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冬休みに僕たちは初めてのデートをすることにしたんだけど、それは計画をたてているときからものすごく楽しかった。
「デートって何をすればいいんだろうね?」
いつもの公園で僕が首をかしげると、涼乃はそわそわとし始めた。
「あのさ、私、今まで隠してたことがあるんだけど」
「えっ? なに?」
どうしたんだろう、こんなふうに改まって。どんな深刻な話が始まるんだ?
「実はね、私……」
僕は息をのむ。涼乃は僕を真っ直ぐ見る。
「甘いものが大好きなの!」
「……へ?」
一気に気が抜けた。
「えぇ、なんで隠す必要があるの? 別に僕だって好きだよ、甘いもの」
「だって私のイメージに合わないじゃない? なんか言い出しにくかったんだよ」
なんだそれ? 僕はもうおかしくて、肩を揺らして笑った。
「あはは、そんなこと気にしてたの? 別に変じゃないのに。だいたい涼乃ってメロンパンばっかり食べてるじゃん」
「メロンパンは甘いけど、やっぱりパンだもの、私が食べててもそんなにおかしくないと思うの。でもスイーツはダメ。こんな怖い顔の女がスイーツ食べてニヤニヤしてたら気持ち悪いでしょ」
「そもそも別に怖くないし、涼乃が気持ち悪いわけない」
「はいはい、優磨は本当に変な人だからね」
そんなやりとりで笑い合いながら、僕たちはちょっと背伸びして電車に乗って出かけることに決めた。
目指すは自由が丘のスイーツフォレスト。
当日は、クリスマスだった。
駅前の自由通りはキラキラとイルミネーションで輝いて、たくさんの恋人たちが楽しそうに手をつないでいた。
僕は隣で笑う君に手を伸ばす勇気がなくて、並んで歩くいつもの距離感で目的地を目指した。
たどりついたのは、たくさんのスイーツのお店がつめこまれた、ふわふわとした森。
「ここならなんでも食べられるねぇ」
涼乃は両手で頬をつつんで、食べる前から満足そうだった。
その隣で僕は、実はスイーツなんかどうでもよくて。
涼乃の私服姿が可愛いこととか(白いニットのワンピースにショート丈のブーツで、すごく似合ってる)、何より君が幸せそうに笑っているのが嬉しかった。
少し前ならこんなこと考えられなかったな。
涼乃はこんな笑顔を見せてくれる人じゃなかった。打ちひしがれてうつむいてばかりの頃もあった。
でも今、君は僕の目の前でこんなに幸せそうにケーキを頬張っている。
僕はそんなことばっかりを楽しんでいた。
そう、デートはあまりに楽しかったんだ。
「うわ、優磨ってシュークリームの上の皮をはがして食べるタイプ?」
「え、ほかにどうやって食べるの?」
「皮とクリームを一緒に食べるのが美味しいんでしょ!」
なんて怒られてみたり。
「ねぇ優磨、今度のデートは映画を観に行きたいな」
「いいよ。何かみたい映画ある?」
「うーん、なんでもいい。優磨が決めていいよ」
「えぇ? 涼乃が映画を観たいって行ったのに?」
って驚いたり。
君と並んで歩くだけで、冬のくすんだ空がいくらでも明るく見えてくる。
くだらない会話が、宝石みたいに輝いてる。
――ねぇ、すごいね、涼乃。
僕は出会った頃から――いや、出会う前から君のことが好きで。その気持ちは運命なんだって自信をもって言えるくらいに強かったのに。
もっともっと君のことを好きになっていくんだ。
――僕は絶対に君を守りたい。絶対に君を死なせたりしない。
その決意がどんどん強く、確かなものになっていく。
それなのに。
僕は気づいてしまった。僕の中に、僕と矛盾したもうひとりの僕がいる。
そいつが、魂を震わせて、自分の心臓を蹴破るように叫んでる。
――死にたくない。
胸をかきむしり、頭を抱え、地に這いつくばって咆哮をあげる。
――僕はまだ死にたくない! この世から、消えてしまいたくないんだ――!!
そう惨めに泣き喚いているんだ。




