アンデッドでもアンデットでも呼び方はどっちでもいいらしい。


所謂ゾンビとか言われている、動く死体。

スカルと呼ばれている、白骨死体・・つまり骸骨。

そして、ゴーストと呼ばれる肉体が存在しない半透明でお化けって言われてるやつ。

「ゴーストは、確かに肉体はないけど、あの半透明でも目に見えているのは、ただの魔力の塊だと言われているわ。」

人も魔物も全て魔力を内包しており、全身を血液が通る血管が存在しているのと同時に魔力回路と呼ばれる魔力が巡る魔力の血管のような存在があるんだそうな。

で、そのゴーストは言ってしまうと魔力回路のみの存在と言われてるんだって。

「で、余談だけどたまにやたらと腕力だの脚力だの聴力だのと一部だけ妙に優れてるやつがいると思うけど、あれは魔力回路がその部位だけ太いから常に身体強化を発動させているような状態だからなのよ。」

ほほう。

「んで、アンデットだったわね。見た目の種類はさっき言った3種だけど、存在理由というか発生条件については大きく2つに分かれるわ。」

ん?と気になってシルさんに尋ねる。

「アンデットって生前に恨みとか悔いが残ってたり、死霊使い?みたいな職業の人が操ったりするだけじゃないんですか?」

「1つはヒナが言った通り前者の生前に何かしらのやり残したことがあって成仏出来ずにアンデットになるパターンね。そして、もう1つが惜しいわね。」

惜しいの?

ノア君とイブちゃんと揃って首をかしげてるとなぜか私だけシルさんのおっきなお胸に埋められ(ご褒美)、ノア君とイブちゃんは華麗にシルさんを避ける。(なぜ避ける?)

「さっき言ったのと違って死霊使いって職業の連中や、上位種のアンデットは下位のアンデットを増やすのよ。でその増やすやり方って、自身の想いに疑似的に命を吹き込むことで造り出してるのよ。あくまでも疑似的なものだから知能は圧倒的に低いし、何かしら条件が色々あるらしいけど。」

そうだったんだ・・。

「まぁ、ざっくりいうと動く人形でもあるゴーレムと同じようなものね。対象が死者であるって条件が必ずくっついてるってだけ。」

なるほど・・。


「アレ?じゃあ、今たくさんいるのは?」

「そ。さっき説明した前者とした場合、自然発生したと考えたとすると不自然でしょ?」

「確かに・・自然発生したとなるとあまりにも多いですね・・。」

見渡す限り倒しても倒してもどんどん増えてるもん。

現在は、アイリスさんが氷漬けにしてはリンさんが粉々に切り裂くを繰り返してるのでものすごい速度でアンデットが減りまくってるけど正直きりがない。

まぁ、それを対処してるアイリスさんとリンさんはものすご~く気楽にシルさんの話を聞く片手間に処理してるから2人からすると雑魚中の雑魚の模様。

それを引きつった顔でちらちら見ながらシルさんのお勉強会に集中しようとする舞踏狂いの皆さん。

「そう。後は、冒険者としては基本中の基本。死体の始末をきちんとしないことでそのままアンデットになるパターンだけど、それにしては人型が多すぎる。」

「確かにその場合だと大抵魔物の死体の処理になるんで人型は少ないはずですね。」

魔物は大半動物というか4足歩行系が多いんだよね。

「ってことは、死霊使いか、上位ランクのアンデットが発生したってことっすか!?」

死霊使いの場合は、ただの職業らしいけど今回みたいにあちこちに無造作に大量発生してる場合は力を悪いように使ってるから処罰対象となるらしい。

まぁ、そもそもどの職業も使い方次第で逮捕されたり国に管理されたり(監視が付く)するからそうなる確率が死霊使いだと割合が高いってだけなんだって。


そして、上位ランクのアンデットの場合は、発生イコールスタンピートと呼ばれる魔物の大量発生という大ごとであるという意味になるのですごく大変なことなんだとか。


「んー」

で、なぜかシルさん難しそうな表情をしてる・・私をおっきなお胸に埋めたまま。

「どうしたんです?」

「そんなヤバいというか面倒なやつの場合、速攻で双子ちゃんが反応するはずなのよねぇ・・。けど、ほら」

と言われてノア君とイブちゃんを見るけど、なんとなくとある方向を気にしつつもそれほど緊急性は高そうな感じではない。

むしろ、なんかあるけどまぁ良いかくらいの感じだ。(見えないナニかを見てるにゃんこに見えたのは内緒)

