開戦!!
俺は今オルランドの関所を超えた。兵士たちが騒いでいたが、止まるわけにはいかない。少しでも早くオルランドへ向かう為に
既に朝日が登り始めている。このままでは正午に間に合わないかもしれない。いや、例え間に合ったとしても、軍を派遣したところで戦争を止めることは出来ないだろう。
オルランドの街へと辿り着いた頃には朝日が完全に登ってしまっていた。
「ショウ!」
「わかってる。ララちゃんもう少しだから辛抱してくれよ! ニーナちゃんにリーベル君も!」
俺は三人にそう言い、もう一踏ん張りする。城まではもうすぐだ。
城の前へと辿り着いたが門番がいた。子供を三人抱えた俺を見て門番達が槍を構える。説明する暇も惜しいので、門番達を飛び越える。
城内に侵入した俺は、一気に王がいるであろう玉座の間へと走り抜く。道中、騎士達が俺を止めようと邪魔してきたが全て避ける。
扉を蹴破り中へと入ると部屋にいた全員が驚きこちらを向いてくる。取り乱していた騎士達は落ち着きを取り戻し、俺に剣を向けて来た。
「国王陛下、頼みがある!! 今すぐに軍をアルカディアに派遣してくれ! ナイザー団長もルドガーさんにも伝えてくれ! それとこの子達をお願いします!」
一気に早口で喋ると三人をその場に下ろして、城から逃げ去った。詳しいことは三人が説明してくれるだろう。
後は三人に任せて俺はアルカディアに!
再びアルカディアに全速力で戻る。ソニアさんとの約束を果たす為に。
なんとか間に合った!!
まだ誰も来てない見たいだな……
空を見上げて見ると、太陽が真上に来ようとしていた。そして、地響きが起こる。周囲を見渡すとおびただしい数の人が迫って来ていた。どうやら、あれがアルカディアの三つの軍勢のようだ。
人間、エルフ、獣人。この三つの軍勢がこの荒野に集まり始めている。俺は気合を入れ直す為に自分の両頬を叩く。
ふぅ……
ソニアさん……
貴方が守りたかったこの国は俺が必ず守ります。
もう誰一人として死なせはしません。
一人心に誓う。亡きソニアさんのとの約束を果たす為に。武具創造で作っておいた仮面を被り準備を整える。
三つの陣営が三菱のような形に待機している。三つ巴の戦だからこんな形になるのだろうと一人納得する。
ゆっくりと俺は歩き、その中心へと立つ。
空を見上げる。太陽は真上に来ていた。足元が揺れ始める。全軍が前進し始めたのだ。遂に始まる。アルカディア滅亡の戦が。
だが俺がさせない。
阻止してみせる。
ソニアさんとの約束は果たしてみせる!!
三つの軍の大将が前に出てきた。俺はあの三人からある物を預かっている。それはあの三人が持っていた物だ。ペンダントに腕輪にティアラを取り出す。
さあ、道化を演じよう。
三国王よ、とくとご覧あれ!
「三国王に告げる!! リーベル王子にニーナ姫、そしてララ姫を誘拐したのはこの私だ。全ての黒幕は、この私なのだよ。
そして、私の目的は達成した。哀れな者達は互いを疑い、挙句の果てには戦争という手段を持ち出してくれた。
全ての戦力がこの場に集まった。この意味が分かるか? ここで貴様らを葬れば、アルカディアは私の物も同然。
では、諸君始めようか? 戦争を!!!」
全力で道化を演じる。声高らかに叫び、三人から預かっていた品を、はっきりと視認出来るように持ち上げる。
簡単に戦争を止めることは出来ない。だが、もし別の敵が現れたらどう考える。ましてや、その敵が三国王の子供達が持つ品を手にしていたら、辿り着く答えは一つだ。
手を取り合い共通の敵を排除する。つまり、俺が敵になることで戦争は回避される。浅はかな考えだが、俺にはこれくらいしか思い浮かばなかった。
三人の大将が全軍に命令を出す。遠くて確認は出来ないが、今頃顔を真っ赤に染めて、憤怒の感情に支配されているだろう。
『あの者を打ち滅ぼせえええぇぇぇっっっ!!!』
ゼオンさんにエルフの女王、人間の国王が大きく手を振り上げて俺を指差す。
そうだ!
それでいい!!
お前らの敵は俺だ!!!
全軍が動き出す。俺という共通の敵を倒す為に。
俺はソニアさんとの約束を果たす為に、迎え撃つ。誰一人として殺しはしない。黒のローブ共に一泡拭かせてやる。
改訂済み




