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去年までの涼乃は、どこかへ消えてしまったらしい。
かつて彼女を覆っていた固くて刺々しいものは、僕が離れていた間にやわらかでまあるいものに変化していた。
相変わらず女子の輪に入っていくのは苦手のようだったけど、今年はモモちゃん――桃谷さん。去年、文化祭をきっかけに仲良くなった子リスみたいな女の子――と同じクラスだったので、“ぼっち”になることはなかった。
桜の葉が青々と茂るころには、クラスの男子たちも涼乃に話しかけるようになっていた。そして涼乃もそれにちゃんと応じている。
いったい何があったんだろう?
彼女の変化に驚いて目を回したまま、中三の四月が過ぎていった。
僕は今さら涼乃に話しかけられず、もちろん朝の公園にも足を向けられず、ただくるくる回って時を刻むだけの時計みたいに生きている。
すごく嬉しいことだ。涼乃に友だちができて、男子とも話せるようになって。クラス一のイケメンが涼乃に「告りたい」と言っていたのも聞いた。そうだ、告ればいい。涼乃に新しい恋人ができて、お互い好き同士になって――僕が彼女のために死んだ後も、そうならなくても、お二人さんで幸せに暮らしてくれればいい。
それは、かつて僕が望んだ未来だ。
そのはずなのに。
僕はなんでこんなにイライラしているんだろう?




