VSガストン ②
激しい金属音が戦場に響き渡る。俺とガストンさんの周りには誰もいない、否、誰も近づけないでいるが正しい。
ガストンさんと剣の撃ち合いをしているが、正直言ってこの人の剣技は無茶苦茶だ。型にハマってるようでハマってない、ハマってないようでハマっている。
チルさん以上の剣捌きだ。隙が無いどころか、一瞬でも気を抜いたら、たちまち真っ二つだ。豪快かつ繊細、まるで暴風のように剣を振っている。
俺の身体には少しずつだが生傷が増えて行っている。だが、魔法の鞘のおかげで瞬時に回復してはいる。しかし、いつまで持つかわからない。
一旦距離をとって魔法で攻めた方が良いと判断した。俺はガストンさんの大剣を弾くと共にバックステップで距離をとる。
「なるほど、剣で勝てないとわかって魔法か」
この人、分かってるな……
俺はエクスカリバーを鞘に納める。背中に担ぎ、その手に握るのは拳のみ。
「疾風迅雷!!」
瞬時に魔力化を施しガストンさんの懐へと飛び込む。ガストンさんも反応しきれなかったようでガラ空きだ。
「風魔雷撃!!」
拳に風属性と雷属性を纏わせガストンさんの脇腹に打ち込む。直撃したガストンさんは吹き飛んでいった。
追い打ちをかけるためガストンさんが吹き飛んでいった方へと駆けて行く。あの一撃で終われば楽なのだが、あれで終わるとは思えない。
ガストンさんが立ち上がろうとしていたが俺は一気に拳を振るい猛打を放つ。ガストンさんは避けようとするが、俺の方が速いため避けきることは出来ずに全て喰らう。
このまま行けると思い猛攻を続けていたら両手を掴まれてしまった。今、俺は魔力化をしているため掴む事など出来はしない。
掴まれた手をよく見たら、掴んでいた手は熊の手だった。
なんだこれ!!??
俺は目を見開き驚いていたら、ぶん投げられた。
「ハッハー! まさか、獣化を使うはめになるとはな! 何十年ぶりだ?? まあ、そんなことはどうでもいい。俺を本気にさせた事、後悔しやがれ!!」
獣化だと!!
戦闘型の獣人のみが使えるスキルで、本来の獣に戻ることで身体強化の十倍もの力を発揮すると言われる。
やばっ!
考えてる場合じゃねえ!!
元々大きかったガストンさんが、さらに膨れ上がり巨大な熊になっていた。その巨体に似合わず、物凄いスピードで攻めてくる。
「オラオラオラオラ!!! さっきから避けてばかりじゃねえか!」
「ッッ!!!」
先程からガストンさんの猛攻を避けている。一撃一撃が今迄のとは桁違いの攻撃だ。
くそ!
マジでやばい!!
どうする!?
考えても意味がねえ!!
こうなったらやることは一つだけ!!
向こうが殴り合いを希望ならそれに応じるだけだ。こちらも、拳を握り締めてガストンさんに向かって踏み込む。
「ずあっ!!」
ガストンさんの猛攻を避けていた俺は反撃へと行動を移して拳を放つ。
「そうこなくちゃな! オラッ!!」
ガストンさんと俺の拳が交差する。お互いに身体がよろけてしまうが関係無しに、また殴る。
「ああっ!!」
「ドラアッ!!」
お互いに拳が交差してダメージが入る。顔面、鳩尾、脇腹、肩、胸、と所構わずに拳を打ち込む。
正直言うとガストンさんの攻撃は重たい。一撃一撃が確実に意識を飛ばそうとしている。だが、負けるわけにはいかない俺は根性で持ち堪える。
向こうが威力を重視するならこちらは、手数で勝負するだけだと、俺はガストンさん以上の拳の速さで猛打を打ち込む。向こうがバズーカならこちらはガトリングと言ったように。
「うおらあああああああああ!!!!」
「はあああああああああああ!!!!」
俺とガストンさんの戦いは熾烈を極めた。お互いに譲らない。
ガストンさんはなんの為に戦ってるのだろうか……
もし、強者との戦いを望んで戦っているのなら俺は負けるわけにはいかない。俺はソニアさんとの約束を守る為に戦ってるんだ。
そう!!
美女と約束しちまったんだよ!!
「ぜやああああああああああああああああ!!!」
俺はさらに手数を増やしガストンさんをどんどん押して行く。
「ぬっ!! ぐっ!! おっ!?」
崩れた!!!!
後ずさるガストンさんが体勢を崩した。その隙を見逃さない。俺は勝負を決めに出る。
「雷牙旋風衝!!!!」
体勢が崩れたガストンさんに後ろ回し蹴りを放つ。ガストンさんは避けることも、防ぐこと出来なかった。
ガストンさんがその場に崩れ落ちる。
立つなよ~
なんかフラグっぽいな……
だが、それを叩き折る!!!
ガストンさんは立ち上がろうとしている所に俺は飛び上がる。確実に勝利を掴む為にも容赦はしていられない。
「烈風稲妻落とし!!!」
ええ。
ただの、かかと落としですよ。
雷属性と風属性で強化して尋常じゃない威力を誇るかかと落しだ。頭に直撃したガストンさんは頭から地面へとめり込んだ。そのままピクリとも動くことはなかった。
死んではいないだろう。常人ならば死んでいるかもしれないが、Sランク冒険者でルドガーさんの師匠ならば死ぬはずがない。
改訂済み




