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「優磨っ!!」
きつく腕を掴まれていた。降る雨が痛い。
先ほどまで明るい世界で死神と話していたはずなのに、僕は雨に打たれてただ立ち尽くしている。
そして、涼乃に腕をつかまれていた。
「ねぇ、何してるの!? はやく屋根のあるところに行こうよ!」
「……涼乃? え? 本山たちは?」
涼乃は問答無用で僕を引っ張った。
「先に行ったよ! 見てたでしょ!?」
「えぇっと……」
「もう、なんで寝てないのに寝ぼけてるの? モモちゃんのカメラをかばって先に行ったよ!」
重たい雲の下、冷たい雨の中。涼乃は僕を引きずる勢いで鳥居をくぐって前を行く。
――あったかい……。
状況は最悪だ。なのに心はふわりと熱が灯ったようだった。
涼乃と二人で駆けている。腕を掴まれながら。ずいぶん久しぶりに会話も交わした。
それだけで、僕の心はこんなに喜んでいるんだ。
あーぁ、本当に死神の言った通りだなぁ。