俺氏、やっぱ死ぬ!?
頭上でけたたましい音が鳴り響く。ガラスの破片が部屋中に飛び散った。
「何をしている、景!!!」
「ああああああああああ!! 邪魔を、するなああ!」
「もう少し早く気づければ……!」
少女の声が、遠くに聞こえる。薄らとだけ開いた右眼の視界のその端にぼんやりとタキシードを着た赤い髪の少女が見えた。髪が長い。
何か言い争っているらしい。目蓋が重くなって、身体の力が抜けていく。少女の声が段々と遠ざかり、聞こえなくなった。
部屋には、血を流して倒れる青年と、彼を挟むようにして対立する2人の少女がいた。
「舞イイイィ!!! 誰を射ってると思ってんだよおおお!!?」
景は左腕を抑えながら喚く。その指の隙間からは鮮血が滴り落ちる。
「それはこちらのセリフだ、景。独断先行したかと思えば……この有様だ!!!」 舞と呼ばれた赤い髪の少女は銃を構えた腕を降ろした。舞と景は顔が瓜二つである。
「だって! それは、コイツが生意気な態度をとるから、霊長様の後継には到底相応しくないと判断した上での判断で判断したんだ!」
「生意気なのはどっちだ、バカ景! とにかく、今は理人様を早く……」
「チッ……」
理人の額に合わされていた照準は、舞の出現と発砲によってに彼の頭部の左側に逸れた。 舞は屈んで、理人の容態を確認する。
「息はまだある。……かろうじて脳は避けたらしいな。だが、眼球が損傷しているのか」
そのまま彼女は耳元の無線を入れて、外に待機している部下に繋げる。「タンカーはあるな? それから、すぐに車を出せる準備を」
「……ああ甲斐甲斐しいこと! 私と違ってお姉さまは優秀ねえ」 その様子を立って見ていた景がぼやく。
「皮肉を言い合っている暇は無い。人も集まりだす前に立ち去らないと」
「殺さないの?」 景は、にゅうっと口角を上げる。
「殺されたいのか?」 舞は視線を理人から外さない。
「別に……」 景は拗ねたように動かなくなった左手を弄ぶ。
「実の妹を、そう簡単に殺せるものか」
扉が開く音が聞こえて、数人の武装した人間がタンカーを持って踏み込んでくる。そっち側は、お前が、こちらは私が持つ、絶対に揺らすなよ。慎重にな。また指示を送る舞に景が独り言のように呟く。
「……舞は、何とも思わないワケ?」
「何がだ?」
「こんな低俗な人間に仕えるだなんて」
「霊長様の、最後の命令だ」
舞がまた指示を出す。「一応、それも拘束しておけ。どうせ何も抵抗はしないだろうが」
舞がようやく景と目を合わせる。
「例え、この男がどんな人間であれ、霊長様のお言葉通りに、私たちは、彼に仕え、お守りし支えるだけだ。そう、全ては霊長様のお言葉通りに……」




