第4章:再生編 第88話:旅立ちの朝
終わりは、
始まりでもある。
失ったものは戻らない。
傷も消えない。
それでも。
人はまた、
歩き出す。
朝日が街を黄金色に染めていた。
瓦礫はまだ残っている。
崩れた建物も多い。
それでも。
煙は減った。
泣き声も減った。
代わりに聞こえるのは。
笑い声だった。
主人公は街の入口に立っていた。
肩には小さな荷物。
いつものように身軽だった。
教育係が近付く。
「準備はできました」
主人公は頷く。
「ああ」
失敗作が大きく伸びをする。
「また旅か」
「嫌か?」
「まさか」
失敗作は笑った。
「じっとしてる方が苦手だ」
E-01も静かに歩いてくる。
白と黒の装甲は修復されていた。
だが。
胸の傷だけは残してある。
主人公が不思議そうに見る。
「直さなかったのか」
E-01は胸へ手を当てた。
「記録」
主人公は笑う。
「そうか」
その傷は。
少女を守った証だった。
消す必要などない。
その時。
街の人々が集まってくる。
老人。
母親。
子供達。
昨日まで共に復興していた人達。
少女が駆け寄る。
「おにーちゃん!」
主人公はしゃがみ込む。
「元気でな」
少女は何度も頷いた。
「また来る?」
主人公は少し考える。
そして笑った。
「ああ」
「世界が少し落ち着いたらな」
少女は嬉しそうに笑った。
母親が深く頭を下げる。
「ありがとうございました」
主人公は照れくさそうに手を振る。
「礼なんかいい」
「その代わり」
街の人達を見る。
「困ってる奴がいたら助けてやってくれ」
老人が笑う。
「もちろんじゃ」
「あんた達から教わったからな」
主人公は少し照れながら笑った。
教育係がその光景を見つめる。
「……変わりましたね」
主人公が聞く。
「誰が?」
教育係は静かに答えた。
「世界が」
主人公は首を横に振る。
「違う」
風が吹く。
「世界じゃねぇ」
街の人々を見る。
「人が変わったんだ」
その言葉に。
誰もが静かに頷いた。
その時だった。
教育係の端末へ、新たな座標が表示される。
【目的地設定】
【送信者:識別者■■■■】
主人公が画面を見る。
地図の先には。
山々に囲まれた一つの場所が示されていた。
教育係が静かに呟く。
「ここに……」
主人公も頷く。
「あの人がいる」
長い旅になる。
危険もある。
それでも。
主人公は迷わなかった。
ポケットへ手を入れる。
黒糖飴がある。
母親との思い出。
自分を拾ってくれた人。
そして。
これから会いに行く人。
全部が繋がっていた。
主人公は一歩踏み出す。
「行こうぜ」
仲間達も歩き出す。
背後では。
街の人々がいつまでも手を振っていた。
その景色を胸に刻みながら。
新しい旅が始まる。
人を救うためではない。
世界を変えるためでもない。
もう一度。
大切な人に会うための旅が。
第88話より、第4章「再生編」がスタートしました。
ここから物語は「戦い」よりも、「再生」と「再会」が中心になります。
主人公は大富豪との再会を目指し、旅に出ます。
その旅の中で、母親との記憶、黒糖飴の本当の意味、教育係との絆、そして世界各地で生まれ始めた「未完成な希望」を描いていきます。
ここからが、この作品の後半戦です。




