完全決着
ちくしょう!!!
あの球体が完成しちまう!!
俺が必死になったからってこんなものかよ……
情けない。異世界で俺TUEEEEEEと思ってた。けど、ただの思い上がりだったってよくわかる。現に俺はもう勝てない。
「ここまでか……」
俺は全てを諦め肩を落とす。魔獣は球体を完成させると、こちらへ向けて球体を撃ってくる。
ははっ……
あっけなかったな俺……
ここまでか……
そういや、今までもこんな事あったなぁ……
俺はふと思った。
何故自分はこうまでして戦うのか?
何故異世界の事なのに戦うのか?
よくよく考えてみたら俺は全く関係無いじゃないか。本当にその通りだ。なんでこんな死ぬ気で頑張ってんだと改めて自身に問う。
金の為?
地位の為?
名誉の為?
ならば何故?
自分に自問自答を繰り返す。されど答えは見つからない。ならば、思い出せ。最初の自分を。俺が何故戦うのかを。
そう言えば以前にもあった。確か、黒ローブの男と戦いの死にかけた時だった。あの時もこんな感じだった。必死になって負けて諦めて、どうすることも出来なくなった時のことだ。
そして思い出したんだ!!!
俺の最終目標を!!!
俺は――
「俺は彼女が欲しいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
魔獣に向かって大きく叫ぶ。それはカッコ良いい言葉ではない。ありのままの気持ちを。最初に願った思いを。
ダサいと思われたっていい!!
キモいと罵られたって構わない!!
俺は!!!!
「好きな人とエッチな事してみたいんじゃあああああああああああ! それをこんな所で邪魔されてたまるか!」
球体がすぐそばまで迫る。なんとしてでも防ぐ。そう思った時、身体の底から魔力が湧き上がってくるのを感じた。
これは!?
前にもローブの男と戦った時に感じた……
「ええい!! 考えてる暇はねえ!! はあっ!!」
球体に向かって手を翳して魔力を収束させて一気に放つ。魔力は極太の光線となり、球体にぶつかり押し返す。球体は魔獣へと押し返すが魔獣はそれを避ける。
くそっ!
やっぱ避けるか!!
だが魔力は完全回復した!!
この思いを、この夢を、この願いを……
誰にも邪魔などさせない!!!
覚悟を決めた俺は、すかさず魔力化を施す。雷属性と光属性の二つをその身に纏う。
「光輝迅雷!!」
身体が青く光る。魔力化を施した俺は光速で一気に魔獣の額へと飛び上る。そして、ある武器を取り出す。
一度だけしか使ったことのない武器を……
と言っても俺が使った訳では無く、ララちゃんにつかわせたんだけど。
「斬魔!!」
それは刀。日本人ならやっぱ刀である。この刀は俺が創造した武器だ。能力は魔を斬る刀。読んで字の如くだが対魔法には絶大な力を発揮する。
額の上半身の女性を斬る。本当なら障壁で防がれるのだが、これには魔法は効かない。むしろ魔力そのものを斬るので関係ない。
俺は連続で斬りつける。
「はぁぁぁああああああああああああああ!!!!」
「GO……GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
相当効いているようで魔獣も苦しみ雄叫びを上げた。そして、魔獣は激痛により暴れ始める。魔獣は俺を倒そうと手を伸ばしてくる。だがここで捕まる訳には行かない。
俺はカラドボルグを取り出し、伸びてきた手を切り落とす。手を切り落とされた魔獣はさらに暴れ出す。
斬魔で魔法障壁の切り裂いた額の上半身だけの女性に一気に攻撃を仕掛ける。
斬魔をしまいカラドボルグとエクスカリバーを取り出し二本の剣に光属性と雷属性の強化を施す。
エクスカリバーは金色の光を放ちカラドボルグが青白い雷を放つ。
ここで一気に決める!!!!
「ぜやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
二本の剣で乱舞をお見舞いする。竜巻のように身体を回転させて息継ぎすら忘れる俺は一心に倒すという思いで二本の剣を振るう。
倒れろ!
倒れろ!!
頼む!!!!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「GOAAA――」
そして、ズシンと魔獣が地面に倒れた。忘れていた呼吸を思い出しす。荒々しい呼吸をしながら魔獣を見詰める。
勝った……
勝ったんだ……
俺やったんだ……
「ははっ……」
だけど、俺は詰めが甘かった。またやってしまったのだ。倒れたからといって死んだわけでは無いのに。
俺は歓喜していて魔獣の死を確認しなかった。そうして気を緩めていたら、左腕が消し飛んだ。
「えっ……あ、あれ……?」
何が起こったのか全く理解出来なかった。無くなった左腕を何度も見てようやく理解する。理解した途端に激しい痛みが襲って来る。
「あがああああ!! 痛い痛い痛いっっっ!!!」
まだ生きてたのか!?
現実を理解した俺は振り返ると横たわってはいるが、こちらに向けて口を開けている魔獣がそこにはいた。
「ぐぅううう……!」
完全に倒していなかった。いや、トドメを刺さなかった俺が悪かったのだ。こうなったのは自分の詰めが甘かったせいだ。
そんなことを今悔やんでも仕方ない。
左腕の無くなった部分から血が流れる。それを横目で見ながら、横たわる魔獣を睨み付ける。
「くそが……」
「GAA……」
弱々しい声を上げている。どうやら向こうも見た目どおり瀕死らしい。これで五分五分と言った所だろう。
決着をつける時がきた。
「これで最後だ……」
右腕に異空間から取り出したデュランダルを構える。不滅の刃とも呼ばれているこの剣は伝説によると、敵に渡したく無い為岩に叩きつけ折ろうとしたが岩を真っ二つにしたらしい。
さて……
これで!!!
「終わらせるっ!!!」
瀕死の魔獣へとデュランダルを片手に突っ込む。魔獣も突っ込んでくる俺に対して光線を放ってくる。
それらを全て避ける事が出来ず腹にまで喰らってしまう。だが立ち止まる訳にはいかない。その一心で魔獣にデュランダルを突き立てる。魔獣は苦しいのか絶叫をあげる。
決してデュランダルを離すこと無く、そのまま魔獣が完全に死ぬまで突き立てた。魔獣ものたうち回ったがとうとう力尽きて最後には俺に手を伸ばすようにして死んだ。
「……死んだか?」
死んだ事を確認する。なんの反応も無くなり死んだ事を確認できた。
終わったんだな……
血を流しすぎた……
もう無理……
俺はそのまま魔獣にデュランダルを突き立てた状態で意識を失ってしまう。




