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死神が僕にくれた幸福な運命  作者: 風乃あむり
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 涼乃の言葉の意味を全く捕まえられず、僕の思考はくるくると空回りしていた。


「えっ? ……えぇっ?」


 ――僕たち、付き合ってたよね?


 去年の文化祭の日、ドレス姿の涼乃に告白したのだ。涼乃はあんなに嬉しそうにそれを受け入れてくれていたのに。


「僕たち、恋人同士じゃなかったの……?」


 素っ頓狂な声を出す僕に、涼乃はびくりとも揺るがない真っ直ぐな視線を向けていた。


「そのつもりだったけど。でも文化祭の日、私が無理やり山丘君に“好き”って言わせちゃったから。私のわがままで恋人になってもらって……」


 涼乃はそっと眉根を寄せた。


「クリスマスのデートの後から、優磨は私のこと避けてたでしょ?」


「それは……」


 僕が言葉を詰まらせると、涼乃はそれを肯定だと受け取ったみたいだった。


「……優磨は、本当は私のこと好きじゃなかったんだよね? それなのに君は優しいから、私のために恋人になってくれたんだ」


「ちがっ」


 身を乗り出して反論しようとしたけど、涼乃はそれを遮った。


「考えてみれば、優磨が私のこと好きになる理由なんて一つもないもの。私ばっかり優磨に助けてもらって、支えてもらって。何一つ返せるものなんてなかった」


 だから、と涼乃は居住まいを整えた。


「優磨に、女の子としてちゃんと好きになってもらえるように、四月から頑張ったの」


 ――表情を明るく。口調は優しく。女子にも男子にも親切にして。


「そうやって、これまでより少しでもまともな人間になれたら、やり直すチャンスがもらえるかなと思って」


 ――中学三年生になって、涼乃は変わったと思ってた。それは全部僕のためだったのか。


 胸がいっぱいで、苦しい。

 僕なんかのために、君は必死になってくれてたんだ。


 涼乃の勘違いを否定しなきゃいけない。でも、言葉が喉をつかえて出てこない。


「ちゃんとやり直したかったんだ。今度はちゃんと私から“好き”って言って、それで優磨に考えてほしかったの」


 胸の前でしっかりと指を結んだまま、涼乃は僕の瞳を真っ直ぐ見つめた。


「山丘優磨君、もう一度言わせてください――あなたが好きです。今、私のことを好きじゃなくてもいいから……」


 それ以上を言わせるわけにはいかなかった。


「違う……涼乃……っ」


 悔しくて、恥ずかしくて、情けなくて。僕はその場でしゃがみ込んだ。涼乃の顔が見れない。頭を抱えたまま、小さく丸まった。


 どうして僕は彼女の気持ちを考えてあげなかったんだろう。


 一度きりのデートの後に離れていく。そんなひどいことをして、それでどれだけ彼女が傷つくか、どうして考えられなかったんだろう。


 ――勇気を出そう。


 僕は顔を上げた。視線の先で、僕の大好きな運命の女の子が不安げな表情を浮かべている。


 ――涼乃は、僕のために変わらなきゃって思ってくれたんだ。


 両足に力を入れる。ぐっと踏ん張って立ち上がった。


 ――僕も覚悟を決めるんだ。


「涼乃、大事な話があるんだ。全部話すと長くなるから、東京に戻ったら僕に一日君の時間をください」



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