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訪問者

性的不愉快な描写があります。苦手な方はバックしてください。(R15)

 家に帰った千花は明日のお弁当の下準備を始めた。

 また明日学校へ行かなければいけないと言う事実に気が重くなるが、今日あまり話したことのない子が「明日から一緒にお弁当食べない? 」と声を掛けてくれたのだ。



(ちょっと気合入れて、おかずを豪華にしちゃおうかな? それで「千花ちゃん、お料理上手~」なんて誉められちゃったりして。うししっ)



 そんなことを考えながら台所に立っていると、部屋にチャイムの音が響いた。時刻はまだ4時を過ぎた頃で、辺りはまだ明るい。


(それなら単に普通に配達員とかかもしれない)


 そういえばと、数日前にインターネットで野生美溢れる狼の写真集を注文していたことを思い出した。

千花は少し緊張してインターホンの通話ボタンを押した。


「はい」


 そうして、元気に「○○運輸です~」と返ってくることを期待した。

しかし、スピーカーから聞こえてきたのは、



「桐山君? 僕だ。沼田だけど、ちょっと開けてくれないか? 」



 千花は苛立ちを隠せなかった。

この男は仲良くないのについに家まで来るなんてと。



「・・・・・・どうして私の家の場所まで知ってるんですか。もしかして夜中にチャイムを鳴らしに来るのって、先輩ですか? すごく迷惑なんですけど」



「何の事だ? 僕は夜中にここへ来たことなどない。僕はただ、桐山君が学校で嫌がらせに遭っていると聞いて心配で・・・・・・」



必死に言い募る沼田の言葉に嘘はなさそうだった。しかし、千花はここで敢えて突き放す言葉を選んだ。



「ご心配ありがとうございます。でも、先輩には関係ないことですので、帰ってもらえませんか。自分の事は自分で何とか出来ると思うので」



 そう言い切って通話を切ろうとした。なんて言うか、既に沼田という先輩は千花の中で油断できない要注意人物になっている。このストーカー滲みた男に心を開いて相談に乗ってもらおうという気にはとてもなれない。



「そうじゃない。僕が君のことを一番に解ってあげられると思うんだ。その不安や寂しさも。僕も君と同じで、小さい頃から親に放置されている。僕以外に君を解る存在はいない。仮初めの友達も、建前だらけの先生も、決して信用できない。そう、僕には前から解っていた」



恍惚と語る沼田の言葉には違和感を覚えた。


(私はそんなに孤独なのだろうか。そんなに私を構って、不安定なのはむしろ沼田先輩の方ではないのか。確かに少し前まで私も不安定で、両親に見返りなしに愛される他の友人が羨ましかった。私個人を心配してくれるような誰かが欲しかった)




 今はどうだろう、と頭を捻る。

私の不安や孤独は人並み程度にしか思えない。それは根拠無く誰かが自分を案じている事を知っているのだ。


 ハウスキーパーの長谷川さんとは最近関係が良くなり、今日もお裾分けで作ったマフィンの感想とお礼の可愛いメモが残されていた。そんな小さいやりとりも心の拠り所の一つだが、今の確固たる自信に繋がっているかと言えば違う気がした。


(う~ん、誰だっけ。何かあったはずだ。何故思い出せないんだろう)


千花が一人考え込んでいると、スピーカーから痺れを切らしたような沼田の声が聞こえる。



「桐山君。聞いてる? それでさ、身の程知らずのブス共の対処なんだけ なんだお前、グァッ・・・・・・」



 沼田の話は突如、途切れた。千花はその後インターホンに向かって何度も呼掛けたが何の反応も返ってこない。



(もう~迷惑だなぁ)



 そう思いつつも、そのまま放置するなどできない。何が起こったのか確認しなければと言う気持ちが占める中、千花は自分が何かに期待して心臓がドキドキしていることに戸惑う。

 誰か特別な存在が早とちりをして、しつこい先輩を追い返しているようなデジャヴを感じたのだ。



(こんなこといつかあった気がする)



ホームセキュリティーの警戒を弱めて、鍵を開け玄関から顔を出す。



「先輩、どうしたんですか? 帰ったんですか? 」



キョロキョロと見回すと、門のところに横たわる学生服の足が見えた。


(もう、あのコってばきっと勢いよく飛びついたのね! )


