呼び出し
あれから一週間が経過した。俺が嫌がらせを受けてから。憂鬱である。一週間もの間、休む間もなく嫌がらせを行っている生徒を俺が行方不明にしてしまいそう。
毎日毎日嫌がらせをしてきやがって!!
いっぺんシメたろうか!!!
そんなことしても状況が悪化するだけだ。だっていつの間にか他のクラスの連中にも知れ渡ってみるたいで毎日いろんな奴に狙われてる。
このままだと勇者がいるクラスにまで知れ渡ってしまう。その前に、この嘘に決着をつけなければ俺がいることがバレてしまう。
いや、バレるだけなら構わない。もし、勇者のクラスまで嘘を信じてしまったらアウトだ。桐谷を筆頭に屑ハーレム軍団が俺を襲いに来るだろう。
来たとしても返り討ちにするがな!
だが、さすがにクラス全員となると俺も厳しい所がある。
どうするか……
「がっ!」
痛え!
頭に魔法撃って来やがったぞ!
くそ!
どうせ誰かわかんねえんだろ!
「まだ、クズ来てたのかよ。早く学園なんか辞めちまえよ」
俺がいつまでも我慢するとでも思っているのか強気な態度の男子生徒。本気になればすぐにでも黙らせてやれるのに。
チッ!
うざってえ!
教室に入ると数人の男子生徒に囲まれる。威圧するように腕を組み、俺を睨みつけている。
「ローラさんがお前に用があるってよ」
「だから、俺たちについて来い」
「変な真似したらぶっ飛ばすぞ」
そう言って俺をローラの元へと案内してくれた。辿り着いた場所は人が滅多に来なさそうな倉庫であった。
「この中にローラさんが待ってる」
「俺達は外で見張ってるからな」
「おかしな音でもしたらすぐにわかるからな!」
本当ローラは人気だな……
あんな屑野郎がよ!!
三人に指示された通り、倉庫の中へと入ったらローラが待っていた。まるで、女王様のような態度で待ち構えていた。
「ふふっ、来たわね」
「何の用だ?」
「あら、わかってるんじゃない?」
「わかんねえから聞いてるんだろ」
「そう冴えない顔に頭も冴えないなんて可哀想な人ね」
「……」
「まあいいわ。貴方にチャンスを上げる。私に服従しなさい。そしたら助けてあげるわ」
「お前、それでも騎士か?」
「そうよ。悪い?」
「相当な屑だな」
「貴方が悪いんじゃない」
「は? 頭湧いてんじゃねえのか?」
「はあ? 貴方が初日に私にしたことを覚えてるの?」
「初日って言ったら……お前が襲って来たから逃げただけじゃねえか」
「そうよ。貴方は逃げたのよ」
「それがなんだよ」
「それだけじゃないわ! 私を無視したこともよ!」
「まさか、たったそれだけで俺が襲ったって嘘をついてこんな目に合わしたのか?」
「そうよ」
やべえぜ、こいつぁ!
とんだ屑野郎だべ!
さっさとズラかろう……
「ちょっと、何出て行こうとしてんのよ!」
「これ以上、お前の顔をみたくないんだよ」
「いいわ。もう我慢出来ない。貴方には私が直接手を下す必要があるみたいね」
ローラは後ろから剣を取り出し、俺に向かって来る。しかし、その時外から悲鳴が聞えてくる。
「う、うわあああ」
外の方で待機していた男子生徒の声だ。すると、倉庫の扉が吹っ飛んできたと思ったら先程の男子生徒達が一緒に飛んでくる。
「何? 何が起きたの!?」
どうやら、ローラの仕業ではないようだ。流石にこの慌てようだと疑うのも馬鹿らしい。これが演技だというなら騎士から女優に転職をおススメする。
何かくる!!
武器を出さずに構える。いきなり武器を出したら、絶対ローラがうるさいから。
『グルルルル……!』
「嘘……ケルベロスがなんで……」
「ケルベロス?」
「貴方知らないの!? ケルベロスはAランクで三つ首を持つ犬型の魔物よ! 三つの首はそれぞれ火、氷、雷を出すのよ!」
「なんだ、その程度か……」
ローラが喚いてるが俺には関係ない。たかがAランクで俺に勝てると思うな。身体強化を施さず一瞬でケルベロスの懐へ入り、瞬時に槍を取り出しそのまま貫いた。
一瞬の出来事をローラは理解していなかった。俺は吹き飛んだ奴らと呆気に取られるローラを放置して帰ろうとしたらローラに引き止められる。
「ま、待って!」
「……」
「お願い! 待ってよ!」
「うるせえぞ! まだ何かあんのか!? 屑のダメ騎士さんよ!」
「ッ!」
いい加減うざかったローラに怒鳴って教室へと帰った。溜まっていた鬱憤を少しだけでも吐き出せたから、気分が良かった。
改訂済み