この子たちの場合、ヤバい奴が近くにいたら速攻でそっちに向かおうとするかシルさんに報告するからね。

「え・・その子たちって、感知系とかがすごいんすか?」

「感知系というか、察知系というか、一定範囲のあらゆる生き物というかナニかを感じ取る能力がずば抜けてるわよ。気配を完全に押し殺してる暗殺者が潜んでるでかい屋敷の敷地内に足を踏み入れた瞬間にどこにいるかなんとなく感じ取れるくらいの。」

実績が何件かあるらしく、証拠として記念硬貨を何枚か見せてもらいました。

報酬金を受け取り拒否した代わりにもらったらしいが、ノア君とイブちゃん的には気に入ってるらしく報酬としてお金をもらうくらいならこっちの方が良いと相手に報酬は何が欲しい?と聞かれたときは大抵記念硬貨になるんだとか。

シルさんたちもお金には困ってないし、いらないと言ってもどのみちダメならそれが良いかという感じで大抵の報酬は記念硬貨になってる。

そしてとある町のギルドの受付のお兄さんに教えてもらったけど、シルさんたちに指名依頼をする人たちの半分くらいは報酬を普通に用意しつつ記念硬貨も別途準備してるケースが増えてるんだって。

そのせいで、シルパパとシルママが個別に解決したときに相手には報酬として記念硬貨を要求する頻度が増えてるんだそーな。(貢ぎ物?お近づきの気持ち?)

全員「・・・」

君たち・・そんなにえげつない精度だったの?

いつもどこからともなく、シルさんとかリンさんの顔が引きつるような貴重そうなものを拾ってきたり、誰かの落とし物を拾ってきたりするけど。

落し物は近くの町に寄った時に対応よろしくと丸投げするけど大抵探し物の依頼が出てるものだったりしてそのまま報酬を受け取ったり

なんとなく拾ってきた貴重な薬草だの魔物?か何か生き物から抜け落ちたりしたナニかをついでにギルドとか商会に売ったりするとものすごいものだったらしくやたらと高かったりするというミラクルが発生する。

そしてそんな本人たちは、食べられるもの以外は全ていらないものという扱いなのでものすっごいどうでもよさそうで、それを聞いた近くにいた人たちが大抵悲鳴を上げるというのがいつもの流れ。(拾い物の中にとんでもなく貴重なのが混ざってたらしい)

で、一応私がこの子たちが拾ったものをシルさんたちの代表として受け取り、シルさんが後ほどそれを立ち寄った場所で売るか記念にとっておき、そして受け取った代わりに私が作ったおやつか何かしらの食べ物をあげることにしてるので、その子たちにとっては私からおやつを受け取るための引換券程度にしか思ってない様子。

・・・というよりも、むしろ高級食材だったり高級レストラン的なところでご飯を食べてもこの子たち・・・そんなに嬉しそうにはしないんだよね。(おいしいと言えばおいしいけどただそれだけって感じ)

でも、私の作ったものはとてもうれしそうなので・・なんとなく餌付けしちゃった?と思ってたりするけど、気づかなかったことにする。

ちなみに、そんな感じで私が餌付け?しちゃったせいなのか高級食材に関しては調理済みではなく素材の状態であれば嬉々として私の元に持ってきてくれる。(やっぱり私が調理したものが好きらしい)

とはいえ、この子たちに何が食べたいか聞いて帰ってくるお返事の中で最も高い確率で言われるのはだし巻き卵(プレーンご指定)なのは余談。(高級食材を準備した人の前でそれだったからOTLだった)


「で、話は戻すけどそんな子たちがそれほど反応してない時点で緊急性はそれほど高くないのよ。というよりは、急がなくてもある程度の対処は私たちでどうにかなるということでしょうね。」

もしくは、シルさんにリンさん、そしてアイリスさんという攻撃力の高い人たちが固まってるからその緊急性が他の人たちと比較して基準がずれてる可能性はあるような気がしなくもない。

後は、アンデットの動きが遅いから囲まれても逃げ切れるからという可能性もあるのかな?

