VSチル
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
この場にいる全ての者達が、俺へと敵意を抱き襲いかかってくる。咆哮を上げながら、全ての兵士達が俺に向かって前進している。
対して俺が取り出すのは鉄の棒二本。無論誰も殺さないためだ。殺さないといっても骨の一本や二本は覚悟してもらう。
行くぞ!!!
「死ねええええ!!」
「でやああああ!!」
「おりゃあああ!!」
「はあああ!!!」
一気に数十人が俺へと斬りかかってくる。それら全てを受け止める。たった一人が数十人もの攻撃を受け止めたものだから、攻撃してきた兵士達は驚いた顔をしている。
「はあっ!!」
その数十人を全て吹き飛ばす。吹き飛んだ奴らが他の味方に当たり、当たった奴らも体勢を崩している。
一気に畳み掛ける!!!
俺は円を描くように囲んでいる敵を薙ぎ払う。鎧の砕ける音が聞こえては、次々と倒れて行く兵士達。
だが、それでも、まだ始まったばかりだ。今この場にいるのは人間軍一万二千、獣人軍一万、エルフ軍八千、合計三万もの兵士達がいる。
つまり、一対三万だ。圧倒的までに数の差がある。正直勝てる気はしない。だけど、勝たなきゃいけない。それが馬鹿な俺が思い付いた唯一の方法なのだから。
「ぜやあああああ!!!!」
雄叫びを上げながら兵士達をどんどん戦闘不能に追い込んで行く。もう数百は倒しただろう。
後ろを振り返って、倒れている兵士達を見てみる。その全てが気絶しているか、うめき声をあげながら倒れている。
この調子で数を減らそう。そうすれば戦意を喪失して戦わなくてもいい奴が出てくるだろうしな。俺は休む暇もなく戦闘を続ける。たった一人で三万の軍勢を相手に。
俺は兵士達を倒して行くが、擦り傷が増えていた。兵士達は剣士だけでなく、槍兵や弓兵だっている。勿論、魔法使いも配備されている。
接近戦がダメだと分かったら、俺から距離を取り弓兵と魔法使い達が弓矢と魔法を放ってくる。
矢と魔法は雨のように降り注ぐ。矢を薙ぎ払い魔法を薙ぎ払う。全てを薙ぎ払う事が出来ず二本の矢が肩と太ももに刺さる。魔法も三発直撃してしまう。
思わず痛みで倒れそうになるが、なんとか踏ん張り倒れずに弓兵と魔法使い達に詰め寄る。矢が刺さり、魔法を受けたのに倒れることなく近付いた俺に兵士達が驚きの声を上げる。
「なっ、化け物か!?」
魔法使い達が驚いている隙に、容赦無く棒で叩き伏せて戦闘不能へと追い込んで行く。
それを見た魔法使いや弓兵は俺に背を向けて逃げて行く。ここで逃がして、また攻撃されてもいけないので誰一人逃がすことなく戦闘不能にする。
数千ほどの兵士達を戦闘不能へと追い込んだ時に一人の騎士が俺へと剣で斬りかかって来た。
受け止めようと鉄の棒を構えたら、鉄の棒を斬り裂いて俺ごと斬られそうになったがでバックステップで斬られる寸前の所で躱す。
しかし、完全に躱す事が出来ず俺の身体は斜めに斬られていた。あのまま完全に受けていたら死んでいた。俺は傷を確かめると敵に向き直る。
そこに立っていたのはチルさんだった。
「今のを避けたか……だが、次は斬る!」
そういえば、俺はチルさんにフラガラッハをあげたのを忘れていた。完全にこちらのミスだ。
くそっ!!
こちらもマトモな武器を出さないとやられる。チルさんが一気に駆け寄り斬り下ろしをしてくる。俺は咄嗟に武器を出して受け止める。
「アロンダイト!」
この剣はエクスカリバーとも打ち合った事があり、火を吐く大蛇をも倒し、決して刃こぼれをしない名剣である。
これならフラガラッハに対抗出来る!
神話でのチート性能としてはフラガラッハの方が圧倒的に上だが、俺が真似して創造したものだからそこまでの性能はない。
「くっ! フラガラッハを止めただと!?」
「はあっ!」
なんとかチルさんを押し退けた。これで武器は互角。後は一気に攻めるのみ。チルさんへと踏み込み、斜め下から斬り上げるチルさんはそれを受け止める。
「ぐっ!! はあっ!!!」
くっ!
やはり一筋縄じゃいかないか!
チルさんは俺の斬り上げを防ぎ弾き返した。後ろへと後ずさりをしたが、再度チルさんへと詰め寄り連続で斬りつける。
しかし、チルさんも負けじと斬りかかってくる。俺とチルさんはお互い引くことなく剣で打ち合いを続ける。
「はあああああああああああ!!!!」
「るぅああああああああああ!!!!」
俺とチルさんは互いに己を鼓舞するかのように声を上げる。チルさんの剣速はさらに増してくる。俺も負けじと同等の剣速にしてみせた。
激しい金属のぶつかる音が鳴り響く。火花が飛び散り誰も近付こうとはしない。周囲には兵士達が固唾を飲んでチルさんの勝利を祈るように見守っている。
負けるわけには行かない!!
チルさんも以前戦った時よりも遥かに強くなっている。フラガラッハが強いのではない、チルさん自体が強くなってるからフラガラッハの力を出せている。
しばらく剣撃の応酬が続いていたが、遂に終わりを迎える時が来た。俺のアロンダイトが折れてしまったのだ。チルさんが一気に決めようと大振りになった。
「覚悟ぉ!!!」
「そこだ!!」
俺は大振りになったその一瞬の隙をついて電撃を浴びせた。チルさんは電撃が直撃したことにより倒れる。
勝ったと思い、俺は他の兵士達の場所へと行こうとしたら何者かに足を掴まれる。足元を見てみるとチルさんが俺の足を掴んでいた。
「行かせはせん! この命に代えても貴様はここで倒す!!」
なんて執念だ……
だが、俺はソニアさんとの約束がある。
悪いがチルさん……
「少し眠ってろ」
俺は倒れたままのチルさんに、再度電撃を浴びせて今度こそ気絶させた。
ごめん……チルさん……
俺は再び兵士達へと突っ込んでいった。
改訂済み




