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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第二章

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それぞれの思い

 ルドガー達は学園へと向かっていたが結界により行く手を阻まれてしまっていた。



「何故こんな所に結界が!!!」



 ルドガー達は焦っている。ルドガー達が焦っていた理由は、先程遥か遠くの山が大爆発を起こし消し飛んだからだ。



 恐らく魔獣の仕業だろうと全員が理解した。そして、アレほどの力を持っている魔獣とショウが今も独りで戦っているのだと考えると急がねばならないと焦り始めたのだ。



 しかし、どういう訳か学園へと向かう途中に結界が張られていたのだ。そのせいで足止めを受けている。流石にこのまま無駄に時間を浪費するわけにはいかないので、ルドガーはナイザーに声を掛ける。



「ナイザー!!」


「わかった!!」



 長年の経験からルドガーが何をしたいかわかっているナイザー。二人は剣を抜き、構える。結界を破壊する為に。



「はあああああああああああ!!!!」


「ぜやああああああああああ!!!!」



 二人は全魔力を剣に込めて結界を破壊しようと振り抜いた。しかし、まるで攻撃など無かったようにビクともしない。



 だから、ルドガーもナイザーも自分の全力が全く通じなかったことに驚きを隠せなかった。それでも、独り戦っているショウの事を考えて、もう一度と剣を握り締める。



「俺も手伝います!!」



 二人が再度結界を破壊しようとしたら、大輝が協力するため前に出てくる。すると、彼だけでは無く、この場にいる全ての人間が結界を壊す為に力を発揮した。



 そうして、結界は音を立てて砕け散った。



 結界を破壊したルドガー達は急いで学園へと走り出した。






 ルドガー達が結界を破壊している時、黒のローブを着た人物が建物の上からルドガー達を見ていた。



「……」



 黒のローブを着た人物は無言で見下ろす。ローブを風に靡かせ、微動だにしないままルドガー達を見詰めている。そして、一切の手を出すことはなかった。



 黒のローブの人物は結界が砕かれるとその姿を消した。最後に一度だけ学園の方へと顔を向けて。



「……」


「どうした、ルドガー。空を見上げて?」


「いや、何でもない」



 ルドガーは黒のローブの人物に気付く事はなかったが、見られているという気配だけは感知していた。だから、視線を感じていた方向に顔を向けていた。



 ナイザーに指摘されて、ルドガーは優先事項を思い出して学園へと向かう。



 道中、爆発音が聞こえる。爆発音だけに留まらず、金属音まで聞こえてくる。全員が気を引き締める。きっと今もショウが戦闘しているのだろうと。




 全員が学園に辿り着いた時、目に映る光景に言葉を失った。



 ルドガー達が見た光景は剣を片腕で突き刺した状態で気絶しているショウだった。



「左腕が……!」



 リズがつぶやく。そう、ショウの左腕が無いのだ。驚くのは左腕だけではない。腹からも血を垂れ流している。



 アレは直ぐに手当てをしなければ手遅れになる。真っ先に動いたのは、大輝であった。大輝は沙羅に指示を出した。



「沙羅!! 山本を!!」


「うん!!」



 大輝達がショウの元へと駆け寄る。沙羅のスキルは完全回復だ。これならショウも助かる。



「《天女の慈悲》」



 沙羅がショウに手を翳してスキルを唱える。しかし、ショウの傷は塞がったが片腕は再生しなかった。



 完全回復というはずなのに、左腕は失ったままである。どういうことかと全員が疑問に感じたが、今はショウの命が優先である為、左腕については後にした。



「ルドガー!」


「はっ」


「何を惚けている!! 彼を運ぶぞ!」


「あ、ああ!」


「彼を死なせる訳には行かない! この英雄を!!」



 ナイザーの言う通りだ。ショウを死なせる事は絶対に許されないとルドガーはナイザーと共にショウの元へと駆け寄る。



 ルドガーがショウを背負い、ナイザーが先導しているのを後方で女性陣がショウを見詰めている。



 片腕を失くし、ボロボロになりながらも一人で伝説と呼ばれる魔獣を倒した男。実力はあったが、ルドガーとナイザーよりも下だと思っていたのに。



 女性陣は気になって仕方がないのだ。何故、これほどまでに強いのか。何故、そうなるまで戦うのか。



 ショウが目覚めたら絶対に聞き出してやろうと女性陣は心に誓う。



 そして、もう一人ショウを見詰める者がいる。桐谷大輝だ。大輝はたった一人で魔獣と戦い勝利したショウに憧れの念を抱いた。



 一体どれだけ強くて、どれだけの思いがあればショウのようになれるのだろうかと。



 悲しい勘違いである。ショウは崇高な理由があったわけではなく、単なる欲望によるものだ。彼女を作ってイチャイチャしたいだけで、それを邪魔するなら誰であろうと許さなかったから戦っていただけなのだ。



 大輝が知れば残念な気持ちになってしまうだろう。出来れば、知らないままの方が双方にとって幸せなはずだ。

改訂済み

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