この子たちの隠密性と、壁や天井も歩けるから逃げるだけなら簡単だからなのかも?

「・・・天使様も放置出来ないほどヤバいけど妖精さんたちも放置厳禁じゃないっすか・・。」

え・・私もノア君とイブちゃんたち同様にヤバい子扱いなんですか?

ノア君とイブちゃんはまだしも、なんでそんなに引きつった表情で私も見るの?

「でしょ?まぁ、天使ちゃんと違って双子ちゃんは放置しても安全だから好きなようにさせてるけど。」

シルさん、その呼び方はやめて欲しいんですけど・・というか私、シルさん視点だとノア君とイブちゃん以下の存在というか扱いなんですか?(半分以上年下なんだけど・・)

「そのせいで、ギルドで幻を見たという連中が増えてるんすけど・・。」

常に気配を消してはあっちに行ったりこっちに行ったり壁や天井等を歩いて回ったり至近距離で人間観察とかをするのに加え、物理的な接触を避けるので、気配に鋭い人が偶然見つけるか感じ取ってはすぐに見失うし、普通に子供が犯人だとは思ってもいないので更に見つけられる確率が下がるのでなんかいた!この建物なんか住み着いてる!!と大騒ぎになるらしいので、冒険者たちの間ではノア君とイブちゃんを見つけることが出来たら幸運に恵まれるらしいよ?

その結果が、この子たちの二つ名の理由らしい。(私よりも都市伝説みたいなことになってない?)



「じゃあ、その子たちが気にしてる方向を調べればとりあえずは良いんすね?」

「そうね。このごみ共の掃除をしながらね。」

全員「うっす」





30分後

「はぁ・・・どんだけ多いのよ。」

お兄さんたちは全員肩で息をするようにぜーぜー言ってるし、アイリスさんも魔力がだいぶ消耗してるらしく疲れた顔してるし、リンさんもどこかうんざりしてる。

みんな頑張ってたんだよ?

ただ、ノア君とイブちゃんが指さす方に行けば行くほどアンデットの数が倍々に増えてるだけで。

一応シルさんが緊急対策のために魔力を温存してるし、リンさんも疲れてるとは言っても十分対処出来てるから問題はないけど・・。

「アンデットだから稼げるのは魔石だけだと言っても数が正直きもいんだけど。」

アンデットは、一言でいうと動く死体か肉体のない死者だから魔石以外は残ったとしても腐ってるか、骨くらいだけど、アンデットの骨は耐久力が低いから加工とかは全く向いてないから魔石しか獲得できない。

後は、まれにゴースト系からなぜかローブやマントが取れたり、そいつらが装備してた鎧や武器くらい(ただし錆びてる)

しかもそのローブや武器などは大抵ボロボロか何かしら呪いらしき何かがかかってるのでとりあえず解呪をしてから加工とか修理などをしないと使えないので面倒なんだとか。

一応シルさんやリンさんが大収納なマジックバッグを持ってるからそっちに仕舞ってるけど。

とっくの昔に3桁を迎えた時点で数えるのをやめたから最終的に魔石だけでもいくつになってるのやら・・。

ローブとか武器とかの魔石以外の出る確率は1~5%らしいのに普通に2桁はあるよ・・?



「・・・・めんどくさ」

「シルさん?」

「あぁ、めんどくさっ。・・・もういいや。」

「えぇッと・・・シルさん?」

表情が全て抜け落ちたような表情でぽそりと怖いことを私を抱っこしたまま呟くのやめていただけませんか?

