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くっくっくっ。
闇の中で不吉な笑い声が聞こえる。
僕はベッドで目を覚ました。すぐに体が動かないことに気づく。
「こんばんは、優磨くん」
あぁ、またあいつか。
僕は視線だけをベッドの脇に移して、そこに不吉な影があるのを確認した。人の形をした、暗い暗い存在。
(久しぶりですね、死神さん)
話しかけたつもりになると、死神はちゃんとその言葉を聞き取って返事をよこしてくる。
「えぇ、ご無沙汰してました。ふふ、今日はよく頑張りましたね。夏原涼乃さんの危機にちゃんと駆けつけたじゃないですか」
(約束、ちゃんと守ってるでしょ)
そうですね、と死神が頷く。アフロが重たげに揺れた。
「でも、まだ油断しないでくださいよ。私との約束はこれで終わりじゃありませんから」
(……そうですか)
今日、僕は涼乃を救ったつもりだったけど……まだ運命は続くんだ。
(僕は、涼乃を守るために、あなたに生かされている)
頭の中で大事なことを確認する。死神はニタリと笑った。
「そうです。それを忘れないでくださいよ。あなたは、私のおかげで蘇った――寄生している住処が心地よいからって、勘違いしないように」
――寄生。
たしかにそうだ、僕は山丘家に寄生してる。
おじさんとおばさんがどんなに良くしてくれたって、僕はあの家族の異物にすぎない。
――ましてや、また僕は死ぬんだから。
あの二人に心配してもらうなんて……そんな恐ろしいこと、やっぱり許されない。
「大事なことに考えが至ったようですね」
死神は満足げに笑った。
――あぁ、本当にこいつは死神だ。死ぬべき僕の運命は、決して見逃されはしないだろう。
でも、いいんだ。
僕は涼乃のことが大事だ。
今日の出来事で僕は痛感した。彼女に何かあったらとても耐えられそうにない。
傷つけられながら生きてきた彼女を、僕だけでも守ってあげたい。
(大丈夫。あなたとの約束は守ります、死神さん)
そう決意を示すと、死神は楽しそうにどこかへ消えていった。僕も再び眠りの世界に取り込まれてしまった。




