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時々  作者: こいこい
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後編 未来時 最終話 観覧車




信じられないことに、彼女は金の使い勝手が荒かった。それと胃袋……じゃなく、『BETUBARA』なる女性特有のもうひとつの胃の要領がとても大きかった。異空間の存在を認めそうになった。

まず、チュロス32本。三十二種類あるチュロスを食べきった。「もう一度回りたいですねぇ」とは彼女の弁。無いわ、そげなワンチャン。と丁重に突っ込ませてもらった。場所によって種類が違うのでまた回るとなると時間の消費が激しいのである。

ついでに言わせてもらうと、チュロス一本500円は高くないですか。

……追加、本格バイキング。一時間。カレンは意外に現金で、元を取ろうと必死にローストビーフの列に参列した。

「ローストビーフ食べます?」(既にお腹一杯。)

「取ってきますね。」(『え、言ってない……。』)

「え、食べないんですか?もらいますねー」(『……えぇー…』)

の三段活用には驚かさせれるばかりだった。ねぇよ、そんな三段活用。良識ある皆さんは是非に活用しないでいただきたい。

ローストビーフ一人一枚制度がなければこんな悲劇は生まれなかったのに……、

一人5000円也。流石は異国。物価の違いにはカルチャーショックをカクセナイヤー……、

(↑必死の現実逃避)

その後は、お化け屋敷に行った。チケット代二人会わせて300円。二人の代金合わせてチュロスより安いってどういうことなの……、残りの時間全部使っても、多分チュロスに使った金を上回ることはないであろう。感慨深い。

突然出てくる音やモーションつきのお化けに僕はびびりっぱなしだったが、トラウマを越えるトラウマをお持ちだったのか、カレンは「へぇー、良くできてますねぇ…」と、感心しっぱなしだった。お化けっていう設定なのにそれ言っちゃあダメでしょ……、

人が脅かすタイプのお化け屋敷じゃなくて本当に良かったと思った。だって、それ言っちゃあ、夢とかないじゃん……うん。とか、気まずい気分になることうけあいだったような気もする。

その次は、ライド型シューティングアトラクションに入った。僕は引き込もってゲームばっかりやってたから、こういうのは結構得意だった。

なので……

「すごいです!私の何倍もの点数で!」

「…そ、そう?」

と初めは照れ臭いのと誇らしいのとでいい気分だったが、

「射撃の天才ですね!」

「そ、そう………、」

国民的某青たぬきロボットのぐーたら主人公と重なって、いい気分がぶっ飛んだ。

実際は天才ではなく、引き込もってやり続けた努力の結晶だとは口が割けても言えなかった。いや、もしそうなったら、口が割ける前に舌噛んで死ぬレベル。








―――そして、




時間的にも、体力的にも、最後を……迎えた。


「最後に、あれが乗りたいです。」

「観覧車か……。」

最後には、良いかもね。

そう言って二人して乗り込んだ。

思いきって、一つの個室を三周くらい貸しきった。そろそろ眠くなってきたというカレンにはそれくらいが丁度良かった。

景色がぐんぐん上がっていって、半分くらいに行った辺りか、

「なあ、」

と僕から始めた。

「……なんでしょう?」

彼女は聞いた。

「楽しかったか?」

「はい。とても……。」

にこやかに笑う。それでも、その笑顔は、なんか寂しそうだった。

こんなシーンを昔何処かで見たことがあるような気がする。確か、余命が一ヶ月の彼女と暮らす話。その最後の一日に似ていると、ふとそう思った。

半周目に入った。時間の進みが早いような気がした。本当は時間の進み様なんて変わりようがないんだろうけど。

そういえば、あの映画の主人公は最後になんと言ったんだっけ…?

