41. 能力不明者
今日は、能力不明者の家庭訪問の日。王都から帰ってきて初の仕事です。
聞き取りだけでは分からなかった彼らの特性、家庭や日常の様子を見せてもらうことで割り出せたら良いんだけど。
とりあえず今日を一回目として、何巡かはしないといけないかな。
ちなみに、鑑定能力のある特殊能力者たちは、能力の有無が示される文字がはっきりと見えるようになってレベルが上・中・下と表示されるようになったとのこと。彼らが来月の北地区の再検査で一気にレベルを上げてくれれば、32名の能力不明者の能力が瞬時に判明するかも知れない。ひとまず鑑定者たちのレベルが上がるまでは地道に家庭訪問することになっている。
長屋風の家屋が軒を連ねている路地に入りました。
完全に和風ではないから、洋風の木造家屋ね。間口が狭いのが長屋風。
同じような家が見通せる範囲で続いているけど、ちゃんと条坊ごとに大分類されていて、一条の中では手前から順に番地がふられている。
戸籍がよく管理されている事に感心する。
正直、うちの事務って特殊技能集団だと思う。
多分よその領地の管理機関には読み書き算盤が問題なくできるというレベルのところもあるんじゃないかしら。そもそも事務っていう発想がないかも知れないし。
その中でうちの役所は、表計算ソフトがない環境で正確なデータを抽出して分析ができるレベルだから、相当上級だ。歴代で最も優秀とは伊達じゃない。
どうしてあんなに事務を育てたんだろう? その辺はよく分からないのよね。お父様が不在になる予定があったからかしら。
そのよく管理された住宅街通り抜けて、農地の広がるところに出た。この辺りからは一軒一軒が離れていて、家の奥に畑がある。
このあたりに……あ、あったわ。最初の能力不明者のお家。
ちょっと他のお宅より一回り小さめ、かな?
よし、最初の訪問、上手くやるぞ。
「こんにちは」
外から声をかけてみると、「はい!」と返事が聞こえた。
この方は10代の男性。
友好的な雰囲気でちょっと安心。
「お邪魔します」
「どうぞ! 狭い家ですが」
「とんでもない、とても綺麗にされて。今日はお忙しいところすみません。ご協力ありがとうございます」
いや、本当、中に入ってびっくり。外観は一般的なんだけど、内装が割と凝っている。家具や飾りがお洒落。
家が小さめなので心配だったんだけど、暮らしは悪くないみたい。
「いえ、僕も自分の能力が何なのか、気になってワクワクしてます」
「早速ですけれど、聞き取りをしたりお家を拝見したりさせてもらいますね」
「はい、よろしくお願いします」
「お仕事は、農業でしたよね? 前回の面談ではご趣味は特にないとのことでしたが、家具や調度品が素敵ですね。お好きなんですか?」
「ああ、家の中ですか? これは母親の趣味で。うちは、家と畑は小さいんですが実りが良い方なんで、母さんが好きなものを買い揃えているんです」
「そうなのですね。失礼ですが、食事量はやはり多い方ですよね? この辺りの畑一帯がよく獲れるということでしょうか?」
大食漢でも食費は問題ないくらい収入が多いってこと? それとも副業有りの兼業農家かしら。
「うちの畑はよく育つ方だと思います。雨の少ない年でも収穫はそれほど減りませんでした。種の撒き方とか水のやり方なんですかね。よその畑のやり方を詳しく聞いたことがないんで、よく分からないんですが。肥料は普通の肥やしです」
「後で畑を見せてもらえますか?」
「わかりました」
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うん。これは能力です。
畑を見せてもらったんだけど、どう考えてもぎっしりぎっちり実っている。それもどの作物も大きくて立派。
間引きもせずにこんなに実るのは、明らかに土壌の能力を超えている。
こんな無理が通るのは、特殊能力としか言いようがない。
なるほどね。能力者が規格外の食事量であることへの備えとでも言うべきか。
高生産の能力者たちがいたわけね。
これは、能力不明者で農地住まいの人たちの畑を見せてもらえば、一気に高生産者が分かるわ。
この二、三日中に農地住まいの人は全員訪問しなきゃ。
それにしても、この世界の人たちはこれまでよく頑張っていたわね。
意識的にレベルを上げることなく、高生産者の力も借りずによく魔獣を駆逐してきたものだわ。
レベル1かつ最弱装備でラスボスに挑んでいるみたいな難易度じゃない。
ひとまず、この人がこんなに狭い畑だけを管理しているのは非常にもったいない。
自前の畑以外に、もう一つ公営の畑でも管理してもらうべきね。
早速お母様に相談しなきゃ。
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年明けからは更新頻度を上げたい…。




