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プロファイル01「魔法少女その一」

プロファイル01「魔法少女その一」






 滝下浩毅。彼は命ヶ原を拠点とするローカルヒーローの指揮官である。

 彼は先の戦いで最愛の人を守れなかった。

 最愛の人の名前は桜木保奈美。彼女は魔法少女たちが戦っている組織の手により、化け物にさせられてしまう。

 彼女を救う方法は殺すしかなく、それを魔法少女と超常戦士達に頼らざるえない状況だった。

 その頃より彼は記録を取り始めることする。

 彼女の死、否。それだけではない。多くの人の死が無意にさせないために彼は記録をする。

「魔法少女……改めて能力を書き連ねてみたが――」

「やばいな」

 部屋に二人の男性がいた。滝下浩毅と新堀金太郎だ。

「――この話が本当なら」

「本当だろ? 目の当たりにしたんだし」

 滝下浩毅の顔は渋い。認めたくないと。言外にそう言っていた。

 そんな様子に金太郎は肩をすくめる。

「そうは言っても、事実だ。これからこの街を守る仲間なんだから、それくらい認めてやれよ」

「そうじゃない。仲間だし、彼女たちにはこれからも積極的に協力を乞うさ」

「わかっているよ。まだ学生だもんな」

 滝下浩毅は、まだ学生である彼女たちに尋常ならざる力が宿っていることを認めたくなかったのだ。大人の自分たちが守られる存在だということを。

 それほどまでに彼女たちは強かった。そして大きな戦いを乗り越えた彼女たちは、並のヒーローを圧倒するほどの、実力を備えている。

 大人は本来子供を守る存在だ。だからこそ、彼らの良心がそれを拒んでしまう。

 子供を矢面に立たせて、自分たちはそれでいいのかと。

「実際、魔鎧の能力は強い。比べてファントムアーマーなんて屁だぜ」

「ファントムアーマーの出力は上げられないのか?」

「無理だな。仮に出来たとしても、装甲服の稼働時間と、武器へのエネルギー供給が追いつかないな」

 魔鎧。それは魔法少女――エレメンタルコネクターとして覚醒した者達には備えられている基本能力だ。

 魔力が体を覆い、攻撃、防御、そして身体能力を大幅に強化する。また、魔法を行使する際に魔鎧があることで、使用者を保護し、変態させることも可能だった。

 スターダムヒーロー、ローカルヒーローの基本装備である装甲服に備えられているファントムアーマーは防御のみだ。身体能力の向上は装甲服に依存している。

 強化、変質、保護。それらを使用者の魔力が尽きるまで、効果がある魔鎧は、他の追随を許さないのだ。それが基本能力である。

 すでに、いくつかの企業が彼女たちの正体を突き止めようと、動き始めていた。

 その中に満宮も含まれており、彼女たちの将来を守るためにも彼女たちの情報は秘匿する必要があった。

 幸い、それに異を唱える者はおらず、魔法少女と超常戦士のことは、他言されることはない。

「もう一度確認するが、ここは大丈夫なんだろうな?」

「早乙女博士が作った部屋だぜ? 外部から完全に遮断されているから安心していい」

「後は、私自身に、盗聴器の類が忍ばされないようにすればいいのか」

 新堀金太郎は何かを思い出すように言う。

「そうだ。この部屋に入る前の部屋で、それらを感知する装置あるから」

「早く言え。仕様書を明日までにまとめておけ」

 滝下浩毅は苛立ちを隠さず言う。そしてすぐに指示を出す。

 それを聞いた新堀金太郎は、バツが悪い顔になる。

 彼らのいる部屋に入る前に、小さな部屋がある。そこで携帯機器を預けないと、部屋に入れない仕組みだ。例え、持ち込んだとしても電波、ケーブルのたぐいはない。部屋にはコンセント一つない。

 壁も床も白一色だ。部屋の真ん中にパソコンのような端末と机、そして椅子だけである。

 そこに滝下浩毅が座り、机を椅子代わりに新堀金太郎が座っていた。本来は部屋に入れるのは滝下浩毅一人なのだが、新堀金太郎は特別なキーで入室してきたのだ。

 異例を認めてしまえば、多用される。しかし新堀金太郎はやめないだろうということも彼は知っているので、それも無駄だった。

「先、進めようぜ?」

 滝下浩毅ははあと溜息で答える。

「魔鎧を体得するには魔石に触れる必要がある――か」

 滝下浩毅は桜木保奈美を想う。

「違うぜタッキー。魔力を帯びた魔石だ」

 彼は気のない返事で返す。

 その様子に新堀金太郎は苦笑いする。

 正確には二人共足りていない。魔力を帯びた魔石に触れ、魔法少女として、エレメンタルコネクターとして覚醒することで、体得できるのだ。

「魔法少女は、桜川明樹保の命名だったな」

「エイダはエレメンタルコネクターが正式名称って、言ってたな。でも、俺は魔法少女でいいと思う」

 新堀金太郎は笑顔で言う。楽しそうに笑って言う。

「その心は?」

「そっちの方がこっちの世界っぽいじゃない」

 滝下浩毅も笑ってなんだそれはと言う。

 しかし、新堀金太郎は真面目な顔になって続けた。

「まあさ。少しでも周りにも――彼女たち自身にも夢を与えるような、名称のほうが、ね?」

「異論はない。ただ、魔法少女、イコール、エレメンタルコネクターってのが面倒なだけだ」

 滝下浩毅は無駄が嫌いなのだが、ここに至っては愚痴るだけで折れていた。

 彼自身も、敵と彼女たちが同じ名称で呼ばれることに、違和感を覚えていたのだ。故に魔法少女と。

 しかし、ここで問題が出てくる。

「あ、早乙女がいるな」

「大ちゃんは魔法戦士でいいじゃない」

「それならば、彼女たちも魔法戦士でいいじゃないか」

 そこで滝下浩毅はとある会話を思い出す。

 以前、基地であった話だ。

 大ちゃんこと、早乙女優大は、明樹保に「いつまで魔法少女と名乗り続けているのか?」と聞いたことがあったのだ。

 それに対しての彼女の答えが「高校生になったら、魔法戦士に改名するよ」とのことだ。

 それを思い出した滝下浩毅は、新堀金太郎に語る。

 その場にいた彼は、大仰な仕草でそうだったなと言った。

「超常戦士のこともあるし、戦士で統一してもいいかもね」

 さすがに新堀金太郎も折れる。

 滝下浩毅は、キーボードを操作し、修正する。魔法少女と記入したことろを魔法戦士へと。






~続く~


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