行く年来る年5
「「え、えっと……」」
お互いに言葉に詰まる。
(……いや、そっちが詰まるのはおかしいだろ。そもそもここに来た時点で折り込み済みだろ。というかよく来られたな)
気まずさの理由を心の中で相手に押し付けながら、何とか平静を装おうとする妖刀。
「あけましておめでとうございます」
「お、おめでとうございます……。あのっ――」
何かを覚悟するような一瞬の間。そしてそれが終わった事を表すようなその続き。
「はい」
「えっと……学業成就のお守りを……」
だが本当に伝えたいことを、或いは伝えようとした事を言葉にするには少し足りなかったようだ。
その意志がそうなっていくことを表すように徐々に萎んでいく声は、周囲の喧騒の中で辛うじて聞こえるぐらいのものだった。
「学業成就御守りですね。500円お納めください」
そしてその様子と注文が却って妖刀に冷静さを取り戻させた。
いつも通りの巫女の口調に戻る。
(ああそうか。そういえば今年受験だったな)
ピカピカの500円玉を受けとり、展示している中から紫のお守りを取出してピッタリくらいのサイズの紙袋に入れながらふと思い出す。
この町に綾篠神社の他に神社と言えば、こことは反対の町の端にあるだけだ。
ここよりは大きいものの、この辺りの者がこの時間寒空の下歩いていくには少し骨に思うぐらいの距離はある。
そこまでの手間をかける位なら、電車なりバスなりが動いている時間に他所のもっと大きい神社にいくだろう。
その時ふと、境内の向こうからこちらを見ている集団を発見した。
彼女と同じぐらいの年頃だろうか。三人の少女たちが参道を挟んだ向こう側で一塊になってこちらのやり取りを見ている。
直感:お節介な友情もあったものだ。
もし目の前に人がいなければ溜息の一つもつきたいところだった。
相手の顔を見ると、恥ずかしそうにしながら苦笑を浮かべていた。
「お待たせしました」
お守りの入った紙袋を手渡す。
ほんの一瞬二人の指が触れ、静電気のようにびくりとそれらが動く。
「「あ……」」
一瞬、あまりに長い一瞬。
先に動いたのは妖刀だった。
「……頑張って」
「……はいっ!ありがとうございます」
他の誰にも聞こえないような小さな声のやり取り。
だが、それだけで二人の再会は十分だった。
「お知り合いですか?」
いつの間にか応対を終えていたバイトが仲間の元に去っていく少女の背中を見ながら尋ねる。
「えっ、ま、まあ……」
去年失恋させてしまった相手――とは、当然言えない。
「去年ここを手伝ってくれた子……だね」
取りあえずそうとだけ説明しておくが、それでも彼女の気を惹くには十分だったようだ。
「あのっ」
「なに?」
ついさっきと同じような展開。
ただ彼女は先程の彼女より踏ん切りがつきやすかったようだ。
「ここのバイトが終わってからも……ここに来てもいいんですか?」
「うん?まあそりゃあ勿論……。というか、お客さんとして来てくれると私達は助かる。経済的に」
その答えに、彼女の手が机の下でキュッと握られた事も、彼女が小さく「巫女長と……」と呟いた事も、妖刀は確かめる前に破魔矢を求める客の対応に戻っていた。
(つづく)
いつも投稿時間が不安定で申し訳ございません。
次回は多分今日の夜か、日付変わった辺りに




