修羅場!?
……不規則な生活。
勇者は剣を取った。
魔王と闘う時は素手だった勇者が剣を取った……。
……その闘争心、魔王と闘う時に見せろよ。素手とかバカだろう。
対するノワールも剣を変な持ち方で握っている。あの若さで死んでしまうなんてかわいそうに。
「僕は剣を初めて持った」
……こういうのを死亡フラグと言うのだろうか?
もうだめだ。見ていられない。
「ちょっと待った」
私は決闘を中断することにした。
このままノワールが死んでしまうのはかわいそう過ぎる。
「ねえ、ノワール。遺言は何?」
「僕は勝つ。だから遺言は不要だ」
「勇者に勝つなんて無理だよ、今すぐ土下座して謝りな」
「嫌だ。僕は絶対に勝つ」
ノワールの目には不屈の意志が感じられた。
「あいつは魔王を左アッパーで倒した男なのよ」
それを聞いた瞬間、ノワールは剣を下した。
「……やめる」
「え?」
「やっぱり決闘はやめる」
「ここまで来たら闘えよ!こんなところで決闘をやめるなんてかっこ悪いでしょう」
「そうだな」
ノワールは、顎に手を当てて悩み始めた。
「決闘をやめるとかっこ悪いか……。じゃあ、代役を立てるというのはどうか?」
淡々とした声でこの男は信じられないことを提案した。余計かっこ悪いと感じるのはただの気のせいだろうか。
「代役……」
大体、ここって私を取り合って二人の男が真剣に決闘する場面じゃないの?修羅場に代役を立てるとか聞いたことない。
何かどんどん違う方向へ言っている気がする。そもそもこれは修羅場なのか。……あれ?なんか違うかも……。
「しかし、僕には友達がいない。リアくらいしか知り合いがいない。だから、僕の代わりにリアが決闘すると言うのはどうだろうか?」
ノワールは、さらりと信じられないことを提案した。
「全然よくないわよ。私に死ねと言っているの?」
「そんなことは言っていない。勇者はリアを愛しているだろう。
だから、君を殺したりはできないだろう。君が剣を持った時点で君の勝ちだ」
「そうね」
……確かに……。それが一番いい方法かもしれない。
「言われてみればそうだわ。剣を貸して」
しょうがない。私は、剣を持った。
そして勇者の前に立った。
勇者は、悲しみの色を隠そうともしたに声で宣言した。
「リアがノワールのために闘うだなんて。
俺を愛してくれない君を殺して俺も死ぬ」
「なんてことだ!」
「でも、リアと一緒に死ぬことは、ずっと俺の夢だった。
夢が叶うと思うとすごくうれしい」
「そんな夢持つなよ」
その瞬間、夢が叶うなんて全然、素敵じゃない。夢なんて叶わないまま終わるからいつまでも輝いて見えて素敵なのよ。
「さようなら、リア」
「違うの。私は勇者も愛しているわ」
「じゃあ、ノワールのことは本当にただの遊びだったの?」
「ええ、そうよ。あなたが本命なのよ」
くっ……。何で私がビッチみたいになっているの?
ああ、二股女になってしまった気分だ……。
「じゃあ、リアは俺だけいればいいよね」
「え……」
全然よくないです。むしろ勇者はいない方がいいです。
「ノワールは殺してしまっていいよね」
……これってあれじゃない?
ここでイエスと答えたらノワールが死ぬパターンで、ここでノーと答えたら私が死ぬパターンかもしれない……。
「うん、別にノワールを殺してもいいわよ」
ごめん、ノワール。
私は自分の命の方が大切だ。
勇者が舌打ちしてから魔力を使った。
ノワールが炎で包まれる。
けれども、炎が消えてもまだ生きていた。
「え?」
「僕には魔力が通用しない」
棒読み口調でノワールはそう言った。
「どうして?」
「王族だったから」
一部の王族は、魔力が通じないと聞いたことがある。
って、この少年は、王族だったのか。乞食みたいに見えるけれども。
「あなた、何者?」
「昔は、ブリトリア王国の王子だった」
「……王子……だったの。ブリトリアといえば滅ぼされたと聞いたことがあるけど」
「はい。僕以外の王族は皆殺しにされました。国も亡びました」
「お前も一緒に滅べよ」
「嫌です」
そして、次の瞬間ノワールは逃亡しだした。
「あ……」
勇者が必死で追いかける。でもノワールの方が、足が速そうだった。
魔力が使えなければ、近くにいないと戦えない。
だから、逃げてしまえばノワールの勝ちだ。
こうして命がけの決闘はただの鬼ごっこ化した。
夜が明けるまで続いたらしい。
(-_-;)




