船の上は、とりあえず雑談が良い
あけましておめでとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
--ヒナ--
故郷でずっと一緒だった元愛犬のアイリスさんが氷魔法が得意なすごくおっきな狼さんになって再び再会できたり、
たくさんの調理器具や食材を手に入ったりしつつも無事に船に乗り込むことが出来たヒナさんです。
船のチケットは、一般より1ランクだけ上の軽い個室がある程度のものだったはずが、私たちが色々解決というか貢献したことで気を使ってくれたのか何なのかランクがグイッと上がり、バルコニー付きの高級ホテルのような豪華なお部屋で泊まることになりました。
テレビでたまに見るような落ち着かないような空間ではなく、どこか落ち着いたすっきりとしたごちゃごちゃとよくわからないものが並んでるわけではないシンプルな部屋でちょっぴり安心。
ちなみに、お料理するときのコンロとかそういう類のやつに関してだけど、それはシルさんの魔法を元にシルさんのご実家で魔道具を開発したものがあり、それを使ってます。
ざっくりいうと持ち運び可能なカセットコンロを大型にしたような奴。
まぁ、カセット式ではなく魔力を魔力を注ぎ込んでおき、つまみで火力を調整するタイプで、注ぐ魔力はそれほど必要はなく、事前にある程度ため込んでおくことが出来るのでほとんど苦にならないようになってる。
他にも冷蔵&冷凍庫もシルさんのご実家で開発済みで、そっちも魔力を注ぎ込んでおくことで稼働するタイプ。
この2つに関しては、料理関係ということで私、もらっちゃいました・・良いのかな?
シルさんが良いっていうから良いんだろうけど・・。
まぁ、冷やす関係に関してはアイリスさんが割と器用でちょっと覚ましたり、アイスを作る時に凍らせたりみたいな細かい調整が出来るので結構そっち系でもお世話になってたりする。
そして、シルさんはアイリスさんが気になるらしく色々話しこんだり、その毛並みを楽しんだりと楽し気なのがかわいい。
主に、私の故郷でのやらかし・・を、アイリスさんに尋ねてるらしい。
・・ガチでずっと一緒にいたから私のやらかしというか、アイリスさんの脳内育児日記?は豊富だからほんと・・あまり話さないで・・すごく恥ずかしいから!!
・・後、お父さんとお母さんのこともよく知ってるからシルさんが知りたいことの大半は知ってるという状況で、止めようにも止められないのです。
・・うん、なんか半透明なお父さんとお母さんが笑顔で諦めろと言いながら肩をポンポンしてくれてるような気がします。(遠い目)
で
ノア君とイブちゃんも気になるらしくそっちに参加してるのは良いとして、当たり前のようにアイリスさんと会話が出来てる2人である。
私は、長年付き合ってたこともあって言いたいことは察することは出来るよ。
「でも、シルさん。よかったんですか?」
「何が?」
「私、シルさんたちと一緒のパーティをあの場で結成しちゃって。」
「あぁ、良いのよ。元々作る予定だったし。」
そう。
私と、シルさん、ノア君とイブちゃんでパーティを結成したんです。
リーダーは当然シルさん。
名前は、”虹の箱舟”!!