助けを求めてリンさんに視線を向けると顔が引きつってる。

「やば・・シルが別の意味で限界だ・・・もうダメだな。」

シルさん・・基本的に短気なお方らしいのに私やノア君、イブちゃんがいるから普段はかなり我慢してくれてたらしいけどさすがに限界だったらしい・・。

で・・下ろして欲しいなぁと例えお胸に埋められて幸せだったとしてもさすがに落ち着いて堪能出来ないからもぞもぞと抜け出そうとしてたらお胸に埋め直された。(今回に関しては嬉しくない・・)

どうやら精神安定剤代わりに私は抱っこされたままらしい・・。(どうしてノア君やイブちゃんじゃないの・・)

「シルさん・・下ろしてください」

「ダメよ。」

真顔のまま即答された。

いつも以上の速度で却下されてしまった・・なぜ。

「あんたは私の癒し役なんだから。」

私・・シルさんからどういう扱いされてるの?


・・・気持ち的にはうれしいけど、感情が抜け落ちた真顔で言われたくないし、何をしでかすかわからない状態で抱っこされて巻き込まれたくない。



・・・・しょうがない、最終手段を使うか(1回しか使えないけど)


「シルさん・・下ろしてくれないと・・」

「何?脅し?何を言っても無駄よ。」

「じゃあ、シルさんが私のお母さんのことあk-」

「下ろしたからそれは言わないで!というかなんでそのこと知ってんのよ!?」

速攻で下ろされて口をふさがれた。

すごい効果的だ。

だが、2回目以降は使えないからホントのとっておきだったんだよ?



え?何を言おうとしたか教えろって?

シルさんがすごい睨んでいて言えないからここで内緒で。(ここだけの話だからね?)


実はシルさん、私のお母さん(奏さん)のこと憧れてるんだよ。

主に歌姫として。


シルさんは世界的にも有名な歌姫様です。

この世界での歌姫とは、主に国ごとに存在してるらしいけど、所謂その国で一番上手な歌い手さんのことだそうです。

ちなみに男性の場合は歌姫のような呼び名がないらしい(なぜ?)ので、大抵は男でも歌姫呼びするらしく、そんな呼ばれ方する男性はうれしい気持ちと男なのに姫扱いで頭を抱えることが多い。

で、シルさんが歌姫と呼ばれるようになった(認められた?)のは、10歳くらいの頃だったらしい。

歌姫と認定された後も当然、目標があってそれを目指して努力し続けており、それは現在も続いているわけだけど、そのシルさんの中での理想の歌姫様が、私のお母さんそのものなんだそうな。

シルさん、見た目はおっとりとした感じだけど性格はさっぱりとしたというか、はっきりとしたYesとNoをきちんと言う姉御様です。

それでいて身内にはすごく甘い過保護なお方でおっぱいがおっきくてスタイルが良くて爽やかで良い香りがする超絶美人な女神様で・・と言い出したらきりがないからここまでにするけど、そんなシルさんも幼い頃はふんわりとした女の子らしい女の子に憧れていた頃があったそうな。

それでいて、脳内お花畑ではないしっかりした人という物語の中だと両立しているのか何とも言えない気はするけど、その2つを両立している人が理想の女性像だったそうです。

でも、そんな性格に程遠い自分自身が嫌いだった頃があったらしいけど今はありのままの自分を受け入れており、嫌いではないらしいからホントに幼い頃に一時的にそう思ってただけなんだとか。


で、歌姫認定されてからそんな憧れも混ざった結果、柔らかくてかわいらしくフワフワしつつも歌の世界に引き込まれるような表現力のある歌声が理想になったそーな。

いろいろ頑張ったらしいけど、結果として老若男女年齢性別問わず、あらゆるジャンルの歌声を表現するという声帯模写(歌限定)が可能になったんだって。(こっちの方が凄いよね?)

