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終末世界の解析者(リコンストラクター)~現代ダンジョンに滅ぼされた世界で最強クラフトスキルを駆使して送る、快適楽園スローライフ!~  作者: はむかつ
4章『俺の手を汚す必要はないよ』

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36 正義のヒーロー

「グボオォオオォォッ」


 体育館の入り口にいるグレート・ボアはひと際大きい声で嘶くと、3人めがけて突進した。

 3人が1mほどの高さのステージに上ると同時に、グレート・ボアの突進を受けてステージ全体が大きく揺れた。


 ズドドドオォォォン


「きゃあああ!」


 衝撃で壁まで吹き飛ばされる3人。

 ステージの一部が破壊され、そのがれきの山を踏みながらグレート・ボアがこちらを威嚇する。


「なぁ、ちょっとした提案があるんやけど……ウチの案に乗らへん?」

「え、提案って……?」


 ジュエリがグレ-ト・ボアから視線を外さずに言った。


「あそこ、壁際の中央に避難用の梯子があるやろ? あそこから2階の応援ゾーンへ登れるやん。そこなら安全やからさ」


 そう言って指をさすほうを見ると、確かに壁に沿って設置されている鉄製の梯子があった。

 この薄暗い中でそれに気付いたジュエリにアリサは素直に感心した。


「せやからさ、ウチがオトリになるから、一人ずつこっそりあの梯子に登っていくん。いい案やろ?」

「オトリって……そんなのダメだよ」

「いやいや、別に犠牲になるつもりはないで? 全員あそこに登るまで一番元気な人が注目を集めとったほうがええやろ? 二人とも疲れとるやろうしさ」

「それを言ったらジュエリもでしょ?」


 ミナの反論にジュエリは笑顔で言った。


「ウチは二人を守るってユウっちにも約束したからなぁ、大丈夫、3人揃ってユウっちを迎えに行こ。心配いらへんて」


 その決意の固さにミナはようやく折れた。

 ジュエリが少しずつステージ脇にグレート・ボアを誘導する。

 それに合わせてアリサとミナは反対方向へ移動、いつでも走り出せる体制をとる。


「さぁこっちやで、なんや、ウチが怖いんか!」


 その声に反応したのか、グレート・ボアがジュエリに向かって突進した。

 ジュエリは瞬時にそばに垂れ下がっていた垂れ幕を掴むと、グレート・ボアを包むように横へひらりとかわす。

 それはまるでスペインの闘牛士を思わせる動きだった。


 ブチブチブチッ!


 グレート・ボアは垂れ幕を引きちぎりながらステージ脇の壁へ激突する。


 ズゴゴゴゥッ


「今やで! 走れ!」


 ジュエリの声に反応してアリサとミナがステージから飛び降り、はしごめがけて走り出した。

 グレート・ボアは顔に巻き付いた垂れ幕を引きはがそうと首をブルンブルンと振っている。


「あちゃあ、そんなに時間稼ぎにはなれへんかったか……」


 ジュエリはそう言いつつ、自分もステージを飛び降り、ミナの後を追う。

 前を見るとアリサがはしごに辿り着き、登り始めている様子だった。

 間髪入れずにミナもはしごを掴む。


「はよっ、はよっ!」


 ジュエリが後ろを振り向くと、グレート・ボアの巨体がすぐそこに迫っていた。

 その時、無理に振り向いたことでバランスを崩したジュエリは足がもつれ、その場に転んでしまった。


「あ、これはあかんやつや」

「ジュエリ、後ろ!」

「あはは、これは万事休すってやつやな……」


 ドッドッドッドッ スザザァァ


 グレート・ボアの巨体がジュエリの身体に覆い被さろうとした瞬間、その動きが止まった。

 目をつぶっていたジュエリが恐る恐る目を開けると、目の前にグレート・ボアの巨体、そしてそれを受け止めた男の後ろ姿が目に映った。


「ガハハ、どうやら間に合ったようだな」

「ダリオ!」


 上からミナの声が響く。

 二本の牙を両手で受け止めたダリオは、捻るようにその巨体を放り投げた。


「どっせいっ!」


 ズドドォォン!


 横倒しになるグレート・ボア。

 間髪入れずに間合いを詰めると、ダリオは力を込めた渾身の一撃を放つ。


ダアァァァァン!


 眉間に一撃を食らったグレート・ボアは、その場でピクピクと痙攣するしかなかった。


「大丈夫かい? お嬢さん、こんなとこにいちゃ危ないぜ?」

「なんやねん、そのセリフ。せっかくカッコいい見せ場やのに力抜けるわ」

「ガハハハ、ゼッドが好きな『侍ガードナー』のセリフだ。一度言ってみたかったんだ」


 そう言って豪快に笑った。

 アリサとミナもひしゃげたはしごから飛び降り、ダリオのそばへやってきた。


「ゼッドさんも来てるの?」


 ジュエリの様子を見ながら、アリサが尋ねた。


「ああ、校庭にもう一頭いたようでな、そっちに向かってるぜ」

「それにしても、ええタイミングで入ってきたな、ホントにヒーローかと思たわ」

「まぁ実は迷子になってこの辺を彷徨ってたんだがな。男の悲鳴を頼りに辿り着いたってわけだ」


 魔獣が入り込んで騒ぎになったことで、ようやくこの場所を探り当てられたようだ。

 先に出発した割には迷子になっていたと聞き、シュエリは思わず噴き出した。


「間抜けなヒーローもいたもんやな。でも助かったで、ほんまありがとうな」

「気にすんな、お前らには美味い野菜を作ってもらってるからな、適材適所よ」

「帰ったらもっと畑を増やしてたくさん採れるようにしなきゃね」


 安心して少し穏やかな空気が流れた。

 外では変わらず男の悲鳴や怒号が飛び交っている。


「さてと……」


 ジュエリが立ち上がった。


「ダリオ、二人を守っててや、ちょっと表見てくるわ」

「お、おい、大丈夫かよ……」

「危ないよ、みんなでここに居ようよ」


 ミナの問いかけに、ジュエリは振り返って恥ずかしそうに頭をかいた。


「実はな、ちょっと会いたい人がおってん。なぁに、すぐ終わるさかい、ここで待っとってな」


 そう言い残してジュエリは体育館を出ていった。

 辺りは月が出たことで、懐中電灯がなくても歩き回るのに不都合はなかった。


「さぁて、ユウっちはどこにおるんやろ」


 ジュエリは物陰に隠れながら、漠然と木造校舎のほうへ向かってゆっくり進み始めた。

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