シルさんは世界的にもすごく有名な歌姫様らしく、その二つ名が”虹の公爵令嬢”。
その虹っていうのは、シルさんの歌声は性別や年齢を完全に歌で再現できるらしい。
つまり、どんな性別、年齢の人の歌声でも歌える。
そして、とんでもなくうまいんだそうだ。
いつか機会があれば聞いてみたいな。
そして、箱舟は、シルさんたちのことを軽く聞きながらなんとなく神の箱舟の話を思い出した。
理由はわからないけど。
その話をしてみたら、面白いしそれ採用となった結果、こうなった。
・・多分ノア君の名前を聞いて私がそっちを思い出しちゃったんだろうなぁ。
おまけにイブちゃんの名前も、神話でよく聞くし。
だからこその神の箱舟・・ぴったりだと思う。
船は動き出した。
あまり長い間いたわけじゃないけど、たくさんの出会いとたくさんの初めてを経験した良い場所だった。
また、機会があれば来たいな。
で・・・
「シルさん・・・何してるんですか?」
話し込んでたと思ってたかと思いきや、気づくとアイリスさんに埋もれてうっとりしていらっしゃる。
「ん?あぁ・・これ?」
「それです。」
大変幸せそうで何よりです。
後、かわいい。
「いやぁ・・アイリス・・すごく良い子だわ。やっぱり護衛というかそばに控えさせるのはむさくるしい野郎共よりもにゃんこやわんこよね。」
「・・・一体何があったんです?」
なんか、人間に失望してるようなことを匂わせてるのがすごく気になる。
「だってさ・・私、公爵家令嬢で、次期当主なわけよ。」
「そう聞いてますね。」
「だからさ、場合によっては護衛がどうのとか侍女がどうのとか云々とうるさいのばっかだし、護衛は大抵強い奴を揃えるからむさくるしいし鬱陶しいし、無駄に惚れっぽくて仕事しない馬鹿もたまにいるし、何より私より弱いし役に立たないんだからただのでくの坊じゃない。」
「・・・」
ものすごく鬱憤が溜まっていらっしゃるのはよくわかった・・。
「まぁ、幼い頃の話ってだけで、その後全員私の手で再起不能にしてやってから、私より弱い奴なんてただの肉壁、そんなもんじゃまだし、無駄に金がかかる害虫でしかないからいらねぇって言って捨てたんだけど。」
「・・・」
うっわぁ・・容赦ねぇ・・。
「でもさ・・見てよこの子たち。」
相も変わらずシルさんの膝の上を独占してるノルウェージャンっぽいでっかいにゃんこを撫でながらシルさんが答える。
シルさん曰く、ついてくるにゃんこたちの中で唯一の膝乗り&抱っこネコらしい。
「狩りは出来るし、気配は敏感だし、かわいいしむさくるしくないし、まさしく理想的じゃない?」
「まぁ・・確かに。」
下手すれば私より圧倒的に優秀だし、野営中はものすごーくお世話になったし・・。
場合によっては、右も左もわからない状態でもにゃんこがいればどうにかなるレベルだった。
「それに加えて、誠実で忠実で実力は確か。おまけに、あんたの見た目で明かりに寄ってくる虫みたいな馬鹿どももアイリスがいるだけで排除する手間は省けるし、何より触り心地が良いし。頭がいいし」
シルさん・・・なんというか、人間不信になりかけてない?
確かに、アイリスさんものすごく頼りになるけど。
しかも、体力のない私となると、護衛兼私の運搬もしてくれるなら今後の旅もものすごく便利になるのは確か。
おっきいから、シルさんやノア君、イブちゃんも同時に背中に乗っても問題ないだろうし。
「まぁ、そのせいで我が家に雇われる護衛っていうか私兵って、私を溺愛してるお父様とお母様によるとんでもなく厳しい審査を超えた人だけだから量より質って感じなのよね。おまけに見た目で護衛と思われないようにすることも条件に加えてるし、脳筋に用はないからある程度の知識も要求するから。」
でも、実力を正しく見定めてくれるのに加えてシルさんがすごい美人だからご両親もすごい美形なのは想像にたやすい。
おまけにすごくえらい人・・それなら、応募する人は多そう。
「でも、受かったからと言っても私より大抵のやつは弱いから受かってからが本番だったりするんだけどね。だって、守られる立場より弱い護衛って・・存在する価値ある?」
それ、護衛の存在自体を無駄にする一番、護衛としては絶大なダメージを食らうやつ・・。
「うわ・・それ、下手すれば受からないほうが精神的なダメージは最小限で済んだのでは・・」
「みんなそういうけど、なぜか2回目をトライする奴がいるのよね。・・たまに、自分の実力がどこまで通用するか確かめるだけのために受ける奴がいるけど。」
「後者の方が受かったらどうなるんです?」
「本人の希望次第で、他に斡旋するか私のところにそのまま雇うかのどっちかね。そういうやつの方が割と良い護衛になるのよ。下手な連中より素直だし、職務に忠実だし、自主的に鍛えるだろうし、ついでに周囲の連中を鍛錬に巻き込むし、汚いやり方で近寄る奴なんていたら気に食わないだろうから勝手に潰してくれるし。」
「・・・意外と良い方向に向きやすいんですね。」
意外と奥が深い・・。
「でしょ?だから、お父様もお母様も審査にそういうやつが混ざってても何も言わない理由がそれなのよ。まぁ、あとはお母様の信者だから頑張って鍛えて受けに来ましたってやつも多いわね。」
「シルママさんって、騎士団長さんなんでしたっけ?」
シルさんのお父さんとお母さんと呼ぶのは長いから、勝手ながらにシルパパ、シルママと呼んでる私です。
それに対してシルさんは本人たちが泣いて喜びそうな呼び方ねと苦笑いしながらもOK出してたし。
「そうね。だから、実力は確かだし、血のつながった娘ながらお母様は美人だからなぁ・・ちょっと幼いけど・・。憧れるのはわかる。私の師匠でもあるから。」
何か微妙に気になるセリフを途中、ぽそっと呟きませんでした?