それでも、憧れがなくなるわけではなくただの泡沫の夢のように頭の奥隅に押しやっていたところでまさかの理想そのものなお母さんと(背後霊だけど)出会い、偶然とはいえ弟子入りしてるわけです。


話が長くなっちゃったけど、つまりシルさんの理想と憧れは私のお母さんそのものというわけです。

実際お母さんは現実的で脳内お花畑ではないけど、超ふわっふわな超絶マイペースなかわいいお方だし歌は上手というか趣味で幼い頃からしょっちゅう歌ってたこともあって上手で、趣味と実益でピアノの腕前は実績ありな世界一とシルさんの理想とするものを一通り兼ね備えてるという事実(無自覚)。

本人は恥ずかしいらしく隠してるようだけど、ノア君とイブちゃんとお母さんにはバレバレで、大変微笑まし気にされてる。

なので歌い癖は良いとしてしょっちゅうノリと気分で即興で造り出す歌詞がカオスな事実に大変頭を抱えてるわけです。

よくぶつぶつと、あの即興の歌詞がアレじゃなければ理想的なのにどうしてと頭を抱えてます。(諦めてください)

そのぶつぶつと呟く内容を私を抱きしめたまま呟くからバレるんだよ?(言わないけど)



で、無事にシルさんのおっきなお胸から脱出出来たわけだけど、シルさんのご機嫌は斜めなままなご様子。

両手にえげつない魔力らしき気配とメラメラと炎が周囲に飛び交う火の玉や紅の粒子等含めて燃えていらっしゃる・・。


そこで空気を読まずにふわりとシルさんにまとわりつくのが私のお母さん。

「シルルン、そのままやってもすっきりしないわよぉ?」

「・・・」

無表情のまま威圧的な雰囲気を纏わせてチラリとお母さんを見つめるシルさん。

「それに、シルルンってば感情をもっと有効活用しないともったいないわよ?」

「・・・」

微妙に纏う雰囲気が落ち着いてきた。

どうやらお母さんの話を聞くことにしたらしい。


「まず質問だけど、魔法って心の力みたいなものでしょ?」

「まぁ・・全部とは言いませんが、そう言っても過言ではないですね。」

シルさんはお母さんを尊敬していることもあり実はお母さん相手限定で敬語になる。(後お父さんにも)

実際、感情を上乗せすることで魔法の威力を増価させるから心の力といってもおかしくないね。

「で、感情は溜め込むのはあまりよくない。その発散方法は主に、声に出す、態度で示す、表情に表す。この3つかしら?」

細かいのはさておき、確かにそのくらいだと思う。

「そうですね。」

「で、感情という名の心の力を魔法に上乗せようとするときにそうやって態度や表情で発散させたらせっかくの心の力が無駄になっちゃう。・・ね?」

「・・・では、どうしたら」

「まず、表情を元に戻して、全ての感情を全部心の奥に押し込めるの。」

「・・・」

静かにシルさんはお母さんに言われた通りに引っ込めたらしく元の穏やかなお姉さんに戻った。

「次に魔法を放つときに今押し込めた気持ちも全部まとめて一緒に放つの。」

「そうやって感情を力に変えるんですね。」

「そう。ちなみに歌に感情を込めるときも同じ方法でより歌に感情がのるわよ?私やヒナちゃんは主にピアノに込めてるけど。」

「・・・そういうことでしたか。」


そしてシルさんはゆっくりと深呼吸しながらシルさんの懐から1つ何かを取り出した。

そこにあったのは、

「ミニ八卦炉!!」

「・・・なんで、これの名前を知ってんのよ。・・まぁ、今はそれは良いわ。」

聞くと、シルさんのお家のご先祖様の1人が開発したものらしく、

「効果はただひたすら壊れないほど頑丈であることと、魔法の指向性を調整してくれるだけよ。」

シルさんがそう教えてくれた後、リンさんが補足説明してくれた。

「それがなくてもシルは問題ないんだけど、シルを基点に全方位が消滅するからどちらかというと被害を最小限に抑えるためのものなんだよ・・。」

「え・・」

そう言ってる間にシルさんは何か始めようとしていた。

すぅっとシルさんが深呼吸をする。

「主よ。我が想いを、力を見届けたまえ。」

ミニ八卦炉を握って構えた状態でそう呟く、その瞬間シルさんの周囲をふわりふわりと舞っていた紅の粒子が勢いよく吹き出し、ミニ八卦炉に集まり出す。

そして、その光景に何となく感じたのはシルさん自身が魔力を込めているのとは別で周囲から魔力?らしき力が集まっているということ。

でも、チラリと周囲を見た限りだと、その魔力と思われる紅の粒子に気付いている(見えている?)のは、私とノア君、イブちゃんだけでリンさんもシルさん自身も気づいてないみたい。

あの光は何だろう?