「やり残したことは、ないかい?」

……確か、こうだ。こういう、セリフだ。後悔があるか尋ねる。

僕の人生において、やり残したことは多々あったけれど、どれもが後悔しか出来ないように終わった。

カレンはどうなのだろう。

「そりゃあ、ありますよ。やり残したことくらい。……遊園地以外にもいきたいとこあったんですから。」

頬を膨らませながら答える。

「……そうか。試しに聞いてもいい?」

「……ええと、他はですね。京都、北海道、沖縄、大阪、……」

遠いなぁ…、金もかかる。県外はキツイかな。

「ゲームセンター、ショッピングモール、植物園、プール」

プールは季節外れじゃないかな……。

そんなことは気にしない。彼女がどう思ったか、それが大事なんだろう。

「今あげたので最後なんですけれど……やっぱり、未練なんてあるもんですね。でも、なんでそんなこと聞いたんです?」

「……………、」

いや、わからないけれど……、

僕は今死ぬ訳じゃない。

だからこそ、

――――今消えそうなやつの気持ちなんてわからない。

……けれど、せめて、

「はっきりさせないと、いけないだろう?」

やっぱり、お人好しでも、お節介だって、出来ることはしてやりたいじゃないか。出来るかはわからないけれど、ね。

「困ったなぁ……、何でだろう。そんなにかなー?」

んー、とカレンは困ったように笑った。

「何がだ?」

僕は尋ねる。なにが……そんな、なんだ?

すると、ほっぺを人差し指でかきながら呟いた。

「そんなに、心配することかなぁ……」



「私なんかが、いなくても世界なんてきっと回ってるよ。」



それは……そうだろうか?

不運なことにカレンがいなくなったあとの世界を僕は知らない。







二週目に入った。観覧車はまだ止まらない。まだ時間はある。

なら問おう……、

彼女がいなくても。世界は果たして回っているだろうか。

……回っているだろうか?

嘘だろ、そんなこと考えて生きてんのかよ。

それで、人生楽しいのかよ。楽しくないだろう?

なんでこんな寂しい気持ちで終わらなきゃならないんだ。

言ってみろよ。


「言ってみろよ、カレンッッ!!」

「何をそんなに怒ってるんです?……、洋太くん?」

あくまで冷静に尋ねる。

……つまり、彼女は『自分が消えることになんら関心を抱いていない』!?

「じゃあ、あれはなんだったんだ。最後まで変わらず凄そうっていうのは?」

僕は立ち上がる。ゴンドラは少しだけ揺れた。


―――「それが“答え”だと思ったから……」


実に平坦に、凄惨に答える。僕はへなへなと座り込んだ。

……あれだ、マニュアルなんだ。

彼女の受け答えは“全て”。

こんな、ロボットみたいな奴をどうすれば未練なんか残せずにこの世から去らせるんだ………?

無理ゲーだろ。クリアなんて無理なんだ。無理難題だ。元々、未練なんかないんじゃいのか。


なんて、……面倒。


考えれば考えるほどに答えは出てくる。でも全て間違っているようで、不安で頭がおかしくなりそうだ。


建て直そうとしても、答えは意味不明なものとなった。


馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!?

『「あの子はまだ、なにもできてないよ……っ??」』だとっ!?

「何かしたいわけじゃない」の間違いなんじゃないのかっ!?


クリアなんて、クリア……なんて………、


「…………」……………、


――――フシミ ショウタ――――


てめぇはどこにいるんだ。

お前は本当にこの少女の心を開けたのか?

だとしたら、かなわない。

きっと、この世界にいないアイツを尊敬する。

いない、なら。

……演じるしかないだろう?

フシミ ショウタを。

僕の中に別れた片割れを、演じきる!!

「……なあ、カレン会いたいやつはいないか?」

気づけば、僕は唐突にそんな事を口に出していた。

「………っ??」

彼女は驚いたような顔をした。

その直後、顔を崩す。こいつバカなんじゃないのか?……そういう目付きだ。

ああ、そうだ。バカになれ、それでも、考え続けるんだ。

「フシミ ショウタ。それが私が会いたい人の名前……。……でも、」

外を物憂げな表情で眺める。

「でも、いない。とか言うんじゃないだろうな?」


……いる。僕は言った。


「嘘だ。嘘よ。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘ッッ!!アイツはいないッッ!!」


――――だって!!


――――「もう、会え゛ない゛っ!!」


焦燥感に心臓が刈られたような叫びだった。

それが、望みか。

それが、願いか。

全てを奪われた、録な人生歩んでこなかったお前の『やり残したこと』か。

――立派なもんじゃねぇか。

僕なんか、テストの点数で一々悩んでんだぞ?