聞いたけど、笑顔のシルさんのお胸に埋められて幸せで思考を放棄させられました。
「私とお父さん、お母さんとの関係に近いです?」
「そうね。かわいがってくれたし、いろんなことを教えてくれたから、ヒナと同じね。私にとってもお父様とお母様は憧れで目標で大好きな人よ。・・溺愛してるところや、血で汚さずに相手を撃退させるところもね・・。」
「あぁ・・」
「ヒナが提案したあれね・・採用されたわ。」
「え・・ということは・・」
「えぇ。嬉々としてお父様とお母様は育てて増やすことにしたらしいわ。」
「うわぁ・・」
何を言ってるかというと、実は、私の世界でトップ3に入るレベルで辛いと言われる唐辛子の栽培です。
わが娘ながらお父さんとお母さんは美形だったのでそれはもう・・モテました。
なので、汚いやり方で近づく奴も少なくはありませんでした。
・・・そこで、2人は、わざわざネットでドラゴンの名前が付く唐辛子を手配しました。(詳しい名前は忘れた)
そしてそれを、加工して作り上げたスプレーを相手にシュッ。
・・察したと思うけど相手悶絶。
下手すればそのまま病院へ直行。
場合によっては、笑顔でその唐辛子を実のままその人の口の中に押し込んで無理やり食べさせたりします。
というわけで、私、お父さんもそうだったけど、その唐辛子を実のままと、種、加工してスプレータイプにしてるやつを一通り持ってるんですよ。
常に。
それを、シルさんに話した後、種をプレゼントしてみました。
で、結果として私からのお洋服(正しくは装備品)のお礼としてシルパパとシルママ宛に種と、実が発送されました。
そして、大変喜んでもらえたらしくそれを育てて増やし始めた模様。
「・・・お礼があれだけって、いろんな意味でよかったんでしょうか?」
「まぁ、良いでしょ。それにあれ、加工次第では少量でかなりの量の料理に辛みをつけることが出来るんでしょ?」
「そうですね・・想像を絶するレベルで。」
「そうなれば、意外と良い意味でも使いようはあるのよ。定期的に我が国では炊き出しをしてるのよ。」
「・・やっぱりお金に困ってる人が多いからですか?」
「それもあるけど、あまり手元にお金を貯めこんでいても良いことないし、どうしても貴族と平民、冒険者は関わることが多くないでしょ?」
「まぁ・・用事がなかったらそうなりますよね。」
「その交流会もかねてるのよ。ものすごく大きな大釜で料理をしてそれを配布するのよ。交流できて情報交換ができるし、料理人を目指す奴からすればとにかく量を作るから良い特訓になるし、孤児とかも正直いるから孤児院への差し入れの一環にもなるし、孤児院と城下町の連中との交流にもなるから。」
その大釜にほんの少し入れたりすれば、大量に準備しなくても十分だからメリットだとか何とか。
・・そっか。
量があるなら少なくすれば割合は減るからそうできるのか・・。
辛いものは体を温めるから寒い時期なら一番だし。
「なるほど・・意外とメリットは多いんですね。・・・貴族ってメリットがないと動かないってイメージがありました。」
「あぁ・・実際そういうのはいるわ。でも、お父様が大嫌いだから見つけ次第片っ端から処分して回ってるけど。」
「・・・」
「あ、死んではいないわよ。笑顔でただの教育だからとお父様はいつも楽しそうに言ってるけど・・多分、調教だと思う。」
趣味も兼ねているとシルさんから言われた私はどうすれと?
そして、シルママさんも同類と言われてどうすれと!?
「・・・」
シルパパは敵に回したらダメだと誓った。
「でも、あんたの世界って・・よくわからないことをするわよね。」
「あ、あはは・・・」
確かに唐辛子の辛さを高めに高める競争がある時点で正直よくわからないのは賛同する。
おまけに、それを平然と利用しようとするお父さんとお母さんも・・。
他にもよくわからないことをやってた気がするなぁ・・ネットで見た気がする。
「正直、あんたのご両親、すごく穏やかそうに感じてたけど、やる時はしっかり仕返しするタイプだったのね。」
「はい。見た目詐欺とはよく言われてましたね・・突然誰もが見惚れる笑顔を見せたかと思ったらさっきの唐辛子を相手の口に押し込んで口をふさいだり、憂いた表情になって周囲の人を味方にして全員で相手を精神攻撃仕掛けたり・・・おまけにお父さんもお母さんもそれぞれの職の関係で仲良しの人の中に、すっごい偉い人とかが混ざってて突然その人たちにお願いして社会的に対処してもらったりとか・・一部では絶対に敵対させたらダメな夫婦とか言われてました。
おまけに、その背を見て育ってアイリスさんがご覧の通り忠実な騎士みたいに犯罪者を制圧して感謝状を貰ったりしてそれ経由でそっち方面の偉い人と顔見知りだったりしますし。」
アイリスさんが私を騎士のようにしっかりと守ってくれるようになったのは間違いなくお父さんとお母さんから学んでると私は実感してる。
「うわ・・敵対された時点で絶対負けるじゃない・・・相手。そういう割に、ヒナ。あんたはとても穏やかなままでそういう仕返し系のエピソードってないわね?」
「あぁ・・・顔を隠してたのと気配を消してたので目立ってなかったのと、そういう時は大抵幼馴染かアイリスさんが先にやっちゃうので・・」
よくよく思い出せば、学校でも私の素顔を知らないはずの友達みんながそういう人は私がリアクションする前に率先して潰しにかかってたような・・どうしてだろう?
助かったけど。
「そういえばそうだったわ。そうなる機会がなかったのね・・でも、そのおかげでピアノと料理の2つの極み系スキルを習得できたのだと考えると運命ってすごいわね。」
「そういえば、ギルドのお兄さんも私のスキルに極みって入ってるのを見てびっくりしてましたね。」
魔剣とか神様の加護とは別で驚いた表情をしてた気がする。
「スキルはね。基本的に使えば使うほど威力が向上していくのよ。そしてある程度向上するとスキル名が変わったりその扱い方に適した別のスキルが増えたり、称号が増えたりするの。」
「極みっていうのは、その中で言うと所謂上限突破して名前が変わったスキルってことになるんですか?」
「そうね。その中でも極みと付くスキルは一種のそのジャンルの頂点の証ともいえるわ。つまり、それを持ってる時点で同じスキルや職業を持つ相手の中であんたは世界一と言っても過言じゃないレベルの実力者だってこと。」
「え・・そんなにすごいものだったんですか?」
「そうよ。だからこそ、同じスキル持ちであることから他の料理人たちはなんとなくそれを察していたからこそ余計にあんたを崇拝してたのよ。」
「えぇ・・・」
「しかもね、極みを持つ奴って、数千人か数万人の内数名いるかどうかってくらいしか存在しないわよ。」
「そんなに少ないんだ・・」
悪い言い方をすればそこまでやり込もうと思った人がいなかったってことだよね?
シルさんは私の意見に賛同してくれた。
冒険者でもランクは、Aより上を目指す人は大抵向上心のある人だけらしいのでそういう根性のある人自体が少ないんだと思う。
「そもそも、1つのスキルだけを鍛え上げるなんてことをする奴が少ないのよ。大抵そんなことしてる前に他のを伸ばさないとやっていけないし、そもそも時間が足りない。あんたの場合は、争いのない平和な世界だったからこそその2つのことに集中していたことと、楽しんでいたことで極みスキルを習得できたのでしょうね。」
「私の故郷だと、好きはものの上手なれって言いますけど、それですか?」
一応意味も伝えておいた。
「へぇ。そういうことね。楽しくなければ学ばないし、言われたことは頭に入らないからね。だからね・・あんたガチで気を付けないと速攻でお持ち帰りされた挙句、囲われて帰ってこれなくなるわよ。」
「・・・・」
「まぁ、それもあるからこそ私のところにいれば安全なんだけど。・・後は、純粋に私がこういう性格だからお父様もお母様もあんたのことを気に入ってるんだと思うわ。・・お母様がヒナみたいな控えめで儚げな子が好きなのよね。」
微妙に遠い目をしてシルママのことを教えてくれたシルさん・・過去に何があったんだろう・・・。
「えぇ・・まぁ、気に入ってもらえるのはうれしいですけど。」
「それに優秀だし、良い子と言うのも評価されてるのよ。・・すごいことなのよ?私の両親2人揃って手紙越しだけど相当気に入ってるのって、世界中でも一握りもいないレベルよ?」
「そんなに辛口評価何ですか?」
「そうね。それで合ってるわ。」
「さて。いい加減この生ごみ、邪魔だし捨ててくるか。」
何を言ってるかと言いますと、私たちは気付いてなかったけど実はこの大きなお船の中で最もお高いお部屋にいたらしい。
で、どこぞの国の貴族らしいブックブクのおっさんと無駄に傲慢そうな執事2名に自分たちは偉いんだからこの部屋を譲れとか、他にもなんか色々言ってたけど、私が無自覚にポケットから唐辛子を取り出そうとしてるのをすかさず見つけたノア君とイブちゃんがスルっと私から1つずつ計2つ抜き取り、相手に忍び寄りポイっと口の中に放り込んだ。
そして、その直後イブちゃんの魔法でくるくるっと相手を拘束し、相手の口もしっかりふさいだ。
それからは・・・想像がついたね?
大変悶絶中で、じったんばったんうごうごしてます。
で、やらかした2人はどや顔してる気がする。
どうやらうるさかったらしい。
ちなみに、後ほど私が持ってた唐辛子を欲しがったのでいくつかあげました。(絶対何かあった時の反撃手段だよね・・)
で、ただの唐辛子に何故にこんなに暴れてるのか不思議だったらしいシルさんに説明した後それです。
まぁ、お礼を兼ねてシルさんのご実家に私の知ることは色々手紙で教えてそのついでに唐辛子も送ってたけど。
荷物は船に乗る前に送っているけど、その時にシルさんには唐辛子の一種で普通のより辛いよ〜としか言ってなかったから余計にその人達が悶絶してるのが不思議でならなかったらしい。
偉い人らしいから私はただの撃退アイテム扱いだったけど何か有用な使い方をするんじゃないかな?って感じで。
で、さっきのやり取りです。
シルさんは、それぞれ片足を雑に握って引きずっていきました。
というかシルさん・・・今さらっと人扱いせずにゴミ扱いした?
「とりあえず、捨ててきたわ。」
「えっと・・具体的には何を?」
海に捨ててないよね?
シルさんの場合、ガチでやりそうで怖いんだけど。
「船長に渡してきた。そいつらに見えるように私の儀礼剣とギルドカードを見せながら。」
・・・うわ。
冒険者ランクは上から2番目。
そして、貴族としての身分は王族を除いて一番上という圧倒的にそいつらよりも上であるのに加えて、知名度も圧倒的なうえ・・死んだなぁ・・その人たち。
「後は船長側も私たちが色々としてたから感謝してたから嬉々として縛り上げて一番狭い部屋に投げ込んでたわね。」
「あのレシピ・・気に入ってたんですね船長さん。」
ちなみに船長さんは、筋肉がすごいガタイの良いけどすごく優しくてさっぱりした性格のおじさんでしたよ。
「とても喜んでたわよ?」
船長さんたちにも、お料理のレシピをいくつかプレゼントしました。
所謂船上料理ってやつで、有名どころをいくつか。
後は、応用が割と聞きそうなレシピをいくつか。
それ以降は、料理人さんたちが改良してくれたりしたら別のレシピが生まれて面白そうだからそれを期待。
「お礼は、頑張っておいしい料理作るから楽しみにしてくれとか言ってたけど。」
「それは楽しみですね。」
