行く年来る年10
(そもそも、私と悠はどういう関係なんだろう……)
再び頭を上げた時に一緒に浮かんできた疑問。
しかし同時に頭の別のどこかではその疑問それ自体への疑問が浮かんでいる。
(いや、同居人であるという事は分かっている。だがなんというか……何と言うのだろうな……)
名目上は同居人で、仕事中は同僚ということになる。
だが自分の考えている事はそれだけではない。それをなんと表現していいのかは妖刀自身も分からないが。
(世間から見たら?いや、世間からも大体同じものだと思われているだろう。悠が……悠が私の事をどう思っているか……?いや、そういう事なのか?)
幾つもの仮定が現れ、その度にしっくりこないながらもあてはめていく。
そしてその最中に突然思い出す昼間のやり取り。
――本当に仲良しなのねぇ。
昼間、誰だかの奥さんが言っていた言葉。
そう、仲良しなのは事実だ。多分。
悠とは仲良くやっている。時々喧嘩というか小競り合いと言うかをすることはあっても、大概半日と続かない。
だが、それを悠はどう思っているのだろう?
ただの同居人?同僚?それとも――。
「やめやめ」
妖刀は堂々巡りする思考を打ちきり、勢いよく浴槽から立ち上がった。
大きく波立った水面から上がると今度こそ頭の中も洗い流すように湯をかぶってシャンプーをつけ始めた。
「あがったぞ」
それから少しして、しっとりと濡れた髪をタオルで包みながら、ついさっきまでの自分と同様に居間でテレビを見ていた悠に声をかける。
「よし、じゃあそろそろ、ささやかだけど――」
いつの間にか冷蔵庫から出された大皿が、食器類やグラスや大小の酒瓶やらペットボトルやらと一緒に炬燵の天板に並べられている。
思えば昨夜の蕎麦以降は何も食べていないのだ。風呂に入って少し目が覚めたとなれば、空腹を思い出すのも道理だろう。
「待たせたな」
入浴後のあれこれを済ませた妖刀が居間に戻る。風呂上りに身に着けている白い浴衣のせいか、本当に幽霊にも見える。
その向かった先の居間では二人分のグラスにそれぞれビールと烏龍茶が注がれていた。
「オッケー。じゃあ、改めて――」
待っていましたとばかりビールの方のグラスを持った悠。
妖刀が烏龍茶の方を持って対面に座るとお互いのそれがチンと音を立てる。
「「あけましておめでとう」」
ささやかな新年の祝い。
妖刀の用意したおせちに悠の箸が伸びる。
「うん。美味しい!そういえば、妖刀ちゃん烏龍茶で良かったの?」
「ああ。私は飲めないから」
去年も同じやり取りをしたため同様に注いでいた悠だったが、酒飲みと言うのは一般に酒が飲めるならその方がいいと考えがちだ。
妖刀本人も良く分からないのだが、自分は下戸だという事は何故か知っていた。
沢山の記憶と同様に自身の身体に関する事も記録として残っている。その中に、酒は一滴も飲めないというものが存在しているのだ。
「意外だよね。なんか強そうなのに」
「そうか?」
そんなやり取りをしながら、悠の箸は進む。
大皿に盛られていた料理の大半が片付いた頃には、グラスの中身はビールから自作のウーロンハイに変わっていた。
(つづく)
投稿遅くなりまして申し訳ございません。
今日は二本立て




