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文化祭後、休み時間に涼乃のクラスをのぞきこむと、涼乃が人と話しているのを見られるようになった。
話し相手はモモちゃん。涼乃のクラスの演劇を、圧倒的クォリティの衣装とメイクでいろどった、小動物みたいな女の子。
モモちゃんは楽しそうに涼乃の髪をいじっている。
髪をすいて、結んで。おだんごを作ってみたり、編み込んでみたり。
完成すると、モモちゃんはほかのクラスメイトに自慢する。「ね、似合うでしょ。可愛いでしょ」って。
そうやって、いつのまにか涼乃の周りに人が集まっていく。
涼乃は少し戸惑いながら、でも嬉しそうにその輪の中に自分の居場所を見出していった。
僕はひとり胸をなでおろした。
これで涼乃は大丈夫。
僕がいなくなっても、死んで消えてしまっても。
もう、彼女はひとりぼっちじゃないんだから。