受傷後4日目 ブツブツの襲撃
前書きの書き方がわからず、三話でやっと書けました;;
はじめまして。黒猫さんばと申します。
この小説が初の投稿作品になります。
未熟なところだらけかもしれませんが、ご愛読いただけたら嬉しいかぎりです。
それは突然私に襲いかかってきました……
『その歳になって“水ぼうそう”かょ』
目深帽子が笑っている。なんだか、こいつに笑われると腹が立ちます!
しかし……
こいつの言う通り、“水ぼうそう”が発症したのでした━━
今朝、
私は院内の騒がしい音で目が覚めました。
昨日は目深帽子との一件のせいで、なかなか寝つけませんでした。
奴に対する“怒り”やら“憎しみ”やら“悔しさ”が溢れてくるのでした。
しかし、
何故か彼が気になるのも、事実……かな?
私は腕を組むため、右手左手双方を互いの上に乗せました。
すると、妙な感触!
いつものスベスベ肌は何処へやら、両腕の表面に赤い発疹がいくつも━━
『なんじゃこりゃぁあぁあぁあ〜〜!!』
河本先生の診断はもちろん“水ぼうそう”でした。
熱とかも出るそうですが、言われてみれば確かに熱っぽいかも……
しかし、
ブツブツと微熱以外の症状はなかったので、昨日と同じくロビーへ向かいました。
松葉杖の扱いにも慣れてきたのか、思いのほか早く二階ロビーまでたどり着けました。
私がここに来た理由は、先日とは違います━━
今回の訪問の理由はリベンジ!
ロビーは、あの帽子男との報復戦を挑める唯一の場所なのですから!
なにせ、私は彼の名前を知りません。それどころか、年齢・住んでるトコ・誰の見舞いか・座右の銘etc……何一つ知らないのです。
つまり!
彼に再会するためには、ここで張り込むのがベタ〜だと考えたのです。
アイツを見つけるのに何日かかるかな? という心配は、私の杞憂に終わりました。
(━━いた!)
忘れもしないあの帽子。
昨日と全く違う服装にも関わらず、野球帽は昨日と同じようにスッポリと彼の頭を覆っていました。
目深帽子は本を読んでいました。昨日私が座っていた長椅子で……
その姿からは妙な大人っぽさが滲んでいるようでした。いゃ、実際滲んでたのかも━━
私は彼から発生している“近付きがたいオーラ”を松葉杖で払い除け、ずんっと歩みでました。
『やぁ、寝癖女』
彼は顔を上げると、私を認識し、そして挨拶ならぬ挨拶をしました。
私はムッとしましたが、こちらにも“武器”があることを思いだし攻勢に出ます。
『やぁ、目深帽子君』
彼はニヤニやしていた顔を、急にドキッとさせました。
(やっぱり気にしてんだ。ダメージ大かな?)
私はなんだか満足したので、彼の隣に自分から座りました。
『来ると思った』
『ぇ━━なにが?』
急に喋りだした帽子は、そのなかのまんまる目玉をこちらに向けています。
私は先程の余韻に浸っていたせいで不意を突かれ、マヌケな声色を出してしまいました。
『人の話はしっかり聞きたまえ。なにがって、オマエに決まってぇうぇえぇ!ど、どどどうしたんだその腕!?』
彼が大声を出したので、自然と視線が私たちに集まります。
彼の驚き方は、もう尋常じゃありませんでした。
壊れたクルミ割り人形のように口をパクパクさせています。
あまりに愉快だったので、そのまま保存したかった位です。
『いや、ただの“水ぼうそう”だから……』
『へ?』
半開きの口を直してやろうと、事実を説明したのがいけませんでした。
しかし、
気付いたときには後の祭り……彼は笑いだしていました。そして、あの言葉━━
『その歳になって“水ぼうそう”かょ』
しかし、
私は妙な感覚に包まれていました。
確かに、彼への“怒り”は感じているのですが、ドコか引っ掛かるところがあるのです。
なんだろう……
『なぁ、お前の病室何処だ?』
私がボォ〜っとしていると、彼が尋ねてきました。 当然、ひとしきり笑ったあと……
『五階の一番奥の部屋だけど……なんで?』
『いゃな、オマエ足怪我してるから、わざわざロビーまで来るの大変じゃないかと思って』
『思って?』
私は更に続きがあるような気がして、いゃ、続きを期待して訊き返しました。
『えっとだな、オマエが大変だと思って……み、見舞い。そぅ、見舞いに行ってやろうと思ったんだ』
うつ向きかげんの目深帽子の下から、そんな言葉が聞こえてきました。
『ゎ、私は。別にアンタに会いにここに来たんじゃないわょ……』
彼の言葉に喜んでいる自分がいる、だけど、彼にはなんだか悟られたくありませんでした。
私の返答を聞いた彼は、なんだかシュン……っとしていました。
もちろん、この返答には続きがあります━━
『━━アンタがどうしてもって言うなら。お見舞いされても良いわよ』
『……お見舞いされてもってなんだよ』
彼は的確なツッコミをしつつも、ニヤニヤ笑っていました。
たぶん私も笑っていたと思います……
彼はチラっと時計を確認しました。
『━━!ヤバっ!!もう行かなきゃ!じゃな、またあし……明後日』
『うん。じゃぁ』
私は彼に手を振っていました。