16
「涼乃っ!!」
僕は叫んだ。涼乃とモモちゃんが目を見開く。前回と全く同じだ、二人は男たちにナイフを突きつけられている。
「あ? お前だれだよ?」
金髪にメガネの小太りが凄むのも同じ。
「僕は涼乃のカレシだ。お前ら、ナイフを置けよ。もう警察を呼んである。はやく逃げないとつかまるぞ!!」
男たちは奇妙なものを見る目で僕を凝視する。美大生風がモモちゃんを振り返った。
「モモちゃん、こいつを呼んだの? そんなこと許可してな……」
「モモちゃんは関係ないっ! 僕は……み、未来からきたから、なにが起こるか知ってるだけだっ!!」
もうやけくそだ。とにかく前回と違うことをしなきゃダメなんだから。
「はっ? なにが未来だよ。やべーなこいつ、頭いかれてるぜ」
小太りが唾を吐く。
「どうせ警察ってのもはったりだろ? 今現れたばっかりなのに、何を言ってやがる」
今度は本当かもしれないのに、男たちは全く動じなかった。短くクラクションの音がなり、例のミニバンから髭の男が顔を出す。
「おい、はやく女たちを車に乗せろよ。そんな中坊、殴って黙らせればいいだろ」
あぁまずい、一回目とほとんどなにも変わってないじゃないか。
「ぼうや、邪魔するなら力づくで黙らせるよ」
流れるように放たれる美大生風の言葉も。
「相変わらずおめーは上品だな。この女とヤリてぇって言えよ」
「そういう言葉遣いは嫌いだな」
その下品なやりとりも。前回と何も変わってない。
そして、みぞおちに強烈な一発をお見舞いされるのも変わらなかった。
「ぐはっ!」
拳を前に、僕の体は結局震え上がった。殴られるとわかっているのに、小さな頃の僕の恐怖が蘇って、体が硬直して。
――ダメだ。ここで踏ん張るんだ。
僕は歯を食いしばった。
頭をぶんぶん降る。
――振り払え!
恐怖を。暴力に対する恐怖を。
――僕はもう、震えて泣いているだけの子どもじゃない!
怯えるな、もう僕の母親はいないんだ。
――負けるな!
「うおおおおお!!」
拳を握った。
優男に突撃する。
「くっ、こいつ!?」
拳はかわされて、代わりに蹴りが飛んできた。
でも大丈夫だ。体が動く――!
前回はもろに頭に食らった一撃を、僕はなんとか避けた。爪先がかすって衝撃はあったけど、倒れ込むほどじゃない。
――未来を変えられるかもしれない!