シルさんは炎の神様の眷属らしいからその神様の部下?的な聖なる人外な方々が力をシルさんに貸してくれてるのかな?(ファンタジー的なのだと精霊とかそんなやつ)


そして、数分か、それ以上かと感じるけれど実際は1~2分とほんのわずかな時間。

シルさんが構えるミニ八卦炉からはものすごい熱量と魔力が込められていることが考えずともわかる。




そして

「我が敵を一掃せよ。」

シルさんがそう呟いた瞬間、ミニ八卦炉から超極太ビームが解き放たれた。

その時、全ての音が消え去り、私たちにはキィィンという耳鳴りだけが響いていた。






全員「・・・・」

目の前には、幅数十メートルを遥か彼方向こうの方まで削り取り、土がガラス状になって溶け、真っ黒に消し炭になっている跡だけだった。

「ヒナ。わかった?シルの蹴り技が護身術だって理由。」

ふわりとリンさんがそう呟く。

そして、シルさんの護身術という言葉の意味をこれを見てやっと実感した。

「・・・シルさんの中で最も攻撃力が低い攻撃手段・・つまり、最も手加減可能な手段ということなんですね。」

「そう。シルがちょっと油断すると、これほどではないけど拳1つ分の火の玉だけで、建物の1つや2つは軽く消し飛ぶんだよ。」

つまり、シルさんの中ではあの蹴り以外の攻撃手段だと相手はほぼ確実に消し飛んでしまうから蹴りで対処するしかないということ。


で、シルさんの魔法のすごさもそうだけど私の中ではとある考えがずっと抜けなかった。


だって


だって!

あれは誰がどう見てもマスタースパークだよね!?

そうだよね!?


マジモノのマスタースパークだよ!?

スペルカード、恋符だよ!?

必殺技だよまさに!!


もしやお祓い棒だの護符だの、おっきな杯だったりとかなんかシルさんのお家には探せばあったりするのだろうか?


で、どうしてみんなシルさんをそんな近づいたらヤバい人みたいなちょっとおびえた表情してるんだろう?

シルさんはすっきりした表情でそんな微妙におびえた表情をした皆さんをきれいに無視しつつ、すごいと表情をキラキラさせる私とノア君イブちゃんに対して首をかしげてる。

「あれを見てそんな顔するなんて変わり者ねぇ。」

「え?すごいってだけじゃダメなんですか?」

「普通はあんな風にビビんのよ。」

「そういうものですか?」

「そんなもんよ。とりあえず、あんた等さぁ頼んだ依頼をこなしてくれればいいし拾ったのは全部やるからさっさと去れ。正直足手まといなんだわ。」

「・・は、はい」

そう言って”舞踏狂い”というパーティの方たちはなぜか最後までシルさんのことを怯えた表情で見ながら去っていきました。



どうしておびえた表情になるのか、頭がおかしいのではないか?と思ったけど、後にシルさんからは

イーリス公爵家は主に崇拝されるか怯えられるかの2択しかリアクションされない一族らしく慣れっこなんだそうな。

とはいえ、怯えられる内容は人それぞれだとか何とか(それでも失礼だと思うけど言うだけ時間の無駄だそうな・・むぅ)


「さて・・・あれでもダメだとして、とりあえず・・」

「うん。原因はわかったね。」

リンさんが指さす方を見るとシルさんによって作り上げられた極太レーザー跡の中にポツンと1本の真っ黒な剣が地面に突き刺さっている状態。

その剣からわらわらとアンデッドが湧き出ている状態だった。

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