その十二:エルフ罪
みなのいる場所へ、闇夜部隊が進んでいく。私一人では止められない……誰一人……止めることはできない。
「マルディリア姉様……みなに……なんの……なんの罪があるのですか」
「エルフ罪」
エルフ……罪?
「は?」
まさか、エルフであること自体が罪だとでも…………。
「ああ、あなたは知らないのね」
「なに……を」
「教えてあげるわ、あなたが領民としたエルフはかつて人間を襲っていた。その罪を赦してもらうために、王家に若くて美しいエルフを差し出したの。元々美形の多いエルフの中から、さらに選りすぐった一級品をね」
知ってる……。だって、リューズライトさんが教えてくれたから。
「だから、罪は……赦されたのですよね?」
きっと、仲間を差し出すことは、我が身を斬るよりもつらい決断であったはずだ。きっと、自らを差し出したエルフたちの勇気は美しかったはずだ。
「王はお怒りになった。仲間を犠牲にしてまで生き残ろうとする浅ましい種族などを赦していては、世界平和が成り立たぬと」
「それはちがう…………でしょう。そうしなければ、エルフは絶えてしまう。だから――そうするしかなかった。彼らは、それほどに」
「その証明は誰がしてくれるのかしら?」
「証明って!」
証明などしなくとも、エルフが不当に弾圧されていたことは明らかでしょう!
「さて、話はおしまいよ」
「姉様!」
「マルディリア・レス・ドラゴの名において決定する。我が妹、タキプレウス・トリデンタトゥス・トリオプス・カンクリフォルミスより貴族権をはく奪する」
貴族の身分は、はく奪されないはずでは?
「それも……エルフ罪ですか」
「そうよ。エルフに協力した貴族は、特例として身分をはく奪できることになったの。偶然にも、今日からね」
「今日……」
そこまでして……私を。
「ただし、これには条件があってね。権利ある一人の貴族として認められる十五歳以上の者にしか適用されないのよ。十四までは、再教育のために保護する慈愛法の対象となってしまうから」
ああ、そうですか……だから姉様は、私が十五歳になるまで待っていてくれたのですね。
「マルディリア姉様、ここに兵をほとんど残していないようですが、大丈夫ですか?」
嗚呼、罪人として斬られていくエルフたちの断末魔が聞こえてくる。距離はわりと離れているのに、本当に良く聞こえてくる。
「大丈夫よ。ここには、あなたと、さっき死んだあなたの兵の死体が一つだけ。仮に、あなたが私に魔術を仕掛けようとも、実力差で通らない。恐れることなどなに一つないわね」
姉は、馬鹿ではない。間違いなく、周囲に私の仲間が潜んでいないことは捜索済みだ。
「マルディリア姉様は……私をどうするつもりですか」
「もちろん殺すわよ。あなたみたいな性格をした人間は、生かしておくと危険なのよ」
「…………」
「それに、邪魔でもあるわ。我が王の、世界を平和にするための戦いの」
「なにが世界平――あっ」
私は、斬られた。
姉に、腹を真横に斬られたのだ。
「うあ……」
内臓が零れる感触があって、視界が暗くなった。そうか、私はうつぶせに倒れたのか。
「ふふ、やっと殺せたわ」
ああ、残念だったな。
私がもっと強ければ、私がもっと権力をもっていれば。
「あなたが産まれてからずっと、この日を待ってたのよ? 長かったわ、十五年も」
体が動かない。
隣に倒れているカウィーソさんの顔を見る力も……出ない。
「さようなら、我が妹タキプレウス。惨めな人生だったわね」
手を伸ばして……手をつなぐこともできない。
カウィーソさんのこと、
が……………………
だい……………………すきなのに。