「後、騒いだ馬鹿の祖国には船長から伝えてくれるらしいわ。」
「じゃあとりあえずは放置でOKって感じです?」
「そうね。馬鹿は、気にしてやる価値なんてないわ。忘れましょう。」
「そうですね。」
好きの反対は嫌いではなく無関心とはよくいうものです。
だから、私はむかついた時は暴力は振るいたくなかったし、そもそも貧弱だから勝てる未来が見えなかったから、気にしてやる価値はないから忘れろと自分に言い聞かせてなだめてました。
今は、アイリスさんが慰めてくれたり、シルさんが嬉々として抱きしめてくれたりするし、そもそもこの世界だと暴力沙汰なんてざらなので笑顔のシルさんが相手をぼこぼこにして終わりだし。
ちなみに、後日談?のようなもので。
あの騒いでた人だけど、身分は侯爵で、その祖国からはシルさんがブチ切れたと知って顔を真っ青にさせたんだとか。
で、他にもあちこちであの傲慢執事とセットでやらかしてたらしいので身分をはく奪し、全ての所持品を売却したお金で各地の被害者たちへ賠償金として差し出し(その一部はシルさん宛)
利き腕と喉を使えなくして放り捨てたんだって。
後シルさんと私宛へさっきのとは別で賠償金を払わせるために莫大な借金を支払うようにしたんだとか。
まぁ、そのあたりのお金は正直欲しくないし、適当なところに寄付するように受け取り口になってくれた船長さんに頼んでおいた。
そのうちの一部はきちんと対処してくれた船長さんたちに渡しました。
整備や各部品や動力等のグレードアップにでも使ってって感じで。
・・・・そのせいで、私を拝み始めたけど(遠い目)
後、船長さんたちからお魚をはじめとした魚介類を色々もらいました。
新鮮なやつから干したやつに、魚醤までもらえちゃいました。
私ホクホク。
一応、お父さんからは各調味料の作り方も実はしっかり教わってるから材料と施設があれば出来るんだけど。
醤油からお味噌にと、大抵のものは一通り。
お父さんはサバイバーでもあったけど、凝り性だったんです。
とにかく自身が関わるものは片っ端から調べてレポート形式でまとめる。
そのため、あらゆる食材から調味料までどういう風に育て、作るのかよーく知ってる。
私もよくそのあたりの話を聞いてたし、趣味でお父さんと同じように調べてたから知ってるのである。
後は、あまり言ってないけど記憶力に自信があるんですよ、私。
だから、大抵のことは一通り覚えてるので、そのあたりについても覚えてる。
その関係で、読書代わりに広範囲で世界中のレシピを読んでたので私の脳内には膨大なレシピと経験があるので、それらを組み合わせて新しいレシピの作成や、この世界風に改良したり、その人好みに変えたりすることはたやすいのである。(えっへん)
それを知ったシルさんからはドン引きされたけど。
どうしてだろうね?
ノア君とイブちゃんは褒めてくれたのに。
なのでお父さんは、かなり料理関係に関しては万能なお方だったのである。
パティシエ系から中華、日本食までなんでもござれな人だったんです。
だから私、やろうと思えば飾り切りとかパティシエみたいに飴細工を作ったりもできるんですよ。
まーそのせいで、お父さんを神と崇める人が実は地味に多かったんだけど。
で、どうせだったので、おやつ代わりに用意していた果物を数種類飾り切りにしてみた。
「・・・・」
シルさん口をぽかんと開けたままフリーズ。
ノア君とイブちゃんは素直にぱちぱちと拍手してくれる。
「え・・あんた、そんな器用なことが出来たのね・・。すご・・正直初めて見たわ。」
「これもお父さんから教わったんですよ。」
「あなたのお父さんは・・どんだけ料理系に関して万能通り越して超人なのよ・・。」
「それ、お父さんを知る人全員同じこと言ってました。安心してください。私、お父さんの技全てを引き継いでいるからこそ、免許皆伝なんです。」
あ、顔が引きつってる。
「・・・それって、ピアノに関してもってことよね?」
「そうですよ。免許皆伝って、教える人と同じ実力になることですよね?」
ノア君とイブちゃんはうんうんと頷いてる中、シルさん顔が引きつったまま。
「・・・違うと言いたいのに間違ってはいない・・うぐぐ。」
どうしたんだろ?
とりあえず、喜んでもらえたんならいいや。
久しぶりにアイリスさんを背もたれにしてお昼寝しよーっと。
幼い頃いつもやってたんだよ。
あ、ノア君とイブちゃんも一緒にやる?
気持ちいいよ?
数話ほど前にも言ってたりしますが、ヒナさん本人は素顔をバレてないと思ってますが、友人たちはほぼ全員素顔を知ってます。
なので、ヒナさんにあれこれ言ってくる連中を率先して潰しにかかってます。