「言いたいことがあるんじゃないのか。なら、言えよ!!吐き出せよ!!話してくれよ!!」

伝えたいんなら、伝えろよ!!


今は僕がアイツだ。


――――フシミ ショウタだっっっ!!!!


「」



三週目に入る。くるくるくるくる。回る回る。


  ………  …………………   ……………   ………………  …………………  なんだそれ、……  ……   …………… ………  …………………  なんだそれ、……  ……   ………  ……… ………  …………………  なんだそれ、……  ……   ………


私は睨み付けた。あの人を演じられるのが許せなくて、声が似てるだけで、笑い顔が似てるだけで、性格が似てるだけで、立ち姿が似てるだけで、文字の書き方が似てるだけで………


アイツを語るな。お前じゃないんだ。お前じゃないん……


「………くそぉ、」


なんか、泣けてきた。バカが、変なこと言うから。


「……………」


………でもさ、叶うなら、とか思うときもあったよね、そんな幻想を想うときも……あったよね?


「…………じゃ、あさ、」

後悔なんてしていないと思ったけれど、結構辛いんだなぁ……


「……じゃあさ、」



「――ずっと一緒にいてよ!!……離れたくないよ、離れたなんか、なかったよぉ……っっ!!」



彼は、笑った。



「……わかった。僕は君と一緒に居よう。一緒に、生きて見せよう。」


と、彼は即答で軽々しく頷いてみせた。そして私の頭を抱き寄せる。彼は泣いているように見えた。

…なによ、へんなの。

こんなにも、あったかいなんて…


「……………これで、安心、かなぁ」

あぁ、なんか、眠いな。

睡魔が襲ってきた。


「おやすみ、『ショウタ』」


私は、目を閉じた。


「おやすみ、『カレン』」


―――今日はよく、眠れそうだ。






20●●年●●月●●日


これを書くのも随分と長く間が開いてしまったけれど、日記ではなく週記みたいなものだけれど、そんなことはどうでもいい。

尺が短いので巻かせて貰うとしよう。

まずは裏戸のこと。

アイツ、うちの学校に転校してきたのである。

『今日からここ鼻多可山高校に入学しました裏戸可憐です。よろしくお願いします。』自己紹介、第一声がそれだった。

『はい、よろしくー。じゃあ、富士のとなりに座りなさい。』

うちの学校の名前がそんなことにもビックリだし、なんでよりにもよって僕の隣の席なんだよ。しかも、シトミはこのことを最初から知っていたようで、しれっとしていた。

始終、あの、聞いてないんですが……、って感じだった。

後は、僕を名前で呼ばないでほしかった。というか、前まで呼んでなかったろ………

みんな、転校生という言葉が大好きなのかキャーキャー言ってたけど、野郎共に放課後シバかれたからな。

まあ、もうみんなと馴染んでるようだし、良かったな。

次はシトミ。

あれから、遠慮がなくなったというか、妥協しなくなったというか。裏戸との仲が良くなり過ぎて、なんか企んでいるような気もする。

両親との団らんも回復したようなので良かったな、

でもなー、最近毒舌きついよなー、そういう遠慮のなさはいらないんだけどな……

『おはよう、毒虫。』

て、一瞬誰に言ったのかわかんなかったからね。

さて、三番手は村雨だ。

今は留置所から出て、どっかの大学の生物の教授やってるらしい。

で、風の噂だが、裏戸の保護者やってるとか風の噂で聞いた。

裏戸は彼を『おじ様』とか呼んでいるようだ。確かに『おじ様』みたいな顔してるように思えるな。

たまに旅行のお土産とか持ってきてくれる、……ありがとさん。

そして、最後。

―――僕。

僕は………、何か変わったろうか、あの事件を経て。

周りの人間は自身の人間性を変えることなく、それぞれに何らかの成長をしているように見える。

なんだか、実感がないんだよな……。

これから、どうなっていくのだろう。……わかったもんじゃないけれど、それでも時間は進んでいくのだ。やはり、普遍である。変わらないのである。


だから、僕は僕であり続けようと思う、だから疲れたときは、言ってやるんだ。

「面倒だなぁ…」と。




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