自然と笑みが浮かんでくる。



「噛みついちゃ駄目だよ! 」



 そう言って千花は門へと走り出す。門の簡易錠を開けて隠しきれない笑みを向けると、そこには予想外の男の姿に笑顔が凍り付く。男の足下には頭から血を流しピクリとも動かない沼田先輩が倒れていた。




「えっ、お父・・・さん? 何が・・・え? 」


「あぁ、千花。久しぶりに会いに来たら、門前にこの少年が倒れていてね」



 そう言われて尚も誰かの姿を探し、千花は周囲を見渡す。

お洒落なスーツを着た男は柔和な笑みを浮かべ、ネクタイをゆるめポケットからハンカチを出し汗を拭いている。


「それより救急車呼ばなきゃ!」


頭が混乱気味だった千花はやっと今何をすべきか思い付き、急いで家の中へ戻った。


(この場合は119番押しちゃっても良いんだよね)


玄関で乱暴に靴を脱ぎ捨て、リビングにある電話へ向かう。

千花が受話器を取ると、なんだかいつもと違う音がした。アレ?と思いつつも三桁の数字を押し、応答を待つも受話器からは呼び出し音すら聞こえない。

一度受話器を置いて、もう一度試してみたが結果は同じだ。


(あんまり使わないから、壊れちゃったんだろうか。携帯電話なんて持ってないし。もう急いでいるのに・・・・・・)


次の瞬間、おそらく父親が携帯電話を持っているであろう事を思い付く。



(そうだ、お父さんに借りよう)



そこまで考えて、ある疑問が浮かぶ。第一発見者である父親は何故すぐに救急車を呼ばなかったんだろうと。


「この家も随分と久しぶりだな」


父親の声は千花のすぐ後ろから聞こえた。

背筋をジワリと冷たい汗が流れていく。


「この家の電話壊れちゃったみたいで、携帯電話貸しもらえませんか」


男はネクタイをはずし、上着を脱いだ。普通の家庭の父親が仕事帰ってきたらいつもそうするような仕草で。


「いや~、うっかり会社に携帯を忘れてしまってね」


門前では沼田が血を流して倒れているという事なんか気にもとめてないような笑顔で言う。何故この人はこんなにも落ち着いているのだろう。



「じゃ、じゃあ私、ちょっと近所の人に電話借りてくる」



そう言って玄関に向かおうとした千花の腕を男は咄嗟に掴む。「どうして? 」かろううじて発したか細い声は僅かに震えていた。男は千花をソファーへと誘導する。



「ここへは時々酔っぱらって何度か来ていたんだけどね。この間偶然君に会った時は驚いたよ。麗花とまさに瓜二つじゃないか」


そう話す男の声はやや興奮していた。麗花とは千花の母親の名前だ。

真夜中にチャイムを鳴らす犯人はこいつだったのか。



「それより救急車を呼ばなきゃ。沼田先輩が・・・・・・。」


「あぁ、あのストーカー男か。そんなの千花は気にしなくても良いんだよ」


この状況でにこりと笑う男に狂気を感じゾワリと鳥肌が立った。しかし、普段放置気味とはいえこの男は自分の父親だ。先輩をストーカーと勘違いして思わず手が出てしまったのかもしれない。


「あの人は学校の先輩でストーカーじゃないです」


その言葉は、とりあえず落ち着いて正しい判断をしてもらいたかったから出た言葉だった。しかし、父親はそれに激昂し千花をソファーへ押し倒した。



「何故アイツを庇う?! そうかあの男とお前は付き合っているんだな。お前はハジメテを余所の男に捧げたのか?お前の母親と同じように!!」



 顔を真っ赤にした男は強い力で千花の両腕を拘束し、馬乗りになってソファーへ体を押し止めた。千花は何が起こったのか分からず混乱したまま声を上げる。



「何を言ってるの?付き合ってなんかいないわ。ば、馬鹿じゃないの!そんな事を娘に聞くなんて! 」



これが精一杯の強がりだった。千花は内心否応無くのし掛かってくる大きい体に、びくとも動かない腕力に怯えていた。

 男はその恐れを見通したようにニヤリと笑った。



「お前は正確には娘じゃない、麗花の連れ子だ。だから将来結婚だって出来るんだ。しかし、結婚するまでは「お父さん」と呼ぶことを許そう。どれ、お父さんが千花の処女がまだ無事かどうか確認してあげよう」



男は千花の両腕を片手で一纏めに持ち直すと、空いた片手を制服のスカートへと伸ばした。





「いやぁああっ!」






涙まじりの悲鳴に男は嗜虐心を煽るだけだった。





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