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あやしの神社の反魂さん  作者: 九木圭人
行く年来る年
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行く年来る年8

 「後は片付けか……」

 悠が独り言のように呟いて目の前の光景を見る。

 散乱したコップと皿。転がる一升瓶――特設した飲み会場兼仮眠所。普段でも少し面倒に思う程の散乱ぶりだ。

 「まったく……今年もやってくれるな」

 それを受けて溜息交じりに吐き出した妖刀。実感のこもったそれは去年の今日と変わらない。


 その言葉を聞いて悠はちらりと妖刀の方を確認する。

 彼女が考えている事が自分と同じだと――幾分かの期待も込めて――推測し、疲れた顔を明るく作りながらの提案。

 「いっか今は。先にちょっと寝よう」

 流石に今からこれを全て元通りにというのは中々に骨が折れる。

 「ああ……そうだな」

 推測は見事に的中していた。

 「今日は仕方ない」

 そう付け足すと、妖刀は社務所を施錠し適当に一枚布団を抱えて居間に向かう。


 悠も同じように後を追う。

 「うん。仕方ない」

 同じように呟いて。


 炬燵を挟むように敷かれた二枚の布団。二階に上がって本格的に眠るのではない――というか今はその為に階段を昇るのすら面倒に感じてしまう。

 あくまで仮眠だ。流石に切れ切れの休憩時間に少しまどろむだけでは足りない。後片付けをする前に少し休んでおかないと体が持たない――そう自分に言い聞かせておく一環として。そうでもないとそのまま明日の朝まで眠りつづけそうな気がして。


 と、自分の中の面倒さに言い訳しながら居間の窓の分厚いカーテンを閉めて照明を消す。


 「おやすみ」

 「おやすみ」

 サバッと布団が音を立て、まだかすかに温もりがある中に体を潜り込ませ目を閉じると、ほとんど時間をおかずに二人の意識は暗闇に消えていく。

 世間が正月ムードに包まれ、挨拶代りにおめでとうと交わす頃。二人はようやく眠りについた。


 それから数時間後。

 カーテンの隙間から漏れるオレンジ色の光り。初日の出ならぬ初日の入りを目前にした時間にもぞりと布団が動いた。

 死んだように動かなかった悠。その腕が布団から這い上がり、休憩時間管理の為に炬燵の上に置かれていた時計を探して彷徨う。


 「うーん……」

 探し当てた時計を見る。

 暗くなった室内と蛍光塗料で光る二本の針は寝起きの目にも優しい。

 「時間か?」

 「うん。そろそろ起きようか」

 炬燵の向こうの声に応えながら体を起こして伸びを一つ。

 まだ気怠いが、起き抜け特有のそれも相まっている。少し動けば目も覚める――毎朝の経験。


 「よし、やっちゃおう!」

 自分に活を入れるように声を上げ、同時に立ち上がると暖房を切って久しい部屋の空気に思わず身が縮こまる。

 同じように起き上った妖刀に続いて、朝と変わらない社務所に向かう。


 それから片付けを始め、空き瓶を纏めてごみを分別し、布団を全てしまい終わった頃にはとっぷりと日も暮れ、世間ではもうそろそろ風呂なり夕食なりの時間になっていた。


 「よし。終わりだね。今度こそお疲れ様」

 「お疲れ様。じゃあ、私は風呂入れてくる」

 そう言って奥に引っ込む妖刀を悠が追いかける。

 と言っても風呂に入る訳ではない。新年最初のお勤め=保管庫の祈祷をまだやっていない。


 「向こうは冷えるぞ」

 振り返らずにそう言って、妖刀は洗濯籠からどてらを取り出して悠に渡す。

 「まだ洗っていないが、あと一回ぐらい着ていけ。今日の分と一緒に洗うから」

 「ありがとう……フフッ」

 受け取ったそれに袖を通しながら思い出したように悠が笑う。


 「本当に、良いお嫁さんになりそう」

 「ッ!!?い、いいからっ!早く行って来い!」

 何故自分が動揺しているのかよく分からないまま、妖刀は悠を保管庫に急かして風呂場に籠った。

(つづく)

今日はここまで

続きは明日に。


明日はもうちょっと遅い時間になると思われます